調査名 | フィリピン・ミンダナオ島における廃棄バナナ利用発電CDM事業調査 | |
調査年度 | 2009(平成21)年度 | |
調査団体 | 株式会社EJビジネス・パートナーズ | |
調査協力機関 | Celebrate Life Agriventure Philippines Inc.、Foundation for Agrarian Reform Cooperatives in Mindanao, Inc. | |
調査対象国・地域 | フィリピン(ミンダナオ島) | |
対象技術分野 | バイオマス利用 | |
対象削減ガス | 二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4) | |
CDM/JI | CDM | |
プロジェクト実施期間/クレジット獲得期間 | 2012~2021年/2012~2021年 | |
報告書 | ||
プロジェクトの概要 | 本プロジェクトは、フィリピン・ミンダナオのダバオ・デル・ノルテ州において、Foundation for Agrarian Reform Cooperatives in Mindanao, Inc.(FARMCOOP:バナナ農場組合)に加盟するバナナ農場所有の加工工場から排出される、これまで野積み廃棄されていた廃棄バナナ茎(バナナの果実を収穫した後の茎)をメタン発酵原料として発電に利用するもので、発電設備容量は1MWである。 | |
適用方法論 | 本プロジェクトでは、現在、野積みされている廃棄バナナ茎を有効利用してメタン発酵させ、ガス発電を行い、公共グリッドに給電する計画である。ベースライン方法論としては、既存の承認方法論である「AMS-I.D:グリッド接続の再生可能発電」及び「AMS-III.E:管理燃焼、ガス化又は機械処理・熱処理によるバイオマスの腐敗からのメタン生成回避方法論」を適用する。 なお、本プロジェクトの排出削減量は年間6万tCO2を下回るため、小規模プロジェクトに分類される。 | |
ベースラインの設定 | 現状、バナナ加工工場から発生している廃棄バナナ茎は、全量が農場内で野積み廃棄されている。また、バナナ加工工場で使用する電力は、公共グリッドからの給電により賄われている。ベースラインシナリオは、投棄処分されている廃棄バナナ茎の腐敗によるメタンの発生、及び本プロジェクトから給電されることにより代替されるグリッド電力消費である。プロジェクトシナリオでは、この廃棄バナナ茎の腐敗を回避し、発電原料として利用することによって公共グリッドに給電し、化石燃料の使用を削減するものである。 フィリピンでは、廃棄バナナ茎の有効利用は実施例がない。大気汚染防止に関する法律(Philippine Clean Air Act)により、野外での直接焼却が禁止されているため、農場敷地内への野積みが廃棄バナナ茎の一般的な処分方法であることから、ベースラインの設定は妥当と考えられる。 | |
追加性の証明 | 小規模CDMの追加性証明方法として、1つ以上のバリア(障壁)が存在することを証明する。 廃棄バナナ茎を利用した発電事業(CDM事業)はフィリピンで最初のプロジェクトであり、技術バリア及び一般的慣行バリアが存在する。また、投資バリアについては、投資分析の結果、CERの売却益がない場合(IRR=8.1%)と、10USD/tCO2のCER売却益がある場合(IRR=11.4%)でIRRに大幅な改善がみられる。また、CER売却益がない場合は、投資ベンチマーク(フィリピン開発銀行の長期金利9.8%)を下回るため、CDMプロジェクトでない場合は、実現可能性が低いと判断される。 以上より、技術バリア、一般的慣行バリア、投資バリアが存在することが証明されるため、本プロジェクトの追加性は証明される。 | |
GHG削減想定量 | 9,044tCO2/年 | |
モニタリング | 本プロジェクトでは、AMS-I.D及びAMS-III.Eに従って、排出削減量の検証に必要となるパラメータをモニタリングする。モニタリングは、発電プラントの各箇所及び発電機等での廃棄バナナ茎消費量や発電量を直接測定することを基礎とし、それらの値を計装機器により測定する。 | |
環境影響等 | プロジェクト実施による環境影響は、ガスエンジンからの排気ガスによる大気汚染、プラント騒音、建設時粉じん等などが考えられるが、高水準の排気管理や適切な機器の維持管理を行うことで、これらの影響を最小化する。なお、ホスト国の環境影響評価に係る法令によると、本プロジェクト発電容量1MWは、環境影響評価手続きの対象外となる。 | |
事業化に向けて | 本プロジェクトの事業化に向けて、海外(特に欧州)で多くの実績があるメタン発酵技術を導入するため、技術的な実現性は高い。また、本プロジェクトの経済性はベンチマークを上回ることから、経済的な実現性も高いと判断される。今後、収集効率の拡大、初期・維持管理コストの削減、売電価格の交渉等で更に経済性を上げる必要がある。 | |
環境汚染対策効果 | 本プロジェクトは農業廃棄物である廃棄バナナを利用した発電プロジェクトであり、プロジェクト実施によって現在野積み廃棄されている状況の衛生改善、地下水の水質汚染防止、廃棄物量の削減、及び腐敗による悪臭防止等の公害対策に寄与できる。 | |
持続可能な開発への貢献 | 廃棄されているバナナ茎だけでなく、現在安価で売却されている輸出規格外バナナも本プロジェクトで利用することは、販売価格の安定化に繋がり、ホスト国側の持続可能な開発に貢献する。 昨年度当社(EJBP)の前身である日本技術開発株式会社が(財)地球環境センターの委託によりCDM/JI調査を実施したイサベラ州での籾殻発電プロジェクトでも同様の持続可能な開発への貢献が認められる。これまで値がつかなかった廃棄物を有効利用する事業が進められることで、地元農家の収入の安定化に寄与するため、環境天然資源省(DENR)からも、このような地方経済への貢献について大変評価されている。 |