調査名 | エストニアにおける風力発電利用によるエネルギー転換パイロット事業 | ||
調査年度 | 2001(平成13)年度 | ||
調査団体 | (社)海外環境協力センター | ||
調査対象国・地域 | エストニア、Pakiri半島 | ||
調査段階 | プロセス2:プロジェクトの実現可能性の調査 | ||
調査概要 | エストニアは、発電エネルギー資源の過半をオイルシェルに頼っているため、単位エネルギー当たりのCO2の発生が多い。バルト海沿岸では風力発電の条件としては良好であることから、大型の風力発電施設群(約60MW)を建設することにより、温室効果ガス削減を図る調査。 | ||
調査協力機関 | 中東欧地域環境センター(REC) | ||
調 査 結 果 | プロセス1※1 | (調査対象外) | |
※2 プ ロ セ ス 2 | プロジェクト概要 | エストニア北西部のパクリ(pakri)半島に定格出力2.0MWのV80(ベスタ社製)を36基設置するプロジェクト。電力量は192,523MWh/yと推定されている。 | |
対象GHGガス | 二酸化炭素 | ||
対象技術分野 | 再生可能エネルギー(風力発電) | ||
CDM/JI | JI | ||
実施期間 | 20年間 | ||
ベースライン | 本プロジェクトが行われない場合、必要電力全てがオイルシェルによって発電されるものとした。送電グリッド端における電力量192,525MWh/yが、オイルシェルによって発電された場合のCO2排出量がベースラインとなる。 | ||
GHG削減量 | ○ ベースラインの算定 エストニアにおけるオイルシェルによる発電量とCO2排出量は表1の通りである。 2000年に比べ、2005年、2010年とCO2原単位が減少しているのは、効率改善による効果が見込まれているからである。2000年から2005年、2005年から2010年までを内挿補間し、プロジェクト開始を2003年に設定すると、192,523MWをネット供給するためのオイルシェル発電に伴うCO2排出量、すなわちCO2ベースラインは4,867.8千t-CO2/年となる(表2)。ただし、2010年以降は2010年のCO2原単位を用いた。 ○プロジェクト実施時の排出算定 V80の設備及び運用に関わるCO2排出量は以下の2ケースで試算した。 ケース1:設備19.55g-C/kWh,運用6.39g-C/kWh(地球環境センター実施マニュアルver.3より) ケース2:設備1.75g-C/kWh(ドイツのデータ)、運用6.39g-C/kWh 192,523MWh/yを風力発電するための設備及び運用に関わる年間CO2排出量は表3の通りである。 従って、プロジェクト期間中のCO2排出量はケース1,2でそれぞれ ケース1:366(千t-CO2)20年間 ケース2:115(千t-CO2)20年間 以上よりプロジェクト実施期間中における総CO2削減量は ケース1:4,501(千t-CO2)20年間 ケース2:4,753(千t-CO2)20年間 | ||
費用 | ・風力タービンV80(36基)の合計金額:5,650万EUR ・風力タービンV80(36基)の合計輸送量:300万EUR ・風力タービンV80(36基)の総建設コスト:160万EUR ・風力タービンV80(36基)の基礎の総費用:140万EUR ・パクリ・ウインド・ファームの道路建設コスト:30万EUR ・グリッド接続コスト:460万EUR ・プロジェクト管理費:135万EUR (以上、設備投資額計:6,875万EUR) ・年間維持費(保険を含む):185万EUR/年 ・土地リース代:6万EUR/年 ・投資条件A(オプションA) 投資額の1/3に対し利率8%、2/3に対し利率6% ・投資条件B(オプションB) 投資額の1/3に対し利率0%、2/3に対し3% 以上より、20年間のプロジェクト実施経費は ・オプションA:19,110万EUR ・オプションB:14,639万EUR ※なお、これに加えて電力を供給することによる収入があるが、考慮せず。 | ||
費用/GHG削減量 | オプションA:42.5EUR/t-CO2(ケース1)、40.2EUR/t-CO2(ケース2) オプションB:32.5EUR/t-CO2(ケース1)、30.8EUR/t-CO2(ケース2) | ||
モニタリング | |||
GHG削減以外の影響 | ・風力発電の設置場所については、環境影響評価を行い適地を計画したので環境への影響(騒音、動植物の影響など)は少ない。また影響をうける住民をいくつかのグループに分類し、それらに応じた情報の開示、会合の開催を行った。 ・本プロジェクトにより、多かれ少なかれ技能労働者の需要を増加させる。また道路などの建設は地元住民に雇用を供給する。 | ||
実現可能性 | エストニアの電力分野は政府の公営企業によって垂直に統合されており、発電・送電・配電・小売り、および輸出は政府が同時に担当している。新しい独立電気事業者にとって好都合ではない。 | ||
他地域への普及効果 | |||
プロセス3※3 | (調査対象外) | ||
報告書 | 本文(ファイル 3.47MB) | ||
調査評価 | ・風力発電は温室効果ガス削減の重要な方式の一つであり期待したい。 ・国の政策如何に依存する点が多いものの、かなり具体的なプロジェクトの調査が行われたことは高く評価できる。 ・騒音や生態系に関するモニタリングが必要であり、そのコストは参入されるべきである。 ・大規模なプロジェクトであるだけに、このようなプロジェクトの実現については、我が国政府の働きかけも重要な要素である。 ・CDMプロジェクトのFSとして求められる所定の項目についての検討が不十分である。 風力発電に関する法・制度的課題や電力市場の動向ならびに価格を左右する諸要因の検討は十分に加えられているように思われる。 | ||
備考 |
※1. プロセス1: | 具体的なF/S案件を発掘するため、対象国や技術分野を特定せずに、CDM/JIとして広い可能性を考慮した基礎的な調査 |
※2. プロセス2: | 具体的な調査対象国・調査地域、対象技術分野を前提とした実現可能性調査 |
※3. プロセス3: | 実際に炭素クレジット獲得に向け、プロジェクト設計書の作成、バリデーション、炭素クレジットの投資探しなど、F/S終了後に当たるプロセスを行う調査 |