中国・雲南省におけるコークス炉ガス等を利用した原料石炭調湿による省エネCDM 実現可能性調査

公益財団法人 地球環境センター

CDM/JI事業調査結果データベース

調査名中国・雲南省におけるコークス炉ガス等を利用した原料石炭調湿による省エネCDM 実現可能性調査
調査年度2010(平成22)年度
調査団体イー・アンド・イー ソリューションズ株式会社
調査協力機関雲南太陽谷省エネ産業発展有限公司、日本テピア株式会社
調査対象国・地域中国(雲南省)
対象技術分野その他(廃ガス利用)
対象削減ガス二酸化炭素(CO2)
CDM/JICDM
プロジェクト実施期間/クレジット獲得期間プロジェクト期間:2011~2026年/クレジット期間:10年
報告書
プロジェクトの概要本プロジェクトは、中国雲南省に所在する化学工業コークス工場(雲南省曲靖市 雲南大為制焦有限公司)を調査対象として、石炭調湿(CMC)設備を導入し、コークス炉排ガスの廃エネルギーを利用し、コークス原料石炭の水分を減少させることにより、コークス製造に要するエネルギーを削減するものである。
 プロジェクト対象化学工場においては、原料炭の水分量が通常14%~17%(FSRによる)、コークス炉装入炭の水分量が約12%(統計)であり、ともに日本の製鉄所における事例より高めとなっている。このためコークス製造時においては、水分を蒸散させるために余分なエネルギーを消費している。原料炭中水分によるエネルギー損失を避ける目的で、コークス工場へのCMC技術導入が検討された。同技術はコークス炉排ガスの廃エネルギーを利用し、コークス原料石炭の水分を減少させるものである。
 本プロジェクトにおいては、CDMプロジェクト化によるCER収益によってCMCの投資採算性を向上させることで、省エネ技術の導入を達成させようというものであり、プロジェクトの成功により、省内の他コークス工場への導入インセンティブに関し、波及的効果も期待されている。
適用方法論AMS-II.D “Energy efficiency and fuel switching measures for industrial facilities”(Version 12)
ベースラインの設定 本プロジェクトのベースラインは小規模方法論AMS-II.D “Energy efficiency and fuel switching measures for industrial facilities”(Version 12)に基づき設定された。
 ベースラインシナリオは、原料石炭水分を減少させるためのエネルギー(廃エネルギー利用)を石炭により得るというものであり、廃エネルギー利用量に相当する石炭を燃焼した際のGHG排出量が、プロジェクトによる削減量に相当する。
追加性の証明 CM 技術は重要な省エネ技術として国家推奨省エネ技術リストに含まれている。また、本プロジェクトは雲南省における100個省エネモデルプロジェクトに認定されており、技術面における追加性が存在する。また、CER収入を考慮しない場合、税後IRRは11.07%と計算され、セクターベンチマーク(化学工業)は12%となっていることから、CDM投資バリアの存在が証明された。
GHG削減想定量8,316tCO2/年
モニタリング適用方法論に基づきモニタリングを行う。主なモニタリング項目は以下のとおり。
  • 石炭投入量:炉投入時計測
  • コークス生産量
  • CMC投入前石炭の水分量:連続測定
  • CMC投入後石炭の水分量:連続測定
  • CMCの電力消費量
環境影響等 本調査で入手した認可済みEIAでは、工場全体の現状を踏まえた評価を行っている。プロジェクト稼働後の影響については、石炭粉じん、大気浮遊物質、SO2、騒音についてモニタリングの必要性を指摘し、石炭輸送ベルトコンベヤーへの覆い、石炭乾燥機へのバッグフィルターの装備、緑化を求め、排水、生態に関しては環境影響なしとしている。
事業化に向けて 本プロジェクトについては、2010年8月に基本設計・詳細設計・施工図が作成されており、FSRの改訂についても、市工信委による許可を取得済みである。なお、設置工事は先行して実施しており、2010年9月より開始された。2011年7月に本格運転を開始する予定である。
「コベネフィット」効果
(ローカルな環境問題の改善の効果)
 CMCの導入によって石炭消費量が減少し、SOx及びCODの減少効果が期待できる。事前推計では、ベースラインと比して2,145tSO2/年の硫黄酸化物の削減と、6,940tのCOD削減効果が期待できる。
ホスト国における持続可能な開発への寄与 ホスト国においては各省エネルギー目標が定められており、省エネルギーは第11次5ヵ年計画においてもエネルギー削減目標が定められ、推進が求められている。本プロジェクトは省エネルギーを通じ持続可能な開発達成に貢献する。CDMプロジェクトの成功により、省内の他コークス工場への導入インセンティブに関し、波及的効果も期待されている。