調査名 | フィリピン・かんがい水路活用再生可能エネルギープログラムCDM調査 |
調査年度 | 2008(平成20)年度 |
調査団体 | 中国電力株式会社 |
調査協力機関 | 株式会社エックス都市研究所、中電技術コンサルタント株式会社 |
調査対象国・地域 | フィリピン |
対象技術分野 | 再生可能エネルギー(水力発電) |
対象削減ガス | 二酸化炭素(CO2) |
CDM/JI | CDM |
プロジェクト実施期間/クレジット獲得期間 | 2010年~/2010年~2031年(7年×3回) |
報告書 | |
プロジェクトの概要 | 本プロジェクトは、フィリピン国各地に存在する農業用ダムやかんがい水路沿いに存在する未利用落差を有効活用してかんがい小水力発電(以下、「かんがい小水力」という)を行い、これにプログラムCDM手法を適用して、小水力の追加的な開発により火力発電を代替して温室効果ガス(CO2)及び環境汚染物質(NOx及びSOx)の削減を行うとともに、農業セクターをはじめとする同国の持続可能な発展に寄与することを目的としたプロジェクトである。 |
ベースラインの設定 | 本プロジェクトでは、出力数百kW程度のかんがい小水力開発およびそこから得られる電力の電力会社への売電(系統への接続)を想定していることから、ベースライン方法論として小規模方法論AMS-I.Dを適用した。 |
追加性の証明 | 小規模CDMプロジェクトの場合、「小規模CDMプロジェクトに関する簡素化された様式及び手順」の付属書Bに基づき、以下の3種のバリアについて追加性の証明を行った。 技術バリア: 本CPAにおいて導入される水力発電設備は、日本固有の技術であり、既存のかんがい水路内に設置することができ、現在までにフィリピンでの導入実績はない。このため、この固有技術の製造および維持管理技術は限定的であり、本CPAにおいては技術バリアが存在する。 一般的な普及に伴うバリアの証明: フィリピンには多数の水力発電所が現存する。しかしながら、既存のかんがい水路内での水力発電プロジェクトが実現した例はほとんどないため、本CPAに適用される技術は、水力発電設備において「その種で初めて("first-of-its-kind")」であるということができる。したがって、一般的な普及に伴うバリアが存在するといえる。 資金調達に伴うバリア: 本CPAの対象となるようなかんがい水路に設置される水力発電設備の規模は非常に小さいため、CDMプロジェクトとしての開発でなければ、銀行からの資金調達は極めて困難である。したがって、CDMなしでの資金調達が限定的となるという資金調達バリアが存在する。 |
GHG削減想定量 | 1地点当たり年平均1,000tCO2 |
モニタリング | 本プロジェクトにおけるモニタリング項目は、かんがい小水力により発電された電力量となる。本プロジェクトはプログラムCDMとしての実施を想定していることから、各CPAのCER発行を円滑に遂行することが極めて重要となる。そのために各水力発電設備の発電実績データの適切な記録・管理を担保する方法として、モニタリングされる電力データを、地方電力公社(REC)が収集・管理し、プロジェクト実施団体へ伝送する方法を採用する。 |
環境影響等 | 本プロジェクトの実施に伴う環境影響は、工事期間に発生するものと考えられる。本プロジェクトの実施に起因する直接的及び間接的な影響およびその低減策を下表に示す。
項目 | 活動 | 予測される環境への影響 | 環境影響の低減策 | 工事期間 | 直接影響 | 資材、設備の運搬 | 建設資材の運搬はトラック輸送となる。このトラックからの排気ガス、走行による騒音、振動の影響が考えられる。 | 資材の運搬に係る影響を低減するために、効率的な資材搬入を行う。 | 土木・建設機材の稼動 | 設備設置のための機材の稼動により、従業員及び周辺地域に対して騒音・振動の影響が考えられる。 | 建設機械を効率的に運用する工事計画にする。同時に休日及び深夜の工事は行わない。また工事にあたっては、地域へ騒音、振動の発生しにくいように低騒音、低振動型の工事用機器を使用する。 | 間接影響 | 土木・建設資材の原料、加工 | 建設資材の原料入手及び原料加工によって温室効果ガスが発生する。 | 必要以上の建設資材の使用を避けるため、最適な計画・設計を行う。 |
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事業化に向けて | 本プロジェクトの実施に向け大きな支障はないが、今後、事業を具体化するためには以下の課題について検討する必要がある。 事業実施体制の確定: 本調査において、発電事業候補者であるREC(地方配電組合)を取りまとめるNEA(国家電力庁)とかんがい設備の所有者であるNIA(かんがい省)はいずれも本事業への積極的な関与の意思が確認できるものの、最終的な開発者を決定することができなかった。今後、事業化の段階で、参加者、事業体制、役割分担を決定する必要がある。 適正な設備(水利)使用料の設定: かんがい施設を発電事業者に貸与するかんがい省(NIA)は、本プロジェクトの実施により、発電事業者からの水利使用料または設備使用料による収益を期待しているが、経済性を確保しつつ、NIA・発電事業者双方が納得できる使用料を設定する必要がある。 プログラムCDMに係る管理調整機関のキャパシティビルディング: 同国では、水力に係るCDMはあまり普及しておらず、プログラムCDMプロジェクトとして登録された案件はない。このため、日本サイドによる管理調整機関の育成が必要である。 プログラムCDM適用の詳細検討: 本事業は、個々の小規模水力発電事業から形成されており、現時点ではフィリピン全土における事業性のある開発可能地点を全て網羅しきれていないことから、プログラム型CDMの実施が、最も適していると考えられる。しかし、プログラム型CDMを適用した場合、認証手続きの難航やプロジェクトの開始時期の遅延等も想定されることから、事業化に際しては、「プログラム型CDM」と「事業性のある複数地点をまとめたCDM」との得失を慎重に比較する必要がある。 開発有望性の高いその他地点のF/S調査の実施: 本事業がプログラム型CDM事業として成立するか否かを判定するためには、少なくとも本調査の2次スクリーニングで選定された地点と同程度の経済性が期待できる地点に対して詳細FSを実施することが必要不可欠である |
コベネフィットの実現 | 本プロジェクトにより、かんがい小水力が連携する同一系統に属する化石燃料発電により発生する大気汚染物質が代替できる。代替された化石燃料発電のタイプから、大気汚染物質としてのNOxやSOxが削減可能である。 |