ラオス・ユーカリ植林及びバイオマスエネルギーによるCDM事業化調査

公益財団法人 地球環境センター

CDM/JI事業調査結果データベース

調査名ラオス・ユーカリ植林及びバイオマスエネルギーによるCDM事業化調査
調査年度2005(平成17)年度
調査団体王子製紙(株)
調査協力機関Oji Lao Plantation Forest Co., Ltd.(LPFL社)、(株)三菱総合研究所、(株)中央青山PwCサステナビリティ研究所
調査対象国・地域ラオス
対象技術分野バイオマス利用と植林
対象削減ガス二酸化炭素
CDM/JICDM
プロジェクト実施期間2007~2036
報告書概要版概要版(266KB)
詳細版本文(6.2MB)本文(4.0MB)
プロジェクト概要本調査では、CDM事業化と製紙原料確保を目的として、既に事業を開始しているラオスにおける植林事業(LPFL社)に関して、AR-CDM再植林事業としてのプロジェクト設計書の作成を行う。なお、プロジェクト設計書は、現在当社で作成中の新方法論を適用して作成する。
加えて、本調査では植林事業に関連して発生する木質残材を利用してのバイオマス発電CDM事業化調査、PDDの作成を行う。
ベースラインの設定・追加性の証明【植林部門】
LPFL社の植林対象予定地は前述の通り、主に焼畑によって荒廃した土地であり、自然の力では二次林に回復する見込みは少なく、且つ、今後も生活の糧を持たない住民により定期的に焼畑が行われる可能性が高い。また、1999年以降にNZ資本により産業植林が実施されてきたものの、投資採算性が低く事業の継続が困難とされてきた。このため、現状維持がベースラインシナリオとなり、ベースラインにおける炭素蓄積量の変化をゼロとした。
EB21で提示された「追加性の証明・評価ツール」に基づいて、追加性の証明・評価を行なった。この結果、本プロジェクトは、ラオス政府による森林政策及びCDM政策、土地法、並びに森林法に準拠している一方、対象地域は、地域住民により繰り返し行われる違法な焼畑による養分欠乏により、自然の状態では健全な森林への回復は期待できない状況にあることを示した。また、代替シナリオとなる土地利用である「現状の非森林地域まま継続されるシナリオ」は、提示したバリアに阻まれることはないことを示した。

【バイオマス発電部門】
本発電プロジェクトは小規模CDMのタイプⅠ.Aの再生可能エネルギープロジェクト(ユーザー/家庭レベルの発電)に対応する。ベースラインは電力のアウトプットが計測されるために、簡易ベースラインは生産されるkWhにディーゼル発電の排出係数を乗じて求める。
本事業は系統連携されない地域の村落電化プロジェクトであり、バイオマス発電を実施しなければディーゼル発電による電化が考えられ、GHGの排出増加は明らかである。即ち、投資の障害に合致し、CDMガイドラインに示されている簡易ベースライン及びモニタリング方法論が利用できる。

GHG削減量【植林部門】
プロジェクト期間(30年)を通じての、現実純炭素吸収量は、1,279,729 tCO2と推定された。プロジェクト期間を通じたリーケージは、159,519 tCO2と推定された。
従って、プロジェクト活動により、30年間で1,120,210 tCO2が削減されると推定された。

【バイオマス発電部門】
プロジェクト実施期間14年間において756 tCO2の排出削減となる。

モニタリング【植林部門】
IPCC-GPGの「Approach3」に準拠することを目標として、プロジェクト期間を通じた各モニタリング項目のモニタリング手法、サンプリング手法および取得データの検討を行った。なお、適用する方法論としては、当社が別途開発を行なっている方法論を採用する。
ベースラインのモニタリング
・プロジェクトが存在しない場合、他に食糧確保の手段を持たない住民によって違法な焼畑が今後も続くと考えられ、ある地点においては、潅木バイオマス量が増加する期間があるものの、広い面積全体として見ると、潅木バイオマス量の合計が増加することは無い。よって、ベースラインのnet GHG removalはゼロとし、ベースラインを代表させる固定プロットを設定してのモニタリングは行なわない。その代替として、定期的に周辺部も含めてプロジェクトエリアの衛星画像を取得し、潅木地として分類される土地面積の推移をモニタリングする。
プロジェクトのモニタリング
・モニタリング対象の炭素プールは、地上部・地下部バイオマスとし、排出源としては、植林地整備に伴うバイオマスの減少と重機使用、苗木輸送のための車使用、伐採木集材作業のためのトラクター使用による化石燃料の消費、および窒素肥料の使用を想定する。
・効率的に十分な精度を確保するために、通常のプロット計測によるモニタリングに加え、衛星データを用いたバイオマス量推定方法および船積みされる際の木材重量実測値を用いる方法を使ってモニタリングを行なう。
リーケージのモニタリング
・バウンダリー外における事業関係車両・重機、チップ加工設備等による化石燃料・電力の消費量、および窒素肥料の使用量をモニタリングする。

【バイオマス発電部門】
簡易ベースラインが電力の生産に基礎をおいている場合、全てのシステムまたはそのサンプルから生成される電力の計測によりモニタリングを行う。
具体的には、発電所における発電量、消費先における電力消費量の計測を行う。

環境影響等【植林部門】
既に事業が開始されており、過去において環境および社会影響に関する調査分析を行っているが、改めて環境コンサルタントを使用しての環境影響および社会影響に関する調査を行い、㈱中央青山PwCサステナビリティ研究所に調査報告書の再評価を依頼した。

【バイオマス発電部門】
バイオマス発電部門においては、小規模CDMであること、および事業の構成からして環境影響評価の詳細な分析は必要ないと考える。

事業化に向けて【植林部門】
AR-CDMに対して発行されるクレジット(tCER、lCER)には、将来的な補填義務が付随しており、その他の京都議定書上のクレジット(CER、AAU、ERU)に比べて、価値が低いと考えられており、費用対効果はあまり期待できない状況にあるが、ホスト国の持続可能な発展に寄与しているというCSR的な観点から、前向きに取り組んで行きたいと考える。

【バイオマス発電部門】
ベースとなる発電事業に関して、採算的に設備のコストダウン対策検討が必要である。従って、機械メーカーとの共同研究開発を検討する。