ベトナム・ハノイ市等における蛍光灯インバーター導入プログラムCDM事業調査

公益財団法人 地球環境センター

CDM/JI事業調査結果データベース

調査名ベトナム・ハノイ市等における蛍光灯インバーター導入プログラムCDM事業調査
調査年度2009(平成21)年度
調査団体クリアス株式会社
調査協力機関ハノイ市政府計画投資局、(有)クライメート・エキスパーツ、(株)PEARカーボンオフセット・イニシアティブ
調査対象国・地域ベトナム(ハノイ市、ホーチミン市、ダナン市)
対象技術分野その他(省エネ)
対象削減ガス二酸化炭素(CO2)
CDM/JICDM
プロジェクト実施期間/クレジット獲得期間2010年~2020年/2011年~2020年
報告書
プロジェクトの概要 本プロジェクトは、ベトナム天然資源環境省及びハノイ市の支援の下、ベトナム政府及びハノイ市政府の省エネルギー政策の一環として、CO2削減と省エネルギーに貢献することを目的に、ハノイ市、ホーチミン市、ダナン市をはじめとするベトナム全土の行政施設等の直管型蛍光灯機器の旧式安定器を電子式安定器(インバーター式)に交換する。本プロジェクトに用いる電子安定器の製造工場は、ベトナム政府の要請によりハノイ市郊外のホアラック・ハイテクパークに建設する計画である。
 ベトナム国内において、高効率の省エネタイプの電子安定器は普及しておらず、中国SINO及びPhilipsの低価格・電力高消費タイプの安定器やグロー式のきわめて効率の悪いものが主流となっている。本プロジェクトは、蛍光灯システム全体を取り替えるのではなく、安定器部分のみを、エネルギー効率のみならず他の面でも高性能で最先端の製品と取り替え普及させるプログラムである。電力使用量が約40%削減されると見込まれることから、プログラムCDMで事業化を行う。
 本製品の製造技術に関しては、現地における部品製造、調達方法及び製造、管理方法、設置方法含めて、すべての技術ノウハウをベトナムへ移転する数少ない技術移転型CDMとなっている。
 本プロジェクト(PoA)の第1段階として、ハノイ市政府をカウンターパートに、ハノイ市の既存蛍光灯システムに電子式安定器を取り付け、第2段階としてはホーチミン市、第3段階はダナン市を対象とする。Activiy1はハノイ大学で、2010年末までに国連登録を行い、2011年から本格的に設置を開始する計画である。2014年初めまでに1,000万台設置し、年間約100万tCO2の温室効果ガス削減を行う計画である。
 ベトナムでは、高度成長により電力需要も旺盛であり、電力の消費量も2001年の25,851GWhが2005年には44,932GWhに増加し、ベトナム電力グループでは2010年には106,724GWhに増加すると見込んでいる。こうした電力の消費量の増加は、新たな発電所の新設を必要とし、環境汚染の深刻化や天然ガス・石炭資源の枯渇の問題を内包しており、ベトナムの持続可能な発展の障害として懸念されている。
 本事業により、1,000万台の安定器が設置されたとすれば、年間およそ1680GWhの電力消費量の削減が行われるという省電力効果があり(前提条件に依存するため概数として)、単純計算で400MW程度、すなわち大型火力発電所一基分の建設を回避する効果もあり、エネルギー資源の保護とエネルギーの自給の観点からもベトナムの持続可能な発展に貢献する。
適用方法論 本プロジェクトではAMS-II.C Version 13“Demand-side energy efficiency activities for specific technologies”を適用する。
 また、方法論の記述により、ベトナムのグリッド排出係数は、AMS-I.D “Grid connected renewable electricity generation”に基づいて求める。
ベースラインの設定 本PoAにおいて、ベースラインシナリオの決定にあたって、以下のようなシナリオが考えられる。
    • A) 自発的に現状での蛍光灯器具全体を同じあるいは高効率のものを設置(既存設備の場合には)交換する。

    • B) 自発的に現状での蛍光灯の安定器のみを効率よいものに変換する。

    C) 現状のまま蛍光灯照明機器の使用が続く。
 C)の、現状のまま蛍光灯を使い続けることは、建物の所有者に対しては技術的にも経済的にも、なんら問題が存在しない、最も実現可能性が高いシナリオである。従って、C)の「現状のまま蛍光灯の使用が続く」ことが、本PoAの各CPAのベースラインである。
追加性の証明 PoAの追加性の点に関しては、クリアス内部の文書とCER収入に依存したビジネスモデルデザインという点を示すことで十分と考えられる。主語はクリアスとなる。
 CPAの追加性に関しては、主語はむしろ建物のオーナーであり、クリアス以外の方法で、蛍光灯電子安定器を導入する可能性を論証することとなる。Prevailing Practiceをバリアとするには、first-of-this-kindのCDM理事会からのガイダンスが出ていないので、どのようにできるかは現時点では不明であるが、EB50で承認されたACM0005に関連した記述があり、またバリア評価のガイドラインもリリースされたため、とくにアクセス可能性などの点から十分に論証できると思っており、証拠を集める過程にある。
GHG削減想定量853,200tCO2/年
モニタリング 排出削減量=グリッド排出係数×Σ点灯時間×[(元のW数)-(安定器交換後W数)]
    • グリッド排出係数(グリッドロス補正後):PDD作成時に決定
    • 元のW数、安定器交換後のW数:交換時に測定して決定。工事引渡時のインスペクション項目に入れておく。
    • 点灯時間:可能なら(消費電力量という形で)全数測定。それが難しければサンプリング手法を適用。
環境影響等 本事業では、工場をホアラック・ハイテクパークに建設する。ホアラック・ハイテクパークは、ベトナム科学技術省の管轄で、ホアラック・ハイテクパーク管理委員会が管理を行っている。環境影響評価の政府認可は、ホアラック・ハイテクパーク管理委員会が行う。
事業化に向けて クレジット価格9ユーロ/tCERでIRRが4.2%見込まれる。クリアスは、バイヤーと仲介契約を行い、セカンダリーCER価格の90%程度の価格と、売り手とバイヤーとのERPA契約価格との差額を報酬として受け取る計画である。
 ベトナム関連各所の協力状況や市場環境(蛍光灯機種の普及状況、製品のローカルカスタマイズ見込、CERの量等)を見た場合、事業化の見込みは現時点では非常に高いと考える。
 但し、CER収入のみが本事業の収入であることから、本事業の国連登録と2013年以降の枠組みが決定した段階で、プロジェクトを開始する。現段階においては、2009年12月のCOP15の結果を受けて、金融関連及び事業会社の2013年以降の投資スタンスが未確定であり、最終的な事業化については、COP16での各国の合意後となることが予測される。
環境汚染対策効果 プロジェクト(電子安定器取付)によって直接環境影響が悪化する懸念はまったくなく、またその必要性に関するベトナムの法規制も存在しない。工場建設に関しては、環境影響評価は必要であるが、部品のアセンブリだけのための簡易工場であるため、問題が生じる余地はほとんどない。
持続可能な開発への貢献 本事業により、1,000万台の安定器が設置されたとすれば、年間およそ1680GWhの電力消費量の削減が行われるという省電力効果がある(前提条件に依存するため概数として)。これは、天然ガス・石炭資源の枯渇の問題を内包しているベトナムにとって、エネルギー資源の保護とエネルギーの自給の観点からもベトナムの持続可能な発展に貢献する。