ロシア・スルグート市埋立処分場メタンガス利用調査

公益財団法人 地球環境センター

CDM/JI事業調査結果データベース

調査名ロシア・スルグート市埋立処分場メタンガス利用調査
調査年度2004(平成16)年度
調査団体四国電力(株)
調査協力機関対象処分場所有・運営会社:CJSC Polygon Ltd.
仮適格性審査:(財)日本品質保証機構(JQA)
調査対象国・地域ロシア(チュメニ州・ハンティマンシ自治管区・スルグート)
対象技術分野廃棄物管理
対象削減ガス二酸化炭素, メタン
CDM/JIJI
実施期間2008年1月~2027年12月(20年)
報告書概要版概要版 (281KB)
詳細版本文 (3.2MB) 本文 (1.3MB)
概要ロシア・チュメニ州・スルグート市の民間企業、CJSC Polygon Ltd.(以下「ポリゴン社」)が所有・運営する埋立処分場から発生するランドフィルガス(以下「LFG」)を回収し、LFG用ガスエンジンコジェネレーションシステム(以下「CGS」)のエネルギー源として有効利用を図ることにより、LFGそのものの大気拡散を防止する。加えて、CGSからの熱電供給により、ポリゴン社処分場に設置されるディーゼルエンジン発電機およびボイラを代替することにより、化石燃料の使用を抑制し、GHG排出量を削減する。
ベースラインの設定・追加性の証明(1)ベースラインの設定:現在、スルグート市では、処分場から発生するLFGは問題視されておらず、LFGの回収を義務付ける法規制はなく、また当面その計画もない。スルグートでは化石燃料が豊富であり、エネルギー供給量は十分かつ安価であるが故に省エネ意識も低い。さらに、LFGの回収利用技術は広く認知されるようなレベルではなく、経済的な負担も大きいため、ポリゴン社自ら自発的に本プロジェクトを実施するようなインセンティブが働かない状況にある。従って、LFGの回収利用は全く実施されず、LFGの大気拡散が継続するというシナリオ(現状維持)がベースラインシナリオとなる。すなわち、プロジェクトがなければ、何らGHGの排出は削減されない。
(2)ベースライン方法論:ACM0001、AMS-I.C., I.D.
(3)追加性の証明:本プロジェクトはJIであるため、追加性証明ツールに記載されたSub-Step 2b - Option III, Step 5のみにより追加性を判断した。
まず、追加性証明ツール(Option III:ベンチマーク分析)に従い、ERUの収入は考慮せず、本プロジェクトにおける投資額と売電・売熱収入のみでキャッシュフローを試算したところ、プロジェクト期間20年では累積収支が黒字とならず、プロジェクトとして成り立たないという結果を得た。
次に、上記投資分析に対し、ERUの経済的価値を導入した場合のキャッシュフローを試算した結果、ERU単価6US$/t-CO2でIRR12.1%となり、ロシア国債の利回り(2004年9月現在7.8~8.0%)に比べて、事業性が期待できるという結果を得た。
以上により本プロジェクトには追加性があると言える。
GHG削減量プロジェクト期間(20年間)における削減量合計:363,270t-CO2
モニタリング(1)モニタリング方法論:ACM0001、AMS-I.C., I.D.
(2)モニタリング方法:本プロジェクトによるGHG排出削減量は、CGSおよびフレアスタックで利用されるLFGの量とメタン濃度、ならびにCGSから供給される電力量と熱量を計測することにより算出可能。



図 プロジェクトバウンダリとモニタリング計画

ID1(流量計:回収されるLFG量)
ID2(温度計:LFGの温度)
ID3(圧力計:LFGの圧力)
ID4(メタン濃度計:LFGのメタン濃度
ID5(流量計:CGSに共されるLFG量)
ID6(流量計:フレア処理されるLFG量)
ID7(温度計:フレアスタック表面温度)
ID8(メタン濃度計:フレア排気中のメタン濃度)
ID9(電力量計:売電量)
ID10(熱量計:売熱量)
環境影響等本プロジェクトにおける環境影響要因として、LFG回収用ブロアーやCGSからの排気ガス、騒音、振動、排水等が考えられるが、環境影響評価を試算した結果、処分場が住宅地から十分に離れているという地理的条件を勘案して、住民に対して与える影響は全くないと考えられる。また、これらの件については、スルグート市環境委員会におけるインタビューにおいても、問題ないとの見解を得ている。
事業化に向けてロシア政府の批准により京都議定書が発効したものの、ロシア政府は今後、国内排出量の算定システムや登録簿(レジストリー)、年次目録(インベントリー)に加え、DNAの設立やJI実施ガイドラインの設定等、参加資格要件を満足するため早急にJI実施環境を整備していく必要がある。
一方、事業性としては、プロジェクトの投資回収年数10年程度、プロジェクト期間におけるGHG排出削減量合計は30万トン程度であり、クレジット単価を6US$/tCO2程度とした場合の内部収益率は12%程度となることから、本プロジェクトの事業性は十分にあると考えられる。
しかしながら、ロシアにおけるJI実施環境の整備遅れに伴うJIプロジェクト承認リスク、ERU移転リスクに加え、国際ルールに則った投資環境の整備遅れに伴う市場リスク等、検討すべき課題が潜在していることも事実であり、実現に向けて今後更に慎重且つ詳細な調査・検討が必要であると考えられる。
従って、プロジェクトの実現に向け、今後もロシア政府の動向に十分注視しつつ、更なる調査・検討を実施し、プロジェクトの成功に向けて努力していきたいと考えている。
備考仮バリデーション
OEによる適格性審査を受審した(デスクレビュー2回実施、現地調査含まず)。その結果、最終的に是正要求事項(Corrective Action Request:CAR)は全て解消され、明確化要求事項(Clarification:CL)として、
・ホスト国(ロシア)のJI要求事項に関する事項
・ホスト国(ロシア)のSD(Sustainable Development)政策に関する事項
・ホスト国(ロシア)の環境影響評価に関する事項
といった、ロシア政府のJI実施体制の整備状況が整っていないことに起因する事項が残った。これらについては、今後のホスト国の動向やJI実施体制の整備状況に十分注意し、変化があれば都度対応していくことが肝要である。