廃棄物最終処分場の準好気性埋立システムへの転換によるメタンガス排出削減調査

公益財団法人 地球環境センター

CDM/JI事業調査結果データベース

調査名廃棄物最終処分場の準好気性埋立システムへの転換によるメタンガス排出削減調査
調査年度1999(平成11)年度
調査団体(財)九州環境管理協会
調査対象国・地域中国(北京・広州などの大都市)
調査段階プロセス2:プロジェクトの実現可能性の調査
調査概要中国では、有機質を大量に含む家庭ごみ等が嫌気状態で埋立処分され、埋立地からメタンガスが大量に発生している。本調査では、準好気性埋立構造のシステムに転換することによるメタンガス発生量の削減効果を検証した。
調査協力機関中日友好環境保護中心(中国の代表的な環境関係の研究機関)、広州市環境衛生局、福岡市環境局、福岡大学工学部、国連人間居住センター(ハビタット)
調


プロセス1※1(調査対象外)
※2




プロジェクト概要 中国の沿岸部・中部の人口100万人以上の都市を対象地域として、今後建設が見込まれる嫌気性の埋立地(5ha、もしくは20ha)に、準好気性埋立方式を導入するプロジェクト。具体的な作業は次の3つに分けられる。

○中国候補地選定調査
 準好気性埋立地の実証試験を実施するために、20箇所の都市を訪問し、10箇所の都市を選定する。

○準好気性埋立実証試験
 候補地選定調査で選ばれた都市において5haの準好気性埋立地を建設し、実証試験を実施する。

○大型準好気性埋立地建設
 実証試験場地域の中から2箇所選定し、20haの大型準好気性埋立地の建設を行う。
 
 本プロジェクトでは、以上の3つの作業を表1のスケジュールで2012年まで行い、最終的に準好気性埋立実証試験を60箇所、大型準好気性埋立地を22箇所建設する。


対象GHGガスメタン
対象技術分野廃棄物管理
CDM/JICDM
実施期間13年間(2000年~2012年)
ベースライン中国の都市において、埋立地が表1と同じペース・規模で新設されると考え、その際、準好気性埋立方式は全く採用されないと考えて設定する。
GHG削減量廃棄物最終処分場から発生するガスの成分は、埋立方式によって異なり、嫌気性埋立の場合はメタン60%、二酸化炭素40%、準好気性埋立の場合はメタン20%、二酸化炭素80%となる。ガス化率(ガス化量/埋立廃棄物中の有機物)も埋立方式によって異なり、嫌気性と準好気性ではそれぞれ次のようにガス化率が決まる。

(嫌気性)  y=0.76x-0.02(0~3年)
  y=30.61logx-6.91 (4~10年)
(準好気性) y=29.00logx + 0.77
 
x:経過時間(月)(x>1)、y:ガス化率(%)

(1)5ha準好気性埋立地からのメタンの発生抑制量
 5haの埋立地からのメタンは927,590トン削減されると試算された。しかし、削減されたメタンの炭素は二酸化炭素として発生し、2,373,030トンの二酸化炭素排出増になるので、正味のGHG削減量は(メタンの温室効果係数:21)
 927,590×21-2,373,030=17,106,350(t-CO2)

(2)20ha準好気性埋立地からメタンの発生抑制量
 プロジェクトによって20haの埋立地からのメタンは1,368,086トン削減されると試算された。しかし、削減されたメタンの炭素は二酸化炭素として発生し、3,953,504トンの二酸化炭素排出増になるので、正味のGHG削減量は(メタンの温室効果係数:21)
1,368,086×21-3,953,504=24,776,308(t-CO2)
 
(1)(2)より2000年から2012年までの期間に、本プロジェクトによって削減されるGHGは 17,106,350+24,776,308=41,882,658(t-CO2)
費用費用には準好気性埋立地を建設する費用と運転管理する費用がある。

(1)建設費
 これまでの実績から2haの準好気性の埋立地を建設するのに54,676US$が必要である。本プロジェクト実施期間中に建設される埋立地の面積は
5ha×60箇所+20ha×22箇所=740ha
 よって建設費は
740ha÷2ha×54,676US$=20,230,120US$
と試算される。

(2)運転管理費
 埋立地の運転管理費は埋立期間によって決まる。これまでの実績から一日あたりの運転管理費は約356US$である。本プロジェクトの埋立期間は、5haの埋立容量を31万トン、20haの埋立容量を150万トン、一日あたりの廃棄物搬入量を1000トンとすると
(31万トン×60箇所+150万トン×22箇所)÷1,000(トン/日)=51,600日
 よって運転管理費はこれに356US$をかけて18,369,600US$

