インドネシア共和国東ジャワ州における地域住民と協同で行うCDM植林と小規模CDM植林事業との比較検討調査

公益財団法人 地球環境センター

CDM/JI事業調査結果データベース

調査名インドネシア共和国東ジャワ州における地域住民と協同で行うCDM植林と小規模CDM植林事業との比較検討調査
調査年度2004(平成16)年度
調査団体住友林業(株)
調査協力機関Kutai Timber Indonesia、Bogor Agricultural University
調査対象国・地域インドネシア
対象技術分野植林
対象削減ガス二酸化炭素
CDM/JICDM
実施期間2005年~2025年
報告書概要版概要版 (296KB)
詳細版本文(2.5MB) 本文 (2.5MB)
概要事業のタイプ:再植林・新規植林活動
事業の目的:CO2吸収量の増大、木材資源の確保と天然林伐採圧力軽減、灌漑設備による土地生産性の向上と土壌劣化防止、地域社会の生活向上への貢献
対象地・面積、バウンダリー:
 インドネシア共和国東ジャワ州プロボリンゴ県内4郡1500ha
プロジェクト期間:20年間
事業形態:住友林業、KTI社、土地所有者(大学学長を中心とする地域住民)との共同事業
役割分担:
 住友林業:事業費出資、技術移転、CDM管理・手続き
 KTI社:事業実施者、モニタリング
 土地所有者:共同事業者
ベースラインの設定・追加性の証明昨年度ベースライン調査用として設定したPasuruan県Grati郡のプロット内にある境界木を計測した。各樹種の全木乾重推定式を求め、昨年度の直径と樹高から推定した乾物重量合計と今年度の乾物重量合計を比較した。この一年の成長量は乾物重量で617kg/ha/年、CO2換算で1.131ton/ha/年であった。しかしこの境界木は、地域住民の燃料材、牛やヤギの食糧でもあり頻繁に枝等採取されている。長期的には境界木のバイオマスはあまり大きな成長はしていないと思われる。以上のことから20年の事業性を検討するに当り、ベースラインはゼロとした。

この地でCDM植林事業を進める場合に、農民のインセンティブとして、深井戸による灌漑を導入する。本事業案の追加性は、乾季の灌漑用井戸の作設とそれによる灌漑である。この井戸は2期作以上の農作物栽培による収量と収入の増加に加え、植栽木の成長促進、多様な作物や樹種の植栽を可能にするものである。通常のビジネスとして植林を行うならば、このような渇水の厳しい土地での植林はせず、まず土壌肥沃で灌漑の不要な場所から開始する。東ジャワ州では肥沃な平地が広がっており、あえてこの地域での植林はしない。すなわち、CDMのシステムがあって始めて検討される植林事業である。
GHG削減量1500haモデルの現実純吸収量は10年目で153千t-CO2、次の10年間で60千t-CO2となった。ベースラインは土地利用が変化しないとして0、排出及びリーケージは6年目までは65.6千t-CO2、7年目以降は175.1千t-CO2、リスクは5%とした。その結果、純人為的吸収量はプロジェクト通算の吸収量は10年目で144千t-CO2、次の10年間で56千t-CO2となった。
一方、500haモデルの現実純吸収量は10年目で51千t-CO2、20年目では71千t-CO2となった。ベースライン、排出、リーケージ、リスクは1500haモデルの1/3として計算した結果、純人為的吸収量はプロジェクト通算の吸収量は10年目で48千t-CO2、20年目では66千t-CO2となった。
モニタリングカーボンプールの計測方法
(1) 地上部バイオマス・地下部バイオマスによるCO2吸収量
破壊検査により、対象とする樹木の胸高直径と樹高から地上部乾重量、地下部乾重量を推定する。プロジェクト参加者(地域住民・農民)は、自分の土地に植栽されたすべての樹木の直径と樹高を計測し、プロジェクト開発者に報告し、開発者は計測日、土地所有者、DBH、樹高、地上部乾重量(地上部バイオマス量)、地下部バイオマス量等のデータをコンピュータに入力し保存する。
計測結果が当初予想の成長量より大きい場合、または小さい場合それぞれについて適当な時期に成長予測を見直す。
(2) 土壌炭素
開発者がプロットを設定し、地表下5~10cm、10~15cm、15~20cmの土壌サンプルを採取しその中の有機炭素量を化学分析(Walkley and Black法)により計測する。土壌調査は5年ごとに行う。

プロジェクト実施に伴う排出の種類と計測方法
 以下の項目について計測を行う。
(1) 各世帯の車輌・交通機関利用による燃料消費
(2) 木材収穫時のトラック輸送に伴う燃料消費
(3) 灌漑用井戸の作動時の燃料
(4) 農作業に伴う物質、労働力の出入り
(5) プロジェクト参加者の燃料・電力利用による排出
環境影響等インドネシアの環境影響評価総合体系では、10,000ha以上の植林の場合に環境影響評価を義務付けており、本プロジェクトでは必要ない。しかし、プロジェクト対象地内に井戸を作設するので、作井による環境影響評価を実施した。
地下水脈への影響については、降雨による供給は2,000百万m3でプロジェクトによる水の利用は0.9百万m3なので地下水源の枯渇には影響しないと評価された。
事業化に向けて本事業性調査では土地代とCERの価格に焦点を当て検討した。土地代の考え方には分収方式と借地方式がある。分収方式は土地所有者と事業開発者の取り分を50:50とした。借地方式は50$/ha/年、100$/ha/年、150$/ha/年の3通りで検討した。CER価格は0~20$/ton-CO2とし、それぞれの事業のIRRを求めた。その結果以下の結果が得られた。

(1)投資基準をIRR20%とすると、通常規模植林(1500haモデル)では、土地を100US$/ha以下の条件で賃借し、CERが15あるいは20US$と高いという条件でのみ投資基準が満たされた。
(2) 小規模植林(500ha)モデルでは、相対的な事業コストを抑えることができ、通常規模に比べて事業性が高まったが、投資条件をクリアするためには高いCER(15~20US$)が必要である。
(3) CER価格は単年度黒字や累損解消までの期間を短縮するのに必要である。とくに土地を賃借しない場合と賃借料が高い場合にCERの価格がこれらの期間短縮に及ぼす影響は大きい。