調査名 | 中国・河北省におけるコークス炉ガスによる直接還元鉄製造CDM事業調査 | |
調査年度 | 2008(平成20)年度 | |
調査団体 | みずほ情報総研株式会社 | |
調査協力機関 | 九州電力株式会社、中冶東方工程技術有限公司 | |
調査対象国・地域 | 中国(河北省) | |
対象技術分野 | その他(廃ガス利用) | |
対象削減ガス | 二酸化炭素(CO2) | |
CDM/JI | CDM | |
プロジェクト実施期間/クレジット獲得期間 | 2010年~2030年/2010年~2019年 | |
報告書 | ||
プロジェクトの概要 | 中冶東方工程技術有限公司は、中国における省エネ・環境保護政策を背景に、未利用のコークス炉ガス(COG)を有効利用するための技術開発に取組んできた。具体的には、現在、中国で一般的な高炉-転炉一貫製鉄での還元材(コークス)を、COGに代替するというものである。COGを還元材とする直接還元鉄(DRI:Direct Reduction Iron)は、スポンジ鉄とも呼ばれ、電炉での粗鋼生産用の原料として利用される。本プロジェクトは、コークス生産量120万トン/年を有する河北省唐山市にある民営企業と共同して、年間生産量17万トンの直接還元鉄製造工場を設立して実施される。ここで製造されたスポンジ鉄は、電炉まで運搬され、粗鋼用原料として利用される。 本技術の活用により、還元材をコークスからCOGへ代替するだけではなく、高炉-電炉一貫製鉄からよりエネルギー効率の高い竪炉-電炉製鉄への転換が図られることになる。従来の高炉-電炉一貫製鉄では1,818kgCO2/t-粗鋼のCO2排出があるのに対し、電炉-竪炉製鉄では1,099kgCO2/t-粗鋼と約50%に抑制されるため、粗鋼1トンあたり719kgCO2の排出削減を生みだすことになる。上記直接還元鉄製造規模から約15万トンの粗鋼が製造可能であり、約11万tCO2/年の排出削減が期待される。本プロジェクトは、竪炉の新設を含んでいるため、2010年1月からのプロジェクト開始を想定している。 なお、本プロジェクトは、COGを有効活用し、より環境価値の高い竪炉-電炉製鉄による粗鋼生産を行うプロジェクトである。コークス資源の節約や粗鋼生産プロセスにおけるエネルギー・汚染物質等排出量の抑制にも資するものであり、中国における持続可能な発展にも寄与することが期待される。 | |
ベースラインの設定 | 本プロジェクトには、新規方法論を適用する。対象プロジェクトは、ホスト国対象地域で一般的な粗鋼生産方法である高炉-転炉一貫製鉄から、直接還元-電炉法への切り替えによるCO2排出削減事業である。 ベースライン排出量は、高炉-転炉一貫製鉄からのCO2排出量原単位(粗鋼1トンあたり)を算出し、プロジェクトケースでの粗鋼生産量を乗じることで決定する。上記原単位は、粗鋼生産を、①コークス炉、②焼結炉、③ペレット製造、④高炉、⑤転炉に分割し、各プロセスでの粗鋼1トンあたりCO2排出量から積算する。 | |
追加性の証明 | ステップ1:現在の法規制と整合的な代替シナリオの特定
| |
GHG削減想定量 | ベースライン排出量:280,938tCO2/年 プロジェクト排出量:169,824tCO2/年 GHG削減量:111,114tCO2/年 | |
モニタリング | ベースライン排出量の算出に必要な原単位は、すべてEx-anteにより数値が確定される。従って、ベースラインにおけるモニタリング項目、変数はない。 一方、プロジェクトケースにおけるモニタリング項目は、ペレットを直接還元する竪炉、竪炉からのスポンジ鉄で粗鋼を製造する電炉での排出原単位に関する変数と、粗鋼生産量である。これらのデータはプロジェクト実施者が計測することを想定する。 | |
環境影響等 | 事業の実施に際しては環境影響評価が必須であり、大気環境、水環境、騒音に関する対策が求められている。特に重視される大気環境に関しては、SO2、NO2、TSPについて出口濃度または一定範囲内の大気濃度の国家環境基準の遵守が必要となっており、その前提において環境影響は問題ない水準であると結論できる。 | |
事業化に向けて | 経済性評価で示したとおり、本プロジェクトはCDMとしない場合、投資家にとって十分魅力的とは言えないものの、排出削減量の大きさから、CDM化によるメリットが大きいと言える。しかし、CDM化および事業化には課題が指摘される所である。また、経済危機の影響も無視できない。
| |
コベネフィットの実現 | 本プロジェクトによる公害防止効果としては、ベースラインシナリオでのコークス製造に伴うCOG排出を抑制し、それによる環境インパクトの低減を図ることが挙げられる。環境外部コストの低減をコベネフィット指標として想定すれば、その効果は、上限で約34万円/年と試算される。絶対額で見ればやや軽微だが、これはあくまで日本における環境負荷のダメージ回避に関するWTP(Willingness to Pay)が反映されたものであり、中国における大気汚染を緩和できることの効果についてはさらに高く評価されるべきと考えられる。 |