(1)(2)より総費用は
20,230,120+18,369,600=38,599,720(US$)
1$=107円とすると4,130,800,000円。
費用/GHG削減量1トンあたりの二酸化炭素を削減する費用は
4,130,800,000÷41,882,658=99円/t-CO2
モニタリング 埋立地のガス発生量、ガス温度、ガス濃度等のガスモニタリングは現地専属担当者が毎月行う。
 
 廃棄物の搬入量、水分、組成、有機性炭素量のモニタリングは年二回の頻度で行い、日本から派遣された専門家とともに中日友好環境保護中心および広州市環境衛生局が実施する。
GHG削減以外の影響・浸出水の排水が促進されるため、廃棄物層内に浸出水が滞水しなくなり、空気が侵入しやすくなることから、好気的な領域が拡大し、好気性微生物の働きが活発となり、廃棄物の分解が促進される。その結果、浸出水の水質が改善される。

・浸出水の排水が迅速であるため、浸出水の滞水による水圧が小さくなり、浸出水の地下浸透を極めて小さくなり、遮水工の補完機能を有するようになる。

・メタンや硫化水素などのガスの発生量も低下し、爆発の危険性や有毒ガス発生の危険性がなくなる。

・埋立地の安定化が促進されるため、埋立跡地の早期活用が可能となる。

・本プロジェクトを通じて、ごみの発生抑制、分別、収集・運搬、リサイクル、処理処分に至る総合的な面から廃棄物問題を解決する能力を備えた人材が育成される。
実現可能性 本プロジェクトの持続性は、対象地域の理解とプロジェクトの実施組織の推進力に左右される。福岡大学は知識・技術の提供者としてその能力と経験は高く評価される。福岡市は基本計画、環境基本計画、地球温暖化対策地域推進計画を策定し、環境に関わる国際交流・協力の推進・援助を行動指針に掲げて実践している。これに国際的な活動を実践しているハビタットや国際協力事業団が協力することによって、プロジェクトを継続的に推進することは可能である。
 
 中国では廃棄物問題の対応策として、ごみの堆肥化、焼却処分、メタン回収発電などを検討しているが、これらの対策は廃棄物の処理能力の限界やコスト高などが理由で、すぐに廃棄物対策の主流にはなりえない。これらの対策を研究・検討している間にも、メタンガスによる爆発、悪臭の発生、浸出水の水質悪化といった問題は確実に進行している。プロジェクトで廃棄物処理処分に関する研修を受け、このような状況を理解したならば、現在の嫌気性埋立構造を準好気性埋立構造に転換するのには何の抵抗もないはずである。
他地域への普及効果 準好気性埋立構造には次のような利点があり、廃棄物処理問題で悩む他の途上国で実施可能であると考えられる。

・現地のニーズに対応できる性能を有することができる。
・費用対効果が顕著である。
・現地での資材調達が容易である。
・現地技術者によるメンテナンスが容易である。
・現地技術者による創意工夫の可能性を内包している。
・現地技術者への設計・施工・保守技術の伝達と現地技術者による他者への技術の継承ができるものである。
プロセス3※3(調査対象外)
報告書報告書(PDFファイル 25.7MB)
調査評価・本プロジェクトは好気性埋立地を嫌気性埋立地に代わって、建設することにより温室効果ガスを抑制しようとするもので、環境低負荷型システムとして簡易な現状プロセスの改変で対応でき、大きな効果が期待できる。マニュアル作りを含めて発展し、汎用化の高度化につながることが期待される。

・嫌気性埋立構造から準好気性埋立構造に転換する技術も確立しているようである。これも費用対効果が顕著であることから、プロジェクトの実行可能性が高いと思われる。
備考本調査では、二酸化炭素として排出される分を削減量から差し引いているが、バイオマス起源の二酸化炭素は排出と見なされないので、差し引く必要はない。

 

※1. プロセス1:
具体的なF/S案件を発掘するため、対象国や技術分野を特定せずに、CDM/JIとして広い可能性を考慮した基礎的な調査
※2. プロセス2:
具体的な調査対象国・調査地域、対象技術分野を前提とした実現可能性調査
※3. プロセス3:
実際に炭素クレジット獲得に向け、プロジェクト設計書の作成、バリデーション、炭素クレジットの投資探しなど、F/S終了後に当たるプロセスを行う調査