中国・山東省・済南市における路線バスへのアイドリングストップ装置取付CDM事業調査

公益財団法人 地球環境センター

CDM/JI事業調査結果データベース

調査名中国・山東省・済南市における路線バスへのアイドリングストップ装置取付CDM事業調査
調査年度2009(平成21)年度
調査団体一般財団法人日本気象協会
調査協力機関済南市公共交通総公司、株式会社アルメック、クライメート・コンサルティング合同会社、株式会社エコモーション、GE Creation Tech, Inc.
調査対象国・地域中国(山東省済南市)
対象技術分野交通
対象削減ガス二酸化炭素(CO2)
CDM/JICDM
プロジェクト実施期間/クレジット獲得期間2012年~2021年/2012年~2021年
報告書
プロジェクトの概要本プロジェクトは、中国山東省済南市(人口約560万人)の公共交通機関の開発・運営・維持管理を所管する済南市公共交通総公司が運行する大型路線バスからのCO2排出を削減するプロジェクトである。日本で開発されたアイドリングストップ装置は、使用過程車へのアイドリングストップ技術として普及している。このアイドリングストップ装置は、手動でのエンジンオン/オフによる方法よりもアイドリングストップを容易に実行させる装置である。本プロジェクトでは、大型路線バス2,000台にアイドリングストップ装置を装着し、燃料節減と年間約4,000tCO2の排出削減を図る事業である。同時にNOxやPMのような大気汚染物質の排出削減も見込まれる。
適用方法論 2010年3月に承認申請予定の小規模CDM新方法論「後付けアイドリングストップ装置を利用した交通エネルギー効率化活動」を適用。
ベースラインの設定 ベースラインシナリオは、「アイドリングストップ装置を装着したバスは軽油の使用を継続し、ターミナル、交差点、停留所等での停車時にアイドリングを継続する」である。
 済南バスでは、アイドリングストップ装置を装着した新型のバスを導入する計画は無い。また、後付けのアイドリングストップ装置については、本プロジェクトにおいて日本の実績のある技術として日本側から初めて提案されたものである。さらに、中国では類似技術の導入例は無く、はじめての導入ケースとなる。また、中国政府や山東省、済南市においては自動車の運行中のアイドリングを規制する法令等は整備されていない。
 以上から、アイドリングストップはベースラインとはなり得ない。
追加性の証明技術的障壁:
 中国では、現在のところ後付けアイドリングストップ装置は導入されておらず、またその開発も行われていない。さらに、後付けアイドリングストップ装置の装着による車体影響を把握した技術・経験の蓄積もなく、導入に至っていない。中国におけるアイドリングストップ装置の本格的な導入は本事業が初めてのものとなり、済南公共交通集団も本プロジェクトによる日本側からの提案により初めて後付けアイドリングストップ装置のことを知った。済南公共交通集団は、後付けアイドリングストップ装置の装着方法やその装着時の運転方法について、現在のところ熟知していない。このため、日本側から装置の導入や運転方法について研修等を実施する予定である。このように、CDM事業としての日本からの技術支援のもとで、技術的なバリアをクリアできる。

一般慣行的障壁:
 中国では国産車はエンジンなど車体製造技術が日本ほど進んでおらず、日本で普及しているアイドリングストップ装置を中国車に適用できないと考えられているため、導入への抵抗が大きい状況である。このため、中国におけるアイドリングストップ装置の本格的な導入は、本事業が初めてのものとなる。
GHG削減想定量3,936tCO2/年
モニタリング
  • 体制:モニタリング体制は以下のとおりである。
  • 機器:アイドリングストップ装置に付属するSDカードライターを使用してモニタリングを実施する。
  • QA/QC:DOEは毎年済南公共交通総公司を訪問し、アイドリングストップ装置台帳、SDカードデータ、月次報告書の作成保存状況をチェックし、必要な場合、手順の修正勧告を本社車両管理部長宛に発する。
  • データ管理:本社車両管理部に専用のPCを設置し、アイドリングストップ台帳、レコーダー記録の電子ファイル、月次報告書を格納し、必要な閲覧システムを整備する。また、定期的にシステム及びデータのバックアップを実施する。
環境影響等 負の環境影響は発生しない、又はアイドリングストップ装置は信号待ちにおける燃料消費を節減できると考えられる。
 また、建設事業を伴わない事業であることから、環境影響評価の対象外である。
事業化に向けて アイドリングストップ装置導入のための技術的障壁のクリアを最優先とし、まず安定的に動作し一定の省エネ効果を証明できない限りは、装着車種・台数、実施路線といった具体の導入計画の検討に着手することができない状況が続いた。2010年3月の最終現地調査で済南市公共交通総公司は、引き続きの調査継続を希望する旨表明した。小規模方法論の承認申請についての了解がもらえたため、直ちに申請の予定である。
 今後、具体の事業の国連登録までは新方法論の申請後約16ヶ月を想定している。
環境汚染対策効果 車両の停止時におけるNOx、CO、PM、THCの排出を削減するため、本システムは事業実施区域における大気汚染の改善に貢献できる
持続可能な開発への貢献 使用過程のバス車両のアイドリングストップ実施による燃料消費量削減は、産業分野におけるエネルギー需要への供給水準を向上し、経済発展に寄与する。また、多数の車両へのアイドリングストップ装置取り付けは、中国における自動車修理業界の自動車電装技術水準を向上し、ナビやETCの普及を加速させ、持続可能な発展に寄与する。