ベトナム・太陽熱温水器普及CDM事業調査

公益財団法人 地球環境センター

CDM/JI事業調査結果データベース

調査名ベトナム・太陽熱温水器普及CDM事業調査
調査年度2008(平成20)年度
調査団体三菱UFJ証券株式会社
調査協力機関ホーチミン市省エネルギーセンター(Energy Conservation Center of Ho Chi Minh City(ECC))
調査対象国・地域ベトナム
対象技術分野再生可能エネルギー
対象削減ガス二酸化炭素(CO2)
CDM/JICDM
プロジェクト実施期間/クレジット獲得期間PoAのクレジット期間(28年間):2009年~2036年
最初のCPA(7年間×1回更新):2009年~2022年
報告書
プロジェクトの概要本プロジェクトは、ホーチミン市省エネルギーセンター(Energy Conservation Center of Ho Chi Minh City(ECC))が、太陽熱温水器の購入者に補助金を給付することにより、太陽熱温水器の普及を促進するものである。ベトナムでは、経済の発展とともに電力需要が急増しており、電力の安定供給は最重要課題の一つとして位置づけられている。ECCは、ホーチミン市を中心とするベトナム南部地域において、自然循環型の太陽熱温水器の普及を実施し、電力消費量削減することを目指している。
 本調査では、プログラムCDMとしての事業実施可能性を調査する。
ベースラインの設定 本プロジェクトへは、小規模方法論I.C「利用者のための熱エネルギー(電力の有無に関わらない)」のベースラインおよびモニタリング方法論が適用できる。本プロジェクトがなければ、住民は温水を供給するために電気温水器を使用する。したがって、本プロジェクトのベースライン排出量は、太陽熱によって代替されるエネルギーが系統電源から供給された場合に排出される温室効果ガスの量となる。
追加性の証明 本プロジェクトが実施されない場合、本プロジェクトのような太陽熱温水器普及事業が実施されないことは、1)投資バリア、2)技術バリア、及び 3)一般的な慣行に起因するバリアによって論証される。
GHG削減想定量 本プロジェクトの最初のCPAからのGHG削減量は、年平均15,716tCO2である。
モニタリング 小規模方法論I.Cによると、システム1台あたりの排出削減量が5tCO2以下のプロジェクトは、下記2項目のモニタリングが要求されている。
    • 1) 稼動しているシステムの台数

    2) 平均的なシステムの年間稼働時間
 本プロジェクトで導入される太陽熱温水器1台あたりの排出削減量は5tCO2以下であるため、上記モニタリング方法を適用する。
環境影響等 本プロジェクトはベトナムの環境影響評価の対象とはならない。本プロジェクトの実施により環境に追加的な負荷を与えることはない。
事業化に向けて 本プロジェクトを実施するための予算は、5年間で22,000台を導入する予算に限られている。その予算も、ECCが毎年、ホーチミン市人民委員会、および商工省に申請して割り振られる予算であるため、安定した資金は確保されていない。本プロジェクトをCDMとして実施することによるCER売却収入により、新たな補助金を創出することが本プロジェクトを継続的に実施するために重要となる。排出削減量は太陽熱温水器の累積導入台数によるため、クレジット期間の前半にできるだけ多数導入することが、より多くのCERを獲得するために重要である。本プロジェクトをCDMとして実施することにより、企業などからの投資を促すなどし、より多くの台数を早期に導入できれば、その後CER売却収入の活用により、プロジェクトを持続的に継続することが可能となる。
コベネフィットの実現 本プロジェクトは、電量消費削減により、電力の安定供給や停電防止に貢献することが期待されている。また、安全で安定した温水を供給することにより、ベトナムの人々の生活の質の向上に貢献することが期待されている。ECCが太陽熱温水器普及のために実施するキャンペーンでは、マスメディアを通じて太陽熱温水器の経済的便益を伝えるとともに、自然エネルギー利用の環境への便益、エネルギー、環境問題についての認識を高める効果があると考えられる。したがって、本プロジェクトは、ベトナムの人々に社会的便益を与えるとともに、今後のエネルギー、環境対策に重要な環境意識の底上げに貢献する。これら、本プロジェクトのコベネフィットは、住民の意識調査を通じて評価することが可能と考える。