中国・山東省における路線バスへのアイドリングストップ装置取付プログラムCDM実現可能性調査

公益財団法人 地球環境センター

CDM/JI事業調査結果データベース

調査名中国・山東省における路線バスへのアイドリングストップ装置取付プログラムCDM実現可能性調査
調査年度2010(平成22)年度
調査団体一般財団法人日本気象協会
調査協力機関済南市公共交通総公司、株式会社アルメック、クライメート・コンサルティング合同会社、株式会社エコ・モーション
調査対象国・地域中国(山東省)
対象技術分野交通
対象削減ガス二酸化炭素(CO2)
CDM/JICDM
プロジェクト実施期間/クレジット獲得期間
  • PoA開始:2012年1月
  • PoAクレジット獲得期間:28年間
  • 第1号CPAのクレジット獲得期間:2012年1月から10年間
報告書
プロジェクトの概要本PoAは中国・山東省(人口9,400万人、面積16万km2)内の路線バスを対象にアイドリングストップ装置を取り付け、バス運行時の停車中のアイドリングを停止し、燃料消費を抑制し二酸化炭素の排出を削減する事業である。我が国が開発した後付けアイドリングストップ装置は、日本では既に2,000台以上の取付け実績があり信頼性・操作性が高く、中国全土の路線バスへの波及可能性をもつ事業である。CDM事業によるクレジット収入は、バスアイドリングストップの普及する我が国の技術導入を可能にし、導入による車両に対する影響を予防するなど、事業効果を高め事業の実現を確実なものにすることができる。あわせて大気汚染源であるNOx、PMの排出を削減し、沿道の大気環境の改善に資する。
適用方法論 AMS-III.AP.(ver.2):H21年度調査で開発し、本年度調査期間中にCDM理事会で承認され、さらにVer.2への改訂まで行われた。
ベースラインの設定 ベースラインシナリオは、「プロジェクトが実施されない場合、プロジェクトの対象となる自動車の大部分において、信号待ちやバス停、渋滞時など短時間停止時のアイドリングが継続される」というシナリオである。なお、済南バスにおいても、アイドリングストップはほとんど実施されていない状況であり、方法論で規定されているシナリオがあてはまる。
追加性の証明 提案プロジェクトは、技術的バリア及び一般的慣行バリアに直面する。したがって、提案プロジェクトは追加的であるといえる。
GHG削減想定量 第1号CPA(済南市公共交通総公司)における温室効果ガス削減量:2,450tCO2/年
モニタリング
CPAレベル
(CPA実施事業者)
PoAレベル
(調整管理組織)
モニタリング管理
  • CPAモニタリングの実施と管理
  • PoAの実施と管理、各CPAの管理
  • CPAの計画とモニタリングマニュアルの開発
  • 全CPAにおいてモニターされるパラメータについてのデータ収集と報告システムの開発・構築
データの収集と報告
  • CPAのデータ収集の実施
  • 毎日・毎月の報告書の作成
  • データ品質と収集手続きの定期チェック
  • データ品質と各CPA手続きの定期チェック
  • 毎月・毎年の報告書作成
データの蓄積と管理
  • メモリーカードの収集
  • CPAのデータ管理の実施
  • 記録の蓄積と整備
  • CPAのデータフォーマットの開発
  • 各CPAで報告されたデータのチェック
  • 各CPA実施事業者から報告されたデータに基づく排出削減量の計算
  • PoAのデータ管理の実施
  • 記録の蓄積と整備
品質保証
  • 装置の定期保守の実行
  • システムの実行やモニタリングデータの品質管理のための訓練の受講
  • 各CPA実施事業者に対する装置の定期保守の依頼
  • システムの実行やモニタリングデータの品質管理のための訓練の実施
環境影響等 アイドリングストップ装置の取り付けによる負の環境影響は発生しない。なお建設事業を伴わない事業であることから、環境影響評価制度の対象外である。
事業化に向けて(1)中国でのPoAの可能性:
 中国においてはPoAの政府承認案件は未だ無いが、手続きは通常のCDMと同様に進めることができ、既に受理・審査が行われているとの情報を得ている。このため、本案件についても、PoAとして進める際に中国政府承認が問題になる可能性は低いと判断する。

(2)済南公交からの事業計画案に対する評価:
  • 済南公交の内部負担費用増加の可能性
  • バス耐用年数に対して10年のクレジット期間は長すぎる
  • 負担金のない形でCDM事業を実現できないと、事業実施に踏み切ることは困難

(3)調査団の回答:
  • CDM事業の対象とする車両の使用期間が短く、また都市部に最新型車両を配置するために移動の可能性があったりすることを考えると、ダブルカウントに注意しながらPoAにより毎年対象車両を追加していくことが考えられる。しかし、各CPAの対象台数が少なくなり、また各CPA毎にベースラインを同定する必要があり、事業性が改善するとの確証も得られないと思うので、PoA化は今後の検討課題。
  • 赤字を解消できるCDM事業計画案は、現在のところない。したがって、済南公交の実施できないという意志決定は、調査団としては受け入れざるをえない。
「コベネフィット」効果
(ローカルな環境問題の改善の効果)
 車両の停止時における燃料消費を削減することで、NOx、PMの排出も削減できるため、本システムは事業実施区域における大気汚染の改善に貢献できると考えられる。
ホスト国における持続可能な開発への寄与-