調査名 | シンガポール・下水汚泥焼却CDM事業調査 | |
調査年度 | 2008(平成20)年度 | |
調査団体 | 株式会社日本総合研究所 | |
調査協力機関 | 鹿島建設株式会社 | |
調査対象国・地域 | シンガポール(本島西端Tuas工業地域) | |
対象技術分野 | 廃棄物管理 | |
対象削減ガス | メタン(CH4) | |
CDM/JI | CDM | |
プロジェクト実施期間/クレジット獲得期間 | 2009年4月~2019年3月/2009年4月~2019年3月 | |
報告書 | ||
プロジェクトの概要 | シンガポールでは下水処理場から発生した下水汚泥の全量をシンガポール本島東端のChangi 下水汚泥埋立処分場に運搬し、埋立投棄している。Changi下水汚泥埋立処分場では、投棄下水汚泥が嫌気性分解し、メタンガスが発生しており、フレアリング等の処理を施さないまま大気中に放出されている。 本プロジェクトでは、現在Changi下水汚泥埋立処分場に投棄されている下水汚泥の全量について、シンガポールの廃棄物処理会社であるECO社が、シンガポール本島西端のTuas工業地帯において焼却処理する。これにより投棄量を焼却灰のみに減容化するとともに、大気中に放出しているメタンガスをゼロにすることができる。 本プロジェクトで利用する技術は、下水汚泥の乾燥・焼却技術である。ECO社(ECO Industrial Environmental Engineering Pte. Ltd.)が導入する焼却技術は、日本国内において多くの実績をもつ高性能焼却装置である日本メーカーのボルテックス焼却炉である。ボルテックス焼却炉は、炉内にある撹拌回転アームの下部から、火吹竹の原理で燃焼に必要な空気を噴出し、処理物を撹拌させながら完全燃焼させる技術である。また、焼却の過程で発生する熱は、乾燥工程に利用する。 プロジェクトは2009年4月から開始される予定で、現在焼却施設などの建設工事中である。 | |
ベースラインの設定 | バウンダリー
| |
追加性の証明 | 追加性マニュアルに示された検証方法から、「オプションⅢ:ベンチマーク分析(CDM以外の収入も見込める場合)」を採用した。本プロジェクトに最も適切な財務指標としては、IRRを採用して検討し、評価指標(ベンチマーク)はシンガポール国のプライムレート(2007年)5.33%とする。プロジェクトをCDM事業として実施しない場合について、IRRを算定した結果、評価指標よりも低い4.36%となり、事業としての採算性が低いことが明らかとなった。また、焼却灰処分費、電気使用料、天然ガス使用料がそれぞれ-10%~+10%変動した場合のIRRの感度分析を行った結果、いずれの場合も評価指標(5.33%)を下回った。したがって、本プロジェクトは投資対象としての資金的魅力に乏しいことが確認された。 | |
GHG削減想定量 | 1,045,473tCO2/10年間 | |
モニタリング | AM0025のモニタリング方法論では、ベースライン排出量の算定に係る乾燥・焼却プラントへ搬入された下水汚泥の量をトラックスケールで測定する。また、プロジェクト排出量の算定に係るプロジェクト活動に伴う電力、燃料の消費量、排ガス量、排ガス中のメタンおよび亜酸化窒素濃度、またリーケージ排出量の算出に係る焼却灰中の炭素含有率などを直接測定する。 | |
環境影響等 | 本プロジェクトの温室効果ガス排出削減のほかに考えられる環境改善効果として、下水汚泥を焼却することによる埋立処分量の大幅な削減が挙げられる。また、プロジェクト実施サイト周辺は工業地帯であり、発電施設、焼却施設等が隣接しているため、プロジェクト実施に伴い周辺環境に大きな影響環境影響はないと思われる。 本プロジェクトで使用する焼却炉は日本の技術を導入するもので、SOx、NOx等の排出量は、基準値に較べて十分に小さいものとなっており、環境への影響は極めて小さい。排ガスや廃水はスクラバーや処理装置で適切に処理され、焼却灰はSemakau埋立処分場に処分される。 | |
事業化に向けて | 本プロジェクトはすでに建設が始まっており、下水処理汚泥焼却事業は2009年4月から運転が開始される。CDM事業化については、Validationプロセスに着手しており、シンガポール政府承認手続きを開始している。したがって、CDM事業化に向けて順調に進めている。 | |
コベネフィットの実現 | 本プロジェクトでは、ホスト国においてニーズの大きい処分場逼迫問題に対して貢献できる。具体的には、639t/日の下水汚泥廃棄物を焼却処理により約73t/日 と、約1/9にまで減容化することが可能である。 |