マレーシア・ジョホール州パームオイル工場メタンガス排出削減事業調査

公益財団法人 地球環境センター

CDM/JI事業調査結果データベース

調査名マレーシア・ジョホール州パームオイル工場メタンガス排出削減事業調査
調査年度2005(平成17)年度
調査団体三和エンジニアリング(株)
調査協力機関Bell Palm Industries Sdn Bhd (Bell Group Company)
調査対象国・地域マレーシア(ジョホール州)
対象技術分野バイオマス利用
対象削減ガス二酸化炭素, メタン
CDM/JICDM
プロジェクト実施期間クレジット期間:2008-2014(7年ターム2回更新、21年間可能)
報告書概要版概要版(1.6MB)
詳細版本文(10.2MB) 本文(1.9MB)
プロジェクト概要マレーシア・ジョホール州に立地するパームオイル工場Bell Palm Industries Sdn Bhd (BPI)は、ベルグループが保有する8社の一つで、FFB40t/hの処理能力を有する。発生する廃水(POME)処理は、マレーシアでは一般的な方法であるオープンラグーン方式により行っており、嫌気性処理工程ではメタンが発生し、大気中に放散されている。本事業は、オープンラグーンによる嫌気性処理を密閉型バイオガス処理装置に置換え、回収されるメタンをボイラーなどの熱生産に利用し、GHG排出量を削減する。
BPIでは、FFB処理に伴い発生するシェルやファイバーをボイラー燃料として利用し、同工場で必要とされる電力と蒸気を供給している。回収メタンガスにより、余剰となるパームシェルはセメント会社に燃料として売却する。セメント会社では、パームシェルを購入・利用することにより、従来使用している化石燃料消費を削減することになっており、本プロジェクトも間接的に石油代替となる。BPIのようにパームオイル生産(FFB処理)により発生するシェルやファイバーを、自社工場のボイラー燃料に利用することは、マレーシアでは一般的に行われている(MPOB調査)。本プロジェクトはパームオイル生産により発生するシェルやファイバーをボイラーの燃料に」利用している多数の同国内のパームオイル工場におけるCDMのモデルになるものである。
ベースラインの設定・追加性の証明CDM理事会で承認され、公開されている方法論「AM0013/Ver.2”Forced methane extraction from organic waste-water treatment plants for grid-connected electricity supply and/or heat production”」(2005年5月23日改訂)を適用した。
ベースライン排出量はオープンラグーン処理により排出されるメタンとCO2で、プロジェクト排出量は、密閉型バイオガス処理装置でメタン等を回収した後に、オープンラグーン処理により発生するメタンとCO2である。パームシェルなどのバイオマス燃料を利用しているボイラーについては、化石燃料を使用していないので代替分のGHG削減はない。また、電力系統に売電を行わないので、電力代替のGHG削減もない。GHG削減量は、ベースライン排出量とプロジェクト排出量の差として求められる。
追加性については、投資金額に対してシェルの外販収入は非常に小さく、水質規制や処理能力に対しては、現状のオープンラグーン方式による排水処理で十分対応でき、BAUではない。
GHG削減量ベースライン排出量からプロジェクト排出量6,048 t-CO2/年を差引いた24,172 t-CO2/年である。なお、本プロジェクトによるリーケージの可能性はない。
モニタリングモニタリング手法については、「AM0013/Ver.2罵ochForced methane extraction from organic waste-water treatment plants for grid-connected electricity supply and/or heat production媒」(2005年5月23日改訂)のモニタリング手法を適用し計画検討した。また、モニタリング対象は以下のとおり。
① バイオガス処理装置の運転状況や処理量、メタン発生・回収量を管理・把握するためのモニタリング項目。
② プロジェクトメタンガス排出削減量の測定と記録のためのモニタリング項目。
③ ベースラインシナリオの変化を測定するためのモニタリング項目。
環境影響等パームオイル工場に対する環境規制は、水質規制とボイラー排ガス規制があり、いずれも現状設備で対応できている。
プロジェクト実施により、オープンラグーンからの臭気発生の問題は解消される。密閉型バイオガス装置を設置し、排水処理を行うことにより、放流水質の更なる改善が図れ、また、変動要素に対する対応も可能となり、環境負荷の軽減が図れる。
事業化に向けて本プロジェクトの初期投資金額は、現地調達を行い、1億6百万円を想定している。
事業性は、CO2売却価格が$5/t-CO2及び$10/t-CO2の場合を想定し、IRR及び単純償却年数を求めたが、事業実施に向けて更なる設備費用の合理化の検討を進める所存である。
CER収入がない場合は、IRRは算出限界外で、クレジット期間7年時点におけるIRRはクレジット売却金額$5/t-CO2の場合 -0.1%、同$10/t-CO2の場合 16.2%であった。
事業実施に対しては、カウンターパート企業の意欲も意識も非常に高い。
また、マレーシアはアジア諸国の中でもCDM実施体制整備が進んでおり、政府の期待も大きい。
本プロジェクト事業費の融資等に関しては、JBICのツーステップローンによることが可能となり、民間金融機関からの融資とあわせて対応を図る予定である。
本件のように規模が大きくないプロジェクトを中小企業が行おうとした場合、公的融資が対象とする金額規模に比べて小さいため、公的資金利用対象外となる。是非、中小規模のプロジェクトや企業に対する公的資金による環境特別融資等の低金利の融資制度の検討と整備を切望するものである。
本件のPDDはドラフトの作成までを行い、バリデーションは行っていない。