ブラジル・リオグランデドスル州における養豚場バイオガス有効利用事業調査

公益財団法人 地球環境センター

CDM/JI事業調査結果データベース

調査名ブラジル・リオグランデドスル州における養豚場バイオガス有効利用事業調査
調査年度2007(平成19)年度
調査団体株式会社日本総合研究所
調査協力機関ブラジル三井住友銀行、KEY、DNV
調査対象国・地域ブラジル国・リオグランデドスル州
対象技術分野廃棄物管理
対象削減ガスメタン(CH4)
CDM/JICDM
プロジェクト実施期間/
クレジット獲得期間
クレジット獲得期間:2008年~2012年の5年間
報告書
プロジェクト概要リオグランデドスル州に位置する1養豚場とサンタカタリーナ州に位置する8養豚場の合計9つのサイトで発生するバイオガスを回収・有効利用するシステムの導入を検討する。各養豚場には、回収したバイオガスを燃焼させるための焼却装置を設置する。これにより、CO2の21倍の温室効果を持つメタンガスの排出量を削減し、ブラジルおよび地域の持続的発展に貢献する。
ベースラインの設定・追加性の証明 小規模方法論AMSⅢ.D.では追加性の証明が承認統合方法論ACM0010に比べて簡略化されているが、本調査では承認統合方法論ACM0010の方法に従って、次の4つのステップにより決定した。
【ステップ1】: 提案するCDMプロジェクト活動の代替シナリオの同定
 ブラジルで一般的に利用されている「嫌気性ラグーン」と、ほとんど採用されていないものの先進的な「嫌気性ダイジェスター」の2つの方法が、考えうる代替シナリオである。
【ステップ2】: 障壁分析
 嫌気性ダイジェスターは、高額な投資が必要であり、かつ詳細なモニタリングや装置のメンテナンスの実施などが求められる。一方で、嫌気性ラグーンは単純で安価な技術であり、運転・メンテナンスともに容易である。投資障壁、技術障壁の両面から嫌気性ラグーンをベースラインシナリオに設定すべきである。
【ステップ3】: 投資分析
 嫌気性ラグーン、嫌気性バイオダイジェスターシステムともに収益を得ることのできないシステムである。
【ステップ4】: クレジット期間の更新によるベースラインの改定
 本プロジェクトのクレジット期間は10年に固定するため、ステップ4は必要ない。
GHG削減量 排出削減量は28,354[t-CO2e/年]と推計され、2012年までのクレジット期間の合計は141,772[t-CO2e]である。
  ベースライン排出量:28,516[t-CO2e/年]
  プロジェクト排出量:162[t-CO2e/年]
  リーケージ排出量:0[t-CO2e/年]
  排出削減量:28,354[t-CO2e/年]
モニタリング 本プロジェクトでのモニタリング項目は次のとおりである。
【バイオガス中のメタンガスの割合】
 固定されたガス分析器で計測する。ガス分析器は適切に維持管理する。
【豚の平均頭数】
 豚種ごとに増減を管理する。直接計数した頭数と間接的なデータ(例:出荷数、飼料購入記録など)とが一貫性を有していなければならない。
【豚の平均体重】
 豚種ごとに平均体重を計数する。
【フレアリング効率】
 固定されたガス分析器で計測する。ガス分析器は適切に維持管理する。
【バイオガス流量】
 二つのガス流量計で測定する。測定箇所は、嫌気性ダイジェスターの出口部分と、ガス燃焼チャンバーの入り口部分。流量計は工業規格に従い適切に維持管理・調整を行う。
【系統の排出係数】
【汚泥の搬出回数】
【系統からの購入電力量】
環境影響等 本プロジェクトの実施に伴い、河川や地下水の汚染の危険性を軽減することが出来る。また、バイオダイジェスターの設置技術およびバイオガスの回収・利用技術は、これまでにブラジル国内のCDM事業により採用実績のある技術であるが、未だブラジルの養豚場において広く普及していない。本プロジェクトを通じて、環境配慮型の本技術の効果が認知され、ブラジル国内で自主的に採用する動きがでることが期待される。さらに、衛生的な糞尿処理の実現により、家畜伝染病のリスクを軽減することにも寄与する。
事業化に向けて 本プロジェクトにおける初期投資に必要な設備費及び工事費に関しては、ブラジル銀行(Banco do Brazil)やブラジル三井住友銀行をはじめとした金融機関、地元金融機関からの融資によって調達が見込まれている。
 現時点では重要度の大きいものから順に、CDMプロジェクト化リスク、CER価格リスク、技術リスク、金利リスク、カントリーリスク、マクロ経済環境の影響によるリスク、自然災害のリスク、のリスクを想定している。本事業の実施に向けて、これらのリスクを可能な限り回避するように心がける。