モザンビーク・バイオディーゼルCDM事業調査

公益財団法人 地球環境センター

CDM/JI事業調査結果データベース

調査名モザンビーク・バイオディーゼルCDM事業調査
調査年度2008(平成20)年度
調査団体シナネン株式会社
調査協力機関Petroleos de Mocambique, S.A.、社団法人アフリカ開発協会、三菱UFJ証券株式会社、木村化工機株式会社、社団法人道路緑化保全協会
調査対象国・地域モザンビーク
対象技術分野バイオマス利用
対象削減ガス二酸化炭素(CO2)
CDM/JICDM
プロジェクト実施期間/クレジット獲得期間2010年~2032年/2011年~2032年
報告書
プロジェクトの概要モザンビーク共和国の首都マプート市の北東に位置するガザ州でジャトロファの委託栽培及び新規農園の開発を行い、バイオディーゼル燃料(BDF)製造プラントを建設し製品を販売する。製造したBDFを軽油に20%混合し、現地のカウンターパートであるペトロモック社と共に、マプート市の公共バス等に供給する。これにより二酸化炭素排出量を削減する。
 モザンビーク政府はエネルギーにかかる植林の推進、プライベートセクターの投資の推進、再生可能エネルギー導入などをポリシーに掲げており、本件の妥当性は高い。以下の点で、モザンビークへの持続可能な開発への貢献を期する。
  • 国産の代替燃料の供給による燃料の供給安定と外貨の流出抑制
  • バイオディーゼル燃料の軽油代替による都市大気汚染の軽減
  • 農村の雇用創生と都市との格差低減、薪代替燃料の提供による家庭内生活環境改善
ベースラインの設定 本プロジェクトに適用を検討している方法論は “AM0047 Production of biodiesel based on waste oils and/or waste fats from biogenic origin for use as fuel (Ver. 02)”の改定案のバージョンである。ベースラインのシナリオは、(1)ジャトロファ栽培農業が行われない、(2)バイオディーゼルのプラントが建設されない、(3)消費者は現在使用している軽油を継続して使用し続ける、の三点である。
 ベースライン排出量は、BDF製造量(PBDy)、BDF消費量(BDy)、及びBDFと軽油の混合燃料量*混合率(CBBD,y*fPJ,y)のうち、最も保守的な値となる。以下の通り。
 BEy = BDy*CFPD*EFCO2,PD×NCVPD = 33,000 * 0.937 * 0.0741 * 43 = 98,546
追加性の証明 モザンビークにおいてBDFの製造や利用はパイロットベースでは進められているものの、大規模な商業ベースでの例はまだなく、BDFの市場は十分に成熟していない。また、ココナツ油を原料とするBDF製造はすでに行われているが、昨今のココナツ油の価格高騰を受け、製造は大幅に縮小もしくは停止されている。一方、現在、プロジェクト実施地域においては、他の作物の栽培への新規投資の動きは全く存在しない。また、近隣地域では油料作物の栽培は行われたことがなく、事業なしでは作物の栽培に必要な資金や技術の導入や、農民への栽培技術の指導等は起こりえない。以上より、投資障壁、技術的障壁、及び一般的な慣行による障壁の存在が認められ、本事業は追加的であるといえる。
GHG削減想定量 下表のとおり。

年度
1年目
2年目
3年目
4年目
5年目
6年目
7年目
製造量20%
製造量40%
製造量60%
製造量80%
製造量100%
製造量100%
製造量100%
2011年
2012年
2013年
2014年
2015年
2016年
2017年
合計(tCO2)
12,867
26,338
39,507
52,676
65,847
65,847
65,847
モニタリング 事業会社においてモニタリングマニュアルを作成の上、モニタリング責任者の監督の下、適用予定の方法論に定められた項目のモニタリングを実施する。
特に重要なモニタリング項目は、(1)ベースライン排出量の算定に必要なBDF製造量(PBDy)、(2)BDF消費量(BDy)、及び(3)BDFと軽油の混合燃料量*混合率(CBBD,y*fPJ,y)の各数値である。
 また、プロジェクトで製造されたBDFが確実に最終消費者により消費され、最終消費者が同時に排出削減をクレームするようなことが無いような体制作りが重要となる。
環境影響等 本事業はカテゴリAに属し、環境影響評価の実施が必要である。農業とプラントの複合セクターにまたがる環境影響を検討する必要がある。プロジェクトの環境影響として配慮を要する項目は、(1)単一植物の大規模栽培による周辺の生態系への影響と地力の収奪、(2)BDFプラントの廃水や副産物の処理についての2点である。
事業化に向けて 事業化に向けての課題は、以下の通りである。
  1. ジャトロファ農業の課題: 契約農家の組織化、農家への栽培技術の指導体制の構築
  2. 輸送コストの低減:農場の位置:BDFの大消費地でもある首都マプートに可能な限り近い位置の農場を、継続して探索すること。
  3. BDF促進のための制度:導入を動機付けるための目標や義務を根拠付ける法律、或いは、計画の整備が望ましい。
  4. BDFの需要家と消費:BDFの消費家のうち、ガソリンスタンドなどの販売以外に需要が特定できるのは、バス・シャパなどの公共交通と列車貨物である。これら特定需要においては、B5やB10では本事業の生産量を消費しきれない。B20のようにブレンド率を上げて適用することが必要である。
コベネフィットの実現 マプート市の大気汚染は深刻化を辿る一途であり、シャパやトラックをはじめとしたディーゼル車に整備不良車が多く、排気ガスが問題になっている。ジャトロファ油BDFの大気汚染の原因となる硫黄酸化物の元となる硫黄含有量は、軽油の1/10以下である。よって、ディーゼル車へのBDF適用により大気汚染の軽減が期待される。現状の大気汚染物質の数値は、現在、エドワルドモンテーヌ大学が測定を行っている。この数値が公表されればデフォルト値として利用できる。またプロジェクト期間で継続して大気汚染物質濃度を測定すれば、BDF適用後のコベネフィットの効果を定量的に適用前と比較することが可能となる。