カザフスタンにおける下水汚泥等を活用したバイオガス発電事業調査

公益財団法人 地球環境センター

CDM/JI事業調査結果データベース

調査名カザフスタンにおける下水汚泥等を活用したバイオガス発電事業調査
調査年度2004(平成16)年度
調査団体東北電力(株)
調査協力機関環境保護省、アスタナ市、気候変動コーディネートセンター他
調査対象国・地域カザフスタン(アスタナ市)
対象技術分野廃棄物管理
対象削減ガス二酸化炭素, メタン
CDM/JIJI
実施期間2008年11月から21年間
報告書概要版概要版 (354KB)
詳細版本文 (4.0MB) 本文 (3.3MB)
概要本プロジェクトは,アスタナ市において分別回収された有機廃棄物と下水処理場から発生する下水汚泥を同一の発酵槽に投入し,共発酵させることにより,メタンガスを回収し発電を行うプロジェクトである。
プロジェクトシステムは,アスタナ市において埋立て処分場に搬入される一般廃棄物のうち共発酵槽に受け入れ可能な有機性廃棄物(食品廃棄物)60,130㎥/年受け入れ,下水処理場における下水流入量を136,000㎥/日としてガス量を算定した。その結果,固形廃棄物由来,下水汚泥由来のガス発生量は,それぞれ7,235Nm3/日11,125m3/日となり,ガス発生量から算出される日平均発電電力量は30.07MWhとなり,平均発電出力は1.25MWとなった。
なお,アスタナ市の下水処理場を含む円借款事業「アスタナ上下水道整備事業」(以下「JBICプロジェクト」)が2003年7月に供与されており,本プロジェクトは同事業の実施を前提とし,既存のシステムに大きな影響を与えない系統ならびに設備を採用した。
ベースラインの設定・追加性の証明本調査では,アスタナ市における廃棄物処理,下水処理における選択肢の組合せから12通りのシナリオを想定した。これらについて,法律・制度,技術的バリア,投資バリア,環境影響,地域性,市場障壁を考慮し,各項目を検討した結果,「廃棄物は一括収集後,埋立て処分され,発生したメタンガス(以下LFG)はフレア処理される。また,下水汚泥は嫌気性発酵させ,発生したメタンガスはボイラにて燃焼される。」をベースラインシナリオとした。
これに対し,プロジェクトシナリオは「廃棄物のうち,分別回収または工場からの有機物を下水処理場へ搬入し,その有機廃棄物は下水汚泥と一緒に下水処理場の嫌気性発酵槽に投入され,発生したメタンガスは発電に利用される。」であるが,このシナリオは,ベースラインシナリオと比較して,技術的バリア,投資バリアで劣っているが,JIプロジェクトを実施することにより,技術的バリアは技術指導などにより,投資バリアは,CO2クレジット売買によりバリアを低くすることができ,追加性がある。
GHG削減量GHG削減量 =ベースラインGHG排出量―(プロジェクトGHG排出量+リーケージ)
        =73,923[t- CO2/年]
ここで,ベースラインGHG排出量=67,200;プロジェクトGHG排出量=-6,798,リーケージ=75(運搬による)
モニタリング本プロジェクトで必要となる主なモニタリング計画項目は,以下のとおりである。

流入下水量バイオガス発電量
メタンガス濃度メタンガス発熱量
有機廃棄物搬入量系統電源構成
各燃料使用量系統発電電力量
電力の排出係数法律
有機物搬入トラック台数LFG回収量
トラックの燃費軽油発熱量
環境影響等本プロジェクトにおける環境影響としては,ガスエンジンによる騒音あるいは振動の問題,また,有機性廃棄物を下水処理場に受け入れることから,有機廃棄物からの異臭の問題が想定される。
しかし,簡易な設備対策を行うことでこれらの環境影響を十分に低減することが可能である。
事業化に向けて本プロジェクトは,プロジェクトファイナンスを活用したIPP形態による実施を想定している。カザフスタン国のS&Pによる格付け等を考慮しても,同国においてプロジェクトファイナンスを組成して事業を実施する環境はある程度整っていると言える。
しかし,財務分析によりアスタナ市における本事業は,クレジットによる収益を考慮しても,十分な事業性が確保できない結果となり,事業の実現は難しいとの結果となった。この要因は,アスタナ市において,LFGのフレア処理を伴う廃棄物処分場新設計画が進行しており,ベースラインを当初想定から大幅に変更せざるを得なくなったためである。
一方,財務分析は,他の地点での同種のプロジェクトでは,事業性が確保できる可能性を示唆するものとなった。
備考仮バリデーション:
ホスト国であるカザフスタン共和国は,JI国として京都議定書を批准する予定としており,現在,国内の調整を進めている状況である。カザフスタン共和国は,自国の温室効果ガス排出量を正確に把握する体制が整いつつある。しかしながら,その体制が整わずに京都議定書に批准する可能性も否定できない。そのため,今回は,「第2トラック」と呼ばれるCDMにおけるCDM理事会と指定運営組織と類似した第三者機関による検証プロセスを受けるために,PDDを作成し,DOEに検証を依頼している。
本調査では,1月上旬,PDDをDOE(DNV)に提出し,JIデターミネーションを実施した。
DOEレポートでは,事業実施前の適切な段階での幾つかの確認事項を指摘しつつも,第一約束期間におけるGHG削減量を,308,012t-CO2と想定している。