調査名 | リトアニアにおける自動車燃料用バイオエタノールの製造事業調査 | |
調査年度 | 2004(平成16)年度 | |
調査団体 | 三井造船(株) | |
調査協力機関 | Kauno NOVA | |
調査対象国・地域 | リトアニア(カウナス郡) | |
対象技術分野 | バイオマス利用 | |
対象削減ガス | 二酸化炭素 | |
CDM/JI | JI | |
実施期間 | 2007年~2021年 | |
報告書 | 概要版 | 概要版 (150KB) |
詳細版 | 本文(1.4MB)本文(123KB) | |
概要 | 本プロジェクトでは、小麦を主原料として農産廃棄物も有効利用し、比較的低エネルギーで製造されるバイオマスエタノールをガソリン混合用燃料として生産し、国内市場及びEU市場に販売する。具体的には、エタノール製造・販売のための会社を設立し、既存の高効率エタノール発酵技術と膜分離技術を中心とする無水化技術を組み合わせたプロセスの採用によりエネルギー消費を低減したバイオマスエタノール製造プラントをカウナス市に建設し、原料小麦等はプラント周辺からの長期安定供給を確保する。 1) 原料: 原則としてプラントの周辺地域で生産される小麦を主原料とする。 2) 原料供給量: 1,320トン/日 (長期買付契約を結ぶことにより確保する。) 3) 製品:燃料用無水エタノール(99.8 Wt%) 4) 生産規模: 年産 160,000 kℓ 5) プラント稼動率: 年間335日の運転とする。 6) 副生物: 発酵残渣は動物用飼料として、グルテンは食材または動物用飼料添加物として販売する。 | |
ベースラインの設定・追加性の証明 | (1)ベースラインの設定 ベースラインシナリオの推定には Modalities and Procedures for CDM のparagraph 48における(b)のアプローチを適用した。 ある仮定の基に、考えられる複数のシナリオを挙げ、最も可能性の高いと考えられるシナリオとして次を選定した。すなわち、「リトアニアがEU指令に基づいてエタノール混合ガソリンの市場導入を実施することに対応してリトアニア国内でガソリン混合燃料用エタノールの需要は増加するが、経済合理性の観点から燃料用エタノール製造工場の新設は起こらず、既存のエタノール製造設備に脱水装置を増設することにより飲料用エタノールの製造から燃料用エタノールに転換する程度にとどまる。これらは元々生産規模が小さいため、全体としての燃料用エタノール生産量はほとんど増加しない。この結果、生産量は需要量を大きく下回る。また他のEU諸国についても同様の状況である。」 (2)追加性の証明 プロジェクトシナリオでは燃料用エタノール製造設備が新設される。前提条件により、リトアニアがエタノール混合ガソリンを市場導入した場合に必要となる無水エタノールはこのプラントが全て供給することになる。 このシナリオではベースラインシナリオに比べて設備投資費用が格段に大きく、そのためプロジェクトIRRはより低くなるので、プロジェクト活動は経済的に魅力的な選択肢とは言えない。従ってBAUシナリオではない。 仮定により、このプロジェクトの実施により製造される無水バイオエタノールはすべて自動車用燃料として使用され、ベースラインシナリオにおけるGHG発生量とプロジェクトの実施に伴って発生するGHG量との差分が削減量となる。プロジェクトが実施される場合のほうがGHG発生量が少なくなるので、これによって追加性が証明される。 | |
GHG削減量 | ベースラインとプロジェクトそれぞれのシナリオにおけるGHG排出量を計算し、このプロジェクトの実施によって年間約13万トンの二酸化炭素排出削減が達成可能との結果を得た。この際、プロジェクト境界外の温室効果ガス排出量には特に有意な差はないと考えられるので、プロジェクトによるリーケージはゼロとした。 | |
モニタリング | モニタリングの主要計測項目は次の通りである。 ○バイオエタノール工場で受け入れる原料、副原料等の使用量の帳簿あるいはコンピュータによる記録、保管・管理 ○無水バイオエタノールの生産量の帳簿あるいはコンピュータによる記録、保管・管理 ○生産した無水バイオエタノールの販売量の記録、保管・管理(無水バイオエタノールは飲料にできないように変性して販売するので、自動車燃料用以外の用途には使用されない。) ○バイオエタノール工場での運転開始、運転停止時及び異常停止等の場合に使用された化石燃料の量の記録、保管・管理 | |
環境影響等 | 環境影響評価は法律で環境影響の程度が大きいと判断されたものについてのみ実施することとされているが、本プロジェクトの場合は環境影響評価の実施が義務づけられるものと考えられる。 | |
事業化に向けて | 炭素クレジット価格とエタノール販売価格を変化させた場合の事業開始後10年目のプロジェクトIRR(PIRR)は次図の通りである。 プロジェクト実現には事業採算性が最大の課題である。 エタノール価格及び政府による生産者への優遇措置が事業可能性の上で重要な要素であり、これらの条件がある程度事業者に有利に設定されることが必要である。また、原料である小麦等の必要量を確保するため生産者と一体化した事業化が必要である。 上記の条件が満たされたとしてもなお、現在の設定条件ではERU収入予想に比べて初期投資額が大きすぎる。 |