マダガスカル・ナンヨウアブラギリ由来のバイオ燃料製造・販売事業調査

公益財団法人 地球環境センター

CDM/JI事業調査結果データベース

調査名マダガスカル・ナンヨウアブラギリ由来のバイオ燃料製造・販売事業調査
調査年度2007(平成19)年度
調査団体株式会社双日総合研究所
調査協力機関マダガスカル電力・水道供給会社 (JIRAMA:JIRO SY RANO MALAGASY)
調査対象国・地域マダガスカル
対象技術分野バイオマス利用
対象削減ガス二酸化炭素(CO2)
CDM/JICDM
プロジェクト実施期間/
クレジット獲得期間
25年間 (クレジット獲得期間:4年目から10年間)
報告書
プロジェクト概要提案プロジェクトは、他の本邦企業による吸収源CDMプロジェクトが対象としない土地、すなわち吸収源CDMの適格性から除外される非森林地域を対象に、地域住民へナンヨウアブラギリの栽培を委託し、収穫された種子を用いてバイオディーゼル燃料(BDF)を生産するものである。生産されたBDFは、軽油の代替燃料として、同国の化石燃料燃焼発電設備に供給される。
ベースラインの設定・追加性の証明 提案プロジェクトは、承認済み小規模CDM方法論、「AMS-I.D.:グリッド接続の再生可能発電(Version 13)」を適用する。
1. ベースラインの設定
 AMS-I.D.に従い、本プロジェクトのベースラインは下記の(1)(2)の合計となる。
    • (1) トアマシナ電力系統の火力発電所のベースライン排出量:年間発電量(kWh)にグリッドの排出係数を乗じたもの

    (2) マイクログリッドのベースライン排出量:年間発電量(kWh)に、最適負荷で稼動する適切な容量の近代的ディーゼル発電設備の排出係数を乗じたもの
2. 追加性の証明
 マダガスカルでは、BDFの製造の事例はなく、具体的な実施が見込まれるプロジェクト計画も存在しない。したがい、提案プロジェクトは、適用可能となるBDF製造技術がマダガスカル国内に普及しておらず、技術バリアが存在するため、追加的であるといえる。
GHG削減量GHG排出削減量 = (ベースライン排出量) - (プロジェクト排出量)-(リーケージ)
= 25,846[tCO2e/y] - 5,629[tCO2e/y] - 3,392[tCO2e/y]
= 16,825[tCO2e/y]
モニタリング ベースライン、プロジェクト排出量、リーケージの算定に必要なパラメータをモニタリングする。主なモニタリング項目は以下のとおりである。
- BDFを利用して発電された電力量
- プロジェクトサイト内での化石燃料利用量
- 各発電所へのBDF輸送走行距離
- 施肥された合成肥料の質量
- 施肥された有機肥料の質量
 また、AMS-I.D.に従い、発電燃料として使用されたBDF量も計算する。
環境影響等 マダガスカルでは、全てのCDMプロジェクトにおいて環境影響審査が必要とされている。提案プロジェクトにより建設されるBDFプラントに係るEIAは必須である。また、マダガスカルでは、森林に限らず1,000 ha以上のプランテーションにはEIAの実施が必要とされており、ナンヨウアブラギリの栽培は農民によって実施されるものの、そのEIAの実施は提案プロジェクトに含まれる。提案プロジェクトでは、プラントからの排水による水質汚染、また騒音・振動、土壌の変化などの環境影響が発生する可能性が想定されるため、プロジェクト実施者は、関連する全ての法規および基準に従ってプロジェクトを設計し、負の影響が大きいものに対しては、適切な低減策を講じる必要がある。
事業化に向けて【ナンヨウアブラギリ栽培】
マダガスカルにおいては、村落のリーダーは存在するが、複数の村落間でのコミュニケーションはほとんどなく、栽培作業を行うためには、日本側の栽培指導者の存在が不可欠である。小規模モデル事業から始め、日本側の栽培指導者を派遣して栽培技術をマダガスカルに定着させていくことが必要である。
【原料調達/ナンヨウアブラギリ種子】
提案プロジェクトでは、充分な油含有量の種子が生育するまで種子を輸入調達することとしたが、現段階で纏まった量の種子を輸出できるのはミャンマーのみであろうと推測される。ミャンマーにおける栽培状況および栽培計画の詳細を確認し、現地訪問して栽培状況の確認および政府関係者との種子調達交渉が必要である。
【経済性の向上】
提案プロジェクトでは、発電所31ヶ所へのBDF供給を計画した。しかし、さらなる経済性の向上のためには、マダガスカルにおける特定運送業者への供給、一般軽油自動車への供給等、販売分野を広げる必要がある。 これらについてはCDM方法論の承認状況を注視しながら検討していく必要がある。