調査名 | ベトナム・生活廃棄物の埋立処分回避プログラムCDM実現可能性調査 | |
調査年度 | 2010(平成22)年度 | |
調査団体 | 株式会社市川環境エンジニアリング | |
調査協力機関 | ベトナム都市環境・工業地域協会(VUREIA)、Hanoi Urban Environment Company(URENCO)、株式会社JACO CDM、社団法人日本有機資源協会、日本環境コンサルタント株式会社 | |
調査対象国・地域 | ベトナム | |
対象技術分野 | 廃棄物管理 | |
対象削減ガス | メタン(CH4) | |
CDM/JI | CDM | |
プロジェクト実施期間/クレジット獲得期間 | PoA:28年間 第1号CPA:プロジェクト期間=15年、クレジット獲得期間=7年×更新1回(14年) | |
報告書 |
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プロジェクトの概要 | 本プロジェクトの目的は以下に記す個別のCDMプロジェクト活動をプログラムCDM化し、ホスト国であるベトナム社会主義共和国に普及させることを通じてベトナム建設省が掲げている生活廃棄物埋立処分場の延命化目標達成を支援する方、同国で増大している有機肥料需要にも貢献する。 本PoAは、ホスト国であるベトナム社会主義共和国の建設省が掲げている生活廃棄物埋立処分場の延命化目標に基づいて行われる。ベトナムの生活廃棄物は各都市の直営組織或いは公社形態をとっている清掃部門が家庭や市場などから出る廃棄物を収集運搬・処分しているが、こうした組織の全国協会であるベトナム都市環境・工業地域協会(Vietnam Urban Environment and Industrial Zone Association(VUREIA))が本PoAの調整管理組織(CME)となることを想定して実現可能性調査を行う。なおVUREIAには適正処理技術等の全国への普及という目的はあるが、排出権取引のスキームにおけるCERの管理やモニタリング活動等はこれまで想定しておらず、自主的な行動であると言える。 CDMプログラム活動(CPA)では、生活廃棄物に多く含まれる有機性廃棄物を埋め立てずに好気性分解することにより、有機性廃棄物の最終埋立て処分で発生するメタンガス量を削減する。ベースラインでは様々なものが混合された廃棄物全体が埋め立て処分場に直接埋め立てられ覆土される。そのため埋め立て処分場内は空気が遮断された嫌気雰囲気となり有機性廃棄物は嫌気発酵するので、その結果二酸化炭素(CO2)と比べて地球温暖化効果が21倍高いとされているメタン(CH4)ガスが発生する。これに対してCDMプロジェクト活動では、新たに建設するコンポスト化施設を用いてバイオマス系の有機性廃棄物を好気的な雰囲気で分解し、メタンガスと比べて地球温暖化効果の低い二酸化炭素として大気排出することで温暖化ガスの排出量を削減することを目的としている。 第1号CPAは、首都ハノイに隣接するHung Yen(フンエン)省のHung Yen市が所有・運営する埋立処分場隣接地にコンポスト化施設を建設する計画である。生活廃棄物の収集運搬は市の環境公社が行い、分別されないまま施設内に持ち込まれる。持ち込まれる廃棄物量は日量50トンを想定している。コンポスト化施設内では手作業を中心とした選別を行い、台所ごみ、剪定草木、紙、布等の“バイオマス系廃棄物”をコンポスト化する。コンポストは周辺の農園、市内の緑地、郊外の茶畑等に利用することを目的に販売する。またコンポスト化に適さないレジ袋等廃プラスチックは簡単な洗浄を行い、マテリアルリサイクル原料としてリサイクル業者に販売する。なお、本プロジェクトは株式会社市川環境エンジニアリング(IKE)がプロジェクトオーナーとして投資・運営を行うことを検討している。またプロジェクトの開始は2013年後半を想定している | |
適用方法論 | AMS-III.F | |
ベースラインの設定 | ベトナムにコンポストをはじめとする廃棄物の中間処理技術の導入を義務付けている法令が存在しないという理由から、最も技術的にも資金的にもバリアが低い埋立処分場が使用され続け、その結果メタンガスが大気に放出され続ける。 | |
追加性の証明 | Methodological Tool:「Tool for the demonstration and assessment of additionality」(Version 5.2)に基づき、本プロジェクトの追加性の検討を行った。6つのケースから代替案としてコンポスト化(CDMなし)、埋立処分場への埋立処分(現状維持)の2ケースを対象とし、投資分析、障壁分析、一般慣行分析を行い、最終的に本プロジェクトは追加的であることを証明している。 | |
GHG削減想定量 | 第1号CPA:7年間で52,742tCO2(平均7,535tCO2/年) | |
モニタリング | モニタリングはPoA内の全てのCPAに対して行う。各CPAは方法論AMS-III.F. (Version09)を適用することから、モニタリングについても同方法論のモニタリング手法が適用できる。また、本モニタリング方法論では、“Tool to determine methane emissions avoided from disposal of waste at a solid waste disposal site (Version 05)”も参照する。 | |
環境影響等 | 各CPAの実施の際は、ベトナムの法律に基づいた環境影響調査(EIA)を行う必要がある。第1号CPA候補のHung Yen案件において、コンポスト施設についてのEIAはまだ実施していない(既存の埋立処分場については2005年に実施したものがある)。なお、ベトナムで投資案件を行う場合は、会社設立ののち、事業許可取得→土地の賃貸借契約→EIA→投資の実行、という形をとる必要があることから、EIA実施時期については早くて2011年後半になると予想される。 | |
事業化に向けて | CO2削減だけを目的とするCDM事業と比べ、CO2削減単位当たりのCER獲得に要する投資は大きいが、弊社のように本調査を通じてベトナム等開発途上国に対する廃棄物処理サービス事業を展開することの実現性を評価している立場からは、CER販売による副次的収入が現地の廃棄物処理サービスに対する対価の不足分を補うことになるため、事業面では効果的な手法になると確認できた。 | |
「コベネフィット」効果 (ローカルな環境問題の改善の効果) | 最終処分する廃棄物量(削減量は第1号CPAにおいて重量ベースで15,092.75t/年)、並びに埋立処分場からの浸出水に含まれる有機物量(COD)の削減 | |
ホスト国における持続可能な開発への寄与 | 有機肥料需要への貢献、廃棄物リサイクル活動への貢献が期待されるプロジェクトである。 |