タイにおける砂糖工場におけるバイオマス発電の事業化補完調査

公益財団法人 地球環境センター

CDM/JI事業調査結果データベース

調査名タイにおける砂糖工場におけるバイオマス発電の事業化補完調査
調査年度2004(平成16)年度
調査団体(株)環境総合テクノス
調査協力機関Rajburi Sugar Co., Ltd.
調査対象国・地域タイ(Ratchaburi県)
対象技術分野バイオマス利用
対象削減ガス二酸化炭素
CDM/JICDM
実施期間21年間
報告書概要版 概要版(89KB)
詳細版本文(2.1MB)
本文(10MB)本文(18MB)
概要 本プロジェクトの目的は、サトウキビ栽培の過程で収穫残渣として畑に残されているtrashをバイオマス燃料とし、これにライスハスクも加えてバイオマス発電をすることによって地球温暖化対策に資することである。
trashの収集はサトウキビ収穫作業が終わった後、ロールベーラ(牧草をロール状に丸める機器)を応用して行う。畑から持ち出し得るtrash量は灌漑地域で50%、非灌漑地域で30%であることがわかった。これは土壌有機物の長期動態を予測するモデルに現地の降水量や土壌特性データを入力し、土壌中の炭素を30年間にわたり、現状維持できる限界値からtrashの持ち出し率を計算することによって得た結果である。
本プロジェクトでは、主にこの燃料を製糖期に使用して発電するが、非製糖期はライスハスクを購入してバイオマス発電を継続し、これらをEGATに売電する計画である。平均収穫量を想定した場合、trash量は46,600t/年、ライスハスク量は64,300t/年と見込まれる。
また、廃糖蜜を原料としてアルコール(エタノール)を醸造する工場が隣接する敷地に建設されることを見込んで発電で必要な蒸気の一部をこれらの工場に供給することにより、コージェネレーション(熱電併給)を行うことも計画している。
ベースラインの設定・追加性の証明一次ボイラーの定格出力は60t/hであり、蒸気1kg/h≒0.7kWで換算するとこれは約42MW(<45MW)に相当することから、コージェネレーション設備容量に関しては小規模CDM活動としての適格性を有する。
本CDMプロジェクトのベースラインとしては、小規模CDMタイプI.Dにおける適用可能な簡易ベースラインのうち、「現状の発電ミックスの加重平均排出量」を選定する。
また、本プロジェクトについてはその内部利益率(IRR)の低さに起因する「投資のバリア」が存在し、投資上より実効性の高い代替案からのより多いGHG排出が生じていたかもしれないというベースラインシナリオからの追加性を主張できる。
GHG削減量EGATグリッドの平均CO2排出係数(2002年のデータから推定)は0.586t-CO2/MWhと算出され、本プロジェクトによるEGATへの年間売電量が54,810MWhであることから、これらを乗じた値、すなわち32,119t-CO2が年間のベースライン排出量となる。
モニタリングEGATへの売電量だけが本小規模CDMプロジェクト(タイプI.D)のモニタリング対象項目となっている。売電量のモニタリングは、EGAT側の受電量メーター記録(売電額の会計資料で照合可能)によって行う。さらには、SPC側の送電量メーター記録(毎月の運転記録)によっても確認する。
環境影響等新設発電所による排煙、排水、騒音、振動等に関する環境影響については十分な対策を講じることにより、周辺環境への影響を抑えた設備とするが、Rajburi製糖工場周辺には住宅地等が存在しないことから大きな問題は生じないものと考えられる。
事業化に向けて本プロジェクトを事業化するためには、サトウキビ畑からのtrash持ち出し率を農業面から技術的にさらに検討する必要がある。trashの肥料効果は少ないものの、雑草抑止や土壌の乾燥軽減効果については現地の実証確認と農民の理解が必要である。今後、これらを実証した後にサトウキビ収穫量に影響を与えない持続可能なtrashの持ち出し率(燃料利用率)を最終的に決定する。