調査名 | ベトナムにおけるサトウキビからエタノール含有ガソリンの製造に関する調査 | ||
調査年度 | 2000(平成12)年度 | ||
調査団体 | (株)ジャパンエナジー・リサーチ・センター | ||
調査対象国・地域 | ベトナム | ||
調査段階 | プロセス2:プロジェクトの実現可能性の調査 | ||
調査概要 | ベトナムでは自動車に有鉛ガソリンを使用しているが、サトウキビから得られる砂糖の未利用糖分であるモラセス(廃糖蜜)及び搾りかすであるバガスを原料として、バイオ技術によりエタノールを製造し、ガソリンと混合したエタノール混合ガソリン(ガソホール)を生産するプロジェクトの可能性、温室効果ガス削減効果について検討した。 | ||
調査協力機関 | 国立自然科学技術研究所(及び傘下にある熱帯生物研究所)、ペトロベトナム石油公社・石油プロセス技術開発センター | ||
調 査 結 果 | プロセス1※1 | (調査対象外) | |
※2 プ ロ セ ス 2 | プロジェクト概要 | ガソリン需要の多いベトナム南部地域を対象に、サトウキビから得られたエタノールでガソホールを製造し、2005年にはガソリン需要の半分を供給しようとするプロジェクト。サトウキビから砂糖を生産するかどうかで次の2つのケースのプロジェクトが想定される。 【ケース1】砂糖を生産するケース サトウキビからまず砂糖を生産し、その残りかす、搾りかすであるモラセス、バガスからエタノールを製造するケース。 【ケース2】砂糖を生産しないケース 砂糖を生産せず、すべてのサトウキビをエタノールの製造にあてるケース。 | |
対象GHGガス | 二酸化炭素 | ||
対象技術分野 | バイオマス利用 | ||
CDM/JI | CDM | ||
実施期間 | 2001年から2005年(2003年からガソホール供給開始) | ||
ベースライン | ベトナムでは2005年まで従来のガソリンが使用されると仮定し、プロジェクト期間にベトナム全土で消費されるガソリンから発生する二酸化炭素量をベースラインとする。 | ||
GHG削減量 | ○ベースラインケースの排出量 ガソリン需要の伸びは、表1のように年8.0%(ペトロベトナム石油公社予測)であるとすると、ベースライン排出量は47,353,000t-CO2/年。 (ガソリンの排出係数は2.720kg-CO2/kl、ガソリン比重は0.73であるとして計算) ○プロジェクトケースの排出量 ガソホールのエタノール含有量を20%、エタノールの排出係数を1,120kgCO2/kl、エタノールの比重を0.79とすると、ガソホールの排出係数は2,416kg-CO2/klとなる。 表2のように2005年にガソリン需要の約1/2がガソホールに転換されるように、工場を逐次建設する。ケース1で9工場、ケース2で4工場建設される予定である。 こうした条件のもと、ケースごとのGHG排出量を試算すると次のようになった。 (ケース1)46,051,000t-CO2 (ケース2)45,953,000t-CO2 従って、プロジェクトにより削減されるGHGは以下のようになった。 (ケース1)1,302,000t-CO2 (ケース2)1,400,000t-CO2 | ||
費用 | 建設費、原料費、副原料費、光熱水費、労務費、(ケース1の場合は砂糖外販収入)を考えると、費用は以下のようになる。 (ケース1)23,000,000(千円) (ケース2)36,400,000(千円) | ||
費用/GHG削減量 | (ケース1)17,700(円/t-CO2) (ケース2)26,000(円/t-CO2) | ||
モニタリング | ○べースライン排出量を把握するためのモニタリング ・ガソリンの年間供給量(ベトナムではガソリン製品を輸入しており、石油製品輸入関係者より確認する) ・ガソリンの年間販売量(ガソリン販売業者からの油種別の販売量実績を把握し、それらが全てガソリンで販売されたとし、ガソリンの年間販売量を確認する) ○プロジェクト排出量を把握するためのモニタリング ・ガソリンのガソホールへの年間混合量(ガソリンとエタノールの混合作業を行う石油製品輸入関係者より確認する) ・エタノール生産工場におけるエタノールのガソホールへの年間混合量(ガソホールに混合するエタノールは、混合作業を行う石油製品輸入関係者が購入することになり、この量からエタノールの年間混合量を確認する) ・ガソホールの年間販売量(ガソリン販売業者からの油種別の販売実績を把握し、その中からガソホールの年間販売量実績を把握する) ・エタノールの生産工程で使用される燃料の種類、量(エタノールの生産工程で使用される燃料の種類、量によって、CO2発生量は変化することになるので、この値を把握する) | ||
GHG削減以外の影響 | ○環境面 ・エタノールの添加によりガソリンのオクタン価を向上させるので、有鉛ガソリンの低減が期待できる。 ・エタノールは含酸素燃料であり、一般的にCO及びHC(炭化水素)の排出量が削減する。ニート・エタノールの場合、アルデヒドはガソリンの3倍も排出するが、エタノールはアセトアルデヒドを排出することから、その毒性は低い。 ○社会面 ・工場を作って、砂糖を併産するケース(ケース1)の場合には、砂糖の生産量が現状の2倍以上になる。中国の需要増大を想定すれば、中国などへの輸出による国際市場で吸収できる量であるとの見解もあるが、その場合の砂糖価格の低下は避けられないと思われる。 ・サトウキビ栽培は基本的に、労働集約型農業であり、多くの労働力を必要とするので、雇用が創出される。 | ||
実現可能性 | ・プロジェクトの持続性を確保するためには、エタノールの価格や量を安定させる必要がある。エタノールをガソリン基材として想定するためには、原油価格の変動に伴うエタノール価格の変動を吸収する政策の導入が必要になる。 ・エタノール生産の基盤となるサトウキビ生産を確保する政策も前提となるだろう。 | ||
他地域への普及効果 | 本プロジェクトは、熱帯地域で農地への変換が可能な未利用の土地があれば、同様の計画を立案することが可能であり、他の東南アジア地域での普及適用効果が期待できる。実際にタイでは、タイ石油公社がエタノールを10%混合するガソホールを供給しようと計画している。 | ||
プロセス3※3 | (調査対象外) | ||
報告書 | 報告書(PDFファイル 2.33MB) | ||
調査評価 | ・本プロジェクトは熱帯性の地域でバイオマスエネルギーを活用していく上で重要な位置付けにあるものであり、大きな期待ができると評価できる。 ・バイオマス生産に基づくエネルギー回収において留意すべきは派生残渣、汚水対策を適正に行うことであることから、この点への配慮が必要である。 ・本プロジェクトの持続可能性は原油価格の動向、生産規模、生産・供給体制に左右される。これらの点に関して具体的な検討が欲しい。 ・経済発展により労務費は上昇することは明確なので、このファクターも入れた解析を行っておく必要がある。 | ||
備考 |
※1. プロセス1: | 具体的なF/S案件を発掘するため、対象国や技術分野を特定せずに、CDM/JIとして広い可能性を考慮した基礎的な調査 |
※2. プロセス2: | 具体的な調査対象国・調査地域、対象技術分野を前提とした実現可能性調査 |
※3. プロセス3: | 実際に炭素クレジット獲得に向け、プロジェクト設計書の作成、バリデーション、炭素クレジットの投資探しなど、F/S終了後に当たるプロセスを行う調査 |