調査名 | ブラジル国サンタカタリーナ州養豚場バイオガス有効利用事業調査 | |
調査年度 | 2006(平成18)年度 | |
調査団体 | (株)日本総合研究所 | |
調査協力機関 | ブラジル三井住友銀行、ICF Consulting | |
調査対象国・地域 | ブラジル(サンタカタリーナ州) | |
対象技術分野 | 廃棄物管理 | |
対象削減ガス | メタン | |
CDM/JI | CDM | |
プロジェクト実施期間/ クレジット獲得期間 | / 2008~2012 | |
報告書 | ||
プロジェクト概要 | サンタカタリーナ州の養豚業協会(ACCS)に所属する61の養豚場で発生するバイオガスを回収・有効利用するシステムの導入を検討する。各養豚場には、回収したバイオガスを燃焼させるための焼却装置を設置する。これにより、CO2の21倍の温室効果を持つメタンガスの排出量を削減し、ブラジルおよび地域の持続的発展に貢献する。 | |
ベースラインの設定・追加性の証明 | 養豚場糞尿ラグーンから発生するメタンガスの回収に関するベースライン方法論については、AM0006、AM0016に基づいて作られた承認統合方法論ACM0010 「Consolidated baseline methodology for GHG emission reductions from manure management system:糞尿管理システムからの温室効果ガス削減に関する統合方法論」が用意されており、これを利用した。 承認統合方法論ACM0010では、ベースラインシナリオの設定について次の4つのステップにより決定される。 【ステップ1】: 提案するCDMプロジェクト活動の代替シナリオの同定 ブラジルで一般的に利用されている「嫌気性ラグーン」と、ほとんど採用されていないものの先進的な「嫌気性ダイジェスター」の2つの方法が、考えうる代替シナリオである。 【ステップ2】: 障壁分析 嫌気性ダイジェスターは、高額な投資が必要であり、かつ詳細なモニタリングや装置のメンテナンスの実施などが求められる。一方で、嫌気性ラグーンは単純で安価な技術であり、運転・メンテナンスともに容易である。投資障壁、技術障壁の両面から嫌気性ラグーンをベースラインシナリオに設定すべきである。 【ステップ3】: 投資分析 正味現在価値(NPV:Net Present Value)による分析においても、ベースラインシナリオは経済的に最も魅力的なものであると特定された。 【ステップ4】: クレジット期間の更新によるベースラインの改定 本プロジェクトのクレジット期間は10年に固定するため、ステップ4は必要ない。 | |
GHG削減量 | 排出削減量は83,868[t-CO2e/年]と推計され、2012年までのクレジット期間の合計は、419,342[t-CO2e]である。 ベースライン排出量:115,568[t-CO2e/年] プロジェクト排出量:31,700[t-CO2e/年] リーケージ排出量:0[t-CO2e/年] 排出削減量:83,868[t-CO2e/年] | |
モニタリング | 本報告書においては、「解放系で燃焼するが、物理的なリーケージはゼロ」と仮定してERの算出を行った。ただし、フレアリング効率を決定するためにはフレアリングからのリーケージを測定する必要があることから、実測により想定しているフレアリング効率に満たない可能性もあり、この場合は得られるERは想定より減少することになる。 | |
環境影響等 | 本プロジェクトの実施に伴い、現在、非衛生的な糞尿処理施設により環境ライセンスの発給を受けていないサイトの環境改善が実現される。また、本プロジェクトで利用するバイオダイジェスターの設置技術およびバイオガスの回収・利用技術は、これまでにブラジル国内のCDM事業により採用実績のある技術であるが、未だブラジルの養豚場において広く普及していない。本プロジェクトを通じて、環境配慮型の本技術の効果が認知され、ブラジル国内で自主的に採用する動きがでることが期待される。 | |
事業化に向けて | 本プロジェクトにおける初期投資に必要な設備費及び工事費に関しては、ブラジル銀行(Banco do Brazil)やブラジル三井住友銀行をはじめとした金融機関、地元金融機関からの融資によって調達が見込まれている。 クレジットのオーナーは獲得できるクレジットを多く見積もる傾向があるため、燃焼割合や物理的な漏出を甘く見積もることが考えられる。こうした視点からERを見積もり、事業計画を立案すると、事業化後に想定していた量のCERが得られないことが起こりうる。 そこで本調査では、CDM理事会に向けて正式なPDDを提出する段階においては、さらなる追加投資を実施して閉鎖系での燃焼を実現させ、獲得できるERを増加させることも視野に入れている。したがって、できる限り低く見積もったF/S調査を実施するよう努めた。 |