フィリピン・再植林、アグロフォレストリー、バイオマス 「トリプル・ベネフィット型」CDM事業調査

公益財団法人 地球環境センター

CDM/JI事業調査結果データベース

調査名フィリピン・再植林、アグロフォレストリー、バイオマス 「トリプル・ベネフィット型」CDM事業調査
調査年度2007(平成19)年度
調査団体株式会社三菱総合研究所
調査協力機関コンサベーション・インターナショナル
調査対象国・地域フィリピン共和国キリノ州
対象技術分野バイオマス利用と植林
対象削減ガス二酸化炭素(CO2)
CDM/JICDM
プロジェクト実施期間/
クレジット獲得期間
2008~2037
報告書
プロジェクト概要本プロジェクトは、CDM の枠組みを利用して地元コミュニティによる植林事業とバイオ燃料事業を実施することにより、地元コミュニティの貧困削減、自生種を含む再植林と森林の保護による野生動植物の生息地面積の増加を通じた地域の生物多様性への寄与、流域の水資源管理、そして地球温暖化の緩和といった複合的な便益を生み出すものである。森林保護対象地域としては、5,000ヘクタールがプロジェクト地域内に設定され、現在国際的に議論が進められている森林伐採・減少の防止(REDD)の枠組みの中での位置づけを含めた検討が行われた。
【植林】
 A/R CDM事業として、5,000ヘクタールを対象に自生種を中心とした多樹種の植林を行なう森林再生事業および2,000ヘクタールを対象に持続的な生計手段の創出を目的とした果樹植林を行なうアグロフォレストリー事業を実施する。A/R CDM対象外の事業として、地元コミュニティの薪や木材の利用に供する短期伐採林事業およびバイオ燃料の原料となるナンヨウアブラギリの植林事業をそれぞれ500ヘクタールの土地を対象に実施する。地元コミュニティは、非木材生産物(果樹およびナンヨウアブラギリ種子)およびCERから新たな収入を得る。また、現在、国際的に議論の進められている森林伐採・劣化の防止(REDD)に資する森林保護事業を組み合わせた活動も想定している。
【バイオ燃料】
 小規模CDM事業として、ナンヨウアブラギリ植林事業から調達した原料から植物油を生産し、地元NGOや地元事業者が所有する穀物乾燥機および脱穀機で消費されている化石燃料の代替燃料として利用する。
ベースラインの設定・追加性の証明【植林】
 プロジェクト対象地は、草地および農地である。その大部分が「地域住民による森林管理(CBFM)プログラム」の管轄下にあり、植林の実施が想定されているが、実際には資金不足により植林は進められていない。草地は定期的に焼き払われ、また主たる生計手段である農業の放棄はありえないため、ベースラインシナリオは現状維持である。対象地に樹木は生育しないため、ベースラインにおける吸収はないものと設定された。追加性は、追加性証明ツールのステップを通じ、バリア分析を用いて証明した。
【バイオ燃料】
 ベースラインは、地元で利用されている穀物乾燥機および脱穀機による化石燃料消費の継続である。小規模CDM用簡易実施手順の付属文書Bの添付文書Aに示されている投資バリア(ナンヨウアブラギリ油生産に必要な設備の導入)および技術バリア(ナンヨウアブラギリ油の農業設備への利用)によりプロジェクトのCDM化がなければ化石燃料の消費が継続することを証明した。
GHG削減量【植林】
 30年のプロジェクト期間で合計2,412,095トンのCO2吸収が見込まれる。
【バイオ燃料】
 10年のプロジェクト期間で合計7,680トンCO2の排出削減が見込まれる。
モニタリング【植林】
 AR-AM0004第2版に従いモニタリングを実施する。ベースライン純GHG吸収量のモニタリングは行なわない。
【バイオ燃料】
 AMS-I.B第10版およびAMS-I.C第13版に従い、モニタリングを実施する。
環境影響等【植林】
 コンサベーション・インターナショナルが中心となり開発した「気候・コミュニティ・生物多様性プロジェクト計画基準(CCB基準)」に基づきプロジェクトの環境影響評価のデスクレビューを実施した。また、プロジェクト対象地域内の住民を対象としたアンケートを行ない社会経済影響を評価した。なお、本プロジェクトは、その特性からフィリピンの制度では、環境影響評価制度の対象とならない。
【バイオマスエネルギー】
 本プロジェクトは、その規模と特性からフィリピンの制度では、環境影響評価制度の対象とならない。プロジェクトの実施に当たっては、環境天然資源省との協議を通じ、必要に応じて適切な対策を講じる。
事業化に向けて 本プロジェクトの最大の特徴は、植林事業とバイオ燃料事業を融合的に実施することにより、経済的なインセンティブを確保し、複合的便益を地域の自然・コミュニティに持続的に提供することである。今後の事業実施に向けて、炭素クレジットのCER化以外も視野に入れた、適切な資金スキームを事業への投資者とともに構築する必要がある。また、現在国際的に展開が急速に進んでいるREDDの枠組みの中での本プロジェクトの森林保護事業の進め方について、フィリピン政府との協議を含めて継続して検討を行う。