中国・廃棄物処分場埋立ガス回収及び発電事業調査

公益財団法人 地球環境センター

CDM/JI事業調査結果データベース

調査名中国・廃棄物処分場埋立ガス回収及び発電事業調査
調査年度2005(平成17)年度
調査団体日本技術開発(株)
調査協力機関上海市市容環境衛生管理局
調査対象国・地域中国(上海市)
対象技術分野廃棄物管理
対象削減ガス二酸化炭素, メタン
CDM/JICDM
プロジェクト実施期間2007~2016
報告書概要版概要版(72KB)
詳細版本文(1.0MB) 本文(461KB)
プロジェクト概要本CDMプロジェクトの実施サイトがある上海市は、中国最大の経済の中心都市である。近年の上海市では、その国内総生産(GDP)が急成長し、これに伴って電力使用量も急増したため、電力需要が逼迫している。同市の老港廃棄物埋立処分場は面積約600ha、埋立容量約7,000万m3で、1日に6,000トンのごみを埋め立て処理している。本プロジェクトは、埋立処分場での温室効果ガスであるメタンを主成分とする埋立ガス(LFG)の回収およびそのLFGを利用した発電事業である。
本プロジェクトでは、廃棄物埋立処分場にLFG回収のための回収井戸を設置し、収集したLFGをガス調整器で前処理した後、ガスエンジンを用いて発電を行う。発電した電力のうち、施設利用以外の電力を売電し、ガスエンジンによる発電で燃焼されない余剰のLFGはフレア焼却を行う。
ベースラインの設定・追加性の証明ベースラインの設定:
LFG プロジェクトに関しては、CDM 理事会で承認済みの温室効果ガス排出量のベースラインを決定するための方法論(ベースライン方法論)が数多く提案されてきている。本プロジェクトで使用したベースライン方法論は、ACM0001「LFG プロジェクト活動における統合化方法論」である。本プロジェクトは、回収メタンを発電に使用し、更に発電した電力をグリッドに送電することで他のエネルギー源代替による排出削減効果を得ることを目的としており、統合化方法論の適用が可能であると考えられる。そこで、本プロジェクトでは系統電源の代替によるCO2クレジットを要求するため、ACM 0002「グリッド接続再生可能エネルギープロジェクトの統合方法論(代替される電力/熱のベースライン方法論)」を適応する。
追加性の証明:
現行のLFGを回収もせず燃焼もさせない事業継続(ベースライン)に反して、このLFGプロジェクト開発の可能性は、当該プロジェクトの内部収益率(IRR)と中国(ホスト国)での投資活動に適用される融資利率をベンチマークとして評価される。ここでの融資利率とは、中国の市中銀行の長期金利である6.12%である。プロジェクトのIRRをそれらの数値と比較し同等もしくは低い条件であれば、このプロジェクトは実現可能性が低いと考えられる。CO2クレジット収入を見込まないプロジェクトのIRRは、3.8%であり、中国の長期市中金利(6.12%)以下である。すなわちCO2クレジットを見込まない場合のメタン回収・発電プロジェクトは投資家にとっての魅力はなく実現性が低い。中国では廃棄物埋立処分場におけるメタン回収を義務づける強制力のある法は存在しないため、廃棄物埋立処分場の大半は、依然として資本不足や技術不足が原因で、国際的に見て高いレベルの構造基準および環境基準を満足していないのが現状である。
GHG削減量8,486,000トン-CO2(2007年~2016年の合計)の見込み
モニタリング本CDMプロジェクトで使用したモニタリング方法論は、ACM0001「LFG プロジェクト活動の統合化方法論」である。LFG回収利用プロジェクトの特性は、大気に放出されずに回収・利用した排出削減量を直接測定できることである。そのため本プロジェクトで実現される排出削減量を算定するためには、ベースラインとプロジェクトの排出量を比較する必要はない。
環境影響等環境影響等:
本CDMプロジェクトにおいて想定される環境影響要因とその評価は以下の通りである。
①水質:埋立処分場の表面被覆による雨水排水、浸出水量削減により、浸出水漏水のリスクが削減でき、土壌・海水汚染の原因を改善することも可能であり、水質悪化のリスクを低減させることができると考えられる。
②大気:LFGに含まれる有毒ガスによる中毒、メタン等の温室効果ガスの回収による地球温暖化防止、悪臭防止等、大気環境への影響を現状より大幅に低減できると考えられる。
③騒音:埋立処分場は郊外にあり、近隣に居住する住民はいない。更に、本サイトの敷地面積は広大であり、騒音の主な発生源と考えられるガスエンジンを敷地境界から適切な距離を確保して設置できることと、また、同エンジンは建屋内へ設置されることから、低い騒音レベルで制御できるものと考えられる。
利害関係者のコメント:
本CDMプロジェクトで想定される利害関係者は、中国建設部、上海市市容環境衛生管理局およびサイト周辺地域住民等である。具体的なコメントは以下の通りである。
①社会経済面発展の観点からのコメント:LFGのフレア焼却は,中国政府が求める改善策ではない。本CDMプロジェクトのような自主的な改善は,地域環境の持続可能性への貢献であるとみなされる。
②環境保護の観点からのコメント:メタン等の温室効果ガスの回収による地球温暖化防止、悪臭防止等、大気環境への影響を現状より大幅に低減できると考えられる。
③地域住民の生活に与える影響の観点からのコメント:職業開発と雇用創出の改善としての貢献では、プロジェクト運営会社には少なくとも20人程度の従業員が雇用される。
事業化に向けて本プロジェクトは、2007年1月稼動へ向けて準備を進める予定である。