中国・アモイ市廃棄物処分場ガス及び下水汚泥処理ガスの発電利用CDM実現可能性調査

公益財団法人 地球環境センター

CDM/JI事業調査結果データベース

調査名中国・アモイ市廃棄物処分場ガス及び下水汚泥処理ガスの発電利用CDM実現可能性調査
調査年度2010(平成22)年度
調査団体株式会社EJ・ビジネスパートナーズ
調査協力機関上海為泰環保科技事務所、厦門丸日新源有限公司、厦門(アモイ)市政経済発展公司、厦門汚水処理有限公司、東部最終処分場
調査対象国・地域中国(厦門(アモイ)市)
対象技術分野廃棄物管理
対象削減ガス二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)
CDM/JICDM
プロジェクト実施期間/クレジット獲得期間2013~2022年/2013~2022年
報告書
プロジェクトの概要本プロジェクトは、中国厦門市(以下、アモイ市)において排出され、これまで資源化・有効利用されていなかった下水汚泥の嫌気性発酵及び東部都市ごみ埋立処分場からのガス回収により得られたメタンで、発電及び廃熱による汚泥乾燥を行うプロジェクトである。発電容量は6MW。
適用方法論 本プロジェクトは、中国・アモイ市において排出され、これまで資源化・有効利用されていなかった下水汚泥の嫌気性発酵及び最終処分場からのガス回収により得られたメタンで、ガスエンジンによる発電及びガスエンジン廃熱利用による汚泥消化槽の加温等を行うプロジェクトである。ベースライン方法論としては既存の承認方法論である、「ACM0001:埋立処分場ガスプロジェクト活動のための統合方法論」、「AMS-I.D:グリッド接続の再生可能発電」、及び「AMS-III.H:排水処理でのメタン回収」を適用する。
ベースラインの設定 ベースラインシナリオは、処分場に埋め立てられる都市ごみからのメタン発生、処分場に埋め立てられる下水汚泥からのメタン発生、及び本事業から給電することにより代替されるグリッド電力消費である。プロジェクトシナリオでは、下水汚泥の嫌気性発酵と、処分場からのガス回収により、得られたメタンを燃料とした発電電力をグリッドに給電することで化石燃料の使用を削減する。また、下水汚泥の埋め立て回避によるメタン発生回避、及びガスエンジン廃熱利用による汚泥乾燥を行う。
 中国では、下水汚泥のエネルギー利用は一般的でなく、脱水による埋め立て処分が一般的な処分方法であることから、ベースラインの設定は妥当である。
追加性の証明 本プロジェクトは大規模CDMに分類されるため、追加性証明は、投資バリア、技術バリア、一般的慣行バリア、その他バリア等のバリア(障壁)が存在するために、そのままではプロジェクトが実施されないことが証明できればよい。
 現在、下水処理施設で下水汚泥消化によるエネルギー回収は行われておらず、本プロジェクトが最初のケースとなるため、技術的バリアが存在する。
 投資バリアについても、以下の投資分析を行う。本プロジェクトの経済性について、CERsの売却益がない場合と、10米ドル/tCO2のCERs売却益がある場合を比較すると、IRRに大幅な改善がみられ、本プロジェクトのCDMプロジェクトとしてのポテンシャルは高い。
    • CERsクレジットなし→IRR=-0.9%(回収不可能)
    • CERsクレジットあり→IRR=19.5%(6年で回収)
 本プロジェクトへの投資のベンチマークは、中国人民銀行の長期金利6.0%とした。CERsの売却益がない場合は投資資金回収そのものが不可能であるため、本事業はCDM無しでは行えないと判断される。

 以上より、技術バリア、投資バリアが存在することが証明されるため、本プロジェクトの追加性は証明されると考える。
GHG削減想定量298,610tCO2/年
モニタリング本プロジェクトでは、ACM0001、AMS-I.D及びAMS-III.Hに従って、排出削減量の検証に必要となるパラメータをモニタリングする。モニタリングは、発電プラントの各箇所及び発電機等でのガス消費量や発電量を直接測定することを基礎とし、それらの値を計装機器により測定する。
環境影響等 プロジェクト実施による環境影響は、ガスエンジン稼働時の微量物質による大気汚染、プラント騒音、建設時の粉じんなどが考えられるが、環境影響評価を行い、高水準の排気管理、モニタリング及び維持管理を行って対応する。
事業化に向けて 本プロジェクトで採用する汚泥消化技術、メタンガス発電技術については、海外(特に欧州)で多くの実績がある技術を導入するため、技術的な実現性は高い。また、本プロジェクトの経済性はCER収入がある場合に限り、ベンチマークを上回る。そのため、ポスト京都の日本・中国間での国際交渉動向をにらみ、本事業の排出削減効果をクレジット等の経済価値とすることが最優先される。今後は、コストの削減を進め、売電事業としての経済性を上げる必要がある。
「コベネフィット」効果
(ローカルな環境問題の改善の効果)
 本プロジェクトは、中国で特に大きな課題となっている下水汚泥の処理及び発電プロジェクトであり、プロジェクト実施によって、現在多くが埋立処分されている下水汚泥のエネルギー利用、腐敗による悪臭防止等の公害対策と廃棄物量削減に寄与できる。
ホスト国における持続可能な開発への寄与 中国では国の発展と同時にエネルギー消費も増大している。それに伴う、化石燃料の消費量も増加していることから、今まで有効に利用されていなかった廃棄物や汚泥をエネルギーとして有効活用することは、環境面・経済面においても非常に効果的であり、先進国からの技術移転という観点からも、持続可能な開発に貢献が可能である。