調査名 | マレーシアパームオイル工場のメタン排出削減対策技術と固形廃棄物利用に関する調査 | ||
調査年度 | 2002(平成14)年度 | ||
調査団体 | (株)エックス都市研究所 | ||
調査対象国・地域 | マレーシア | ||
調査段階 | プロセス2:プロジェクトの実現可能性の調査 | ||
調査概要 | 世界最大のパームオイル産油国であるマレーシアの粗パームオイル(CPO)生成工場では、高濃度のパームオイル廃液(POME)から大量のメタンが排出されているため、平成13年度には、一般的な粗パームオイル精製工場で、密閉系タンクの設置によるメタンの回収やメタン発電による売電を行った場合の事業性を検討した。これにより、事業具体化のための課題が抽出されたため、本年度は、CDM事業として条件の良いモデル工場を選定し、メタン発電、現在あまり利用されていない空房(EFB)などの固形廃棄物の専焼発電も含め、実現可能性の高いCDM事業のシナリオを検討するものである。 | ||
調査協力機関 | 九州工業大学、マレーシアプトラ大学、FELDA社、住友重機械(株) | ||
調 査 結 果 | プロセス1 | (調査対象外) | |
プ ロ セ ス 2 | プロジェクト概要 | CDM選定工場の条件として (a)POMEの排出量が多く(=CPOの生産量が多く)、メタンの回収量が 期待できる工場 (b)消化タンクが既にあり、蓋掛けのみでメタン回収が出来るような高いコストパフォーマンスが期待できる工場 (c)電力会社のグリッドに近く(7km以内)、売電が期待できる工場 (d)周辺に電力などのエネルギー需要がある工場など(パームオイル精製工場を含む) が考えられ、この結果、FELDA社の72工場の中で、 Leper Hiller(所有するプランテーション面積:24,600ha、FFBの処理能力:54t/h、CPOの生産規模:3,000~4,000t/月(FELDA社の中で上位5位以内に入る大規模クラス)、POMEの処理方式:ラグーン(30,000m3×4面)、当該ミルから4km離れたTNB系統電源(半島マレーシアのグリッド) 及び Cini3(所有するプランテーション面積:21,458ha、FFBの処理能力:54t/h、CPOの生産規模:2,000~3,000t/月(FELDA社の中で中規模クラス)、POMEの処理方式:2/3は開放型消化タンク(1,500m3×4基)、1/3はラグーン(30,000m3×2面)、当該ミルから2km離れたCini地区を中心とした電力供給のためのTNBのディーゼル発電施設(Cini Power Plant, 定格3MW) をモデル工場として選定して、ケース1:パームオイル廃液(POME)からのメタン回収・発電 ケース2:EFB発電 ケース3:POMEからのメタン回収・発電+EFB発電(ケース1+ケース2)でCDM事業の立案を行った。 | |
対象GHGガス | メタン、二酸化炭素 | ||
対象技術分野 | バイオマス利用 | ||
CDM/JI | CDM | ||
実施期間 | 〇クレジット獲得期間(CDM事業):2004~2013年の10年間 〇発電事業は2004~2023年の20年間 | ||
ベースライン | プロジェクトバウンダリー Leper Hiller 1)Leper Hillerでは、周辺の状況から今後も一般的な排水基準(BOD100ppm) が適用されるとして、ラグーン方式が継続されることがBAUであるとした。 2)メタン発生量は以下の算定式により推定 メタン発生量(t)=メタンの密度(t-CH4/m3-CH4)×バイオガス中のメタン含有率(%)×POMEからのバイオガス発生率(m3/m3-POME)×CPO生産量に対するPOMEの発生率(m3-POME/t-CPO)×CPO生産量(t)【=CPO収率(t- CPO /t-FFB)×FFB処理量(t)】 で推定 3)POMEからのバイオガス発生率を24m3-CH4/m3-Biogasと想定 (政府の各種調査報告書や各種文献においては、20~28(m3-CH4/m3-Biogas)との記載が多く、その中で上限値(28 m3-CH4/m3-Biogas)をメタンの発生量推計に利用しているケースが多いが、ここでは平均値を採用) 4)CPO生産量に対するPOMEの発生率は、0.5m3-POME/t-FFB(=2.5m3-POME/t-CPO×0.2 t-CPO/t-FFB)とした。(政府の各種調査報告書や各種文献、一般的CPOの収率20%(0.2 t-CPO/t-FFB)、当該工場の過去のデータから推計) 5)工場のFFB受入量は、リプランテーションの時期、他社から受入など、今後の動向を考慮して、動的に設定し、ベースラインに反映。 6)今度調査の実測値に基づき、発生ガス中のメタン濃度は、ラグーン方式:58% と想定 7)GHG削減)プロジェクトは3つのケースを想定し、発電施設容量は回収メタン量、バイオマス(EFB)利用量から推計 (ケース1:メタン回収・発電 ケース2:EFB発電 ケース3:メタン回収・発電+EFB発電(ケース1+ケース2) 8)発電効率は電力会社ヒアリングなどにより、メタン発電:30%、EFB発電:20%とした。 9)電力会社のナショナルグリッドへの接続による燃料転換は、全電源平均対応とし、炭素排出係数を0.623kgーCO2/kWhとした。 10)FFB、)EFBなどの輸送に伴う排出など(リーケージ)は非常に小さく、算入しなかった。 Cini3 1)Cini3では、近い将来、排水基準が上乗せ(BOD20ppm) される可能性があるので、ラグーン方式の部分が開放系タンク方式に転換されることがBAUであるとした。 2)メタン発生量は以下の算定式により推定 メタン発生量(t)=メタンの密度(t-CH4/m3-CH4)×バイオガス中のメタン含有率(%)×POMEからのバイオガス発生率(m3/m3-POME)×CPO生産量に対するPOMEの発生率(m3-POME/t-CPO)×CPO生産量(t)【=CPO収率(t- CPO /t-FFB)×FFB処理量(t)】 で推定 3)POMEからのバイオガス発生率を24m3-CH4/m3-Biogasと想定 (政府の各種調査報告書や各種文献においては、20~28(m3-CH4/m3-Biogas)との記載が多く、その中で上限値(28 m3-CH4/m3-Biogas)をメタンの発生量推計に利用しているケースが多いが、ここでは平均値を採用) 4)CPO生産量に対するPOMEの発生率は、0.5m3-POME/t-FFB(=2.5m3-POME/t-CPO×0.2 t-CPO/t-FFB)とした。(政府の各種調査報告書や各種文献、一般的CPOの収率20%(0.2 t-CPO/t-FFB)、当該工場の過去のデータから推計) 5)工場のFFB受入量は、リプランテーションの時期、他社から受入など、今後の動向を考慮して、動的に設定し、ベースラインに反映。 6)今度調査の実測値に基づき、発生ガス中のメタン濃度は、ラグーン方式:58% 、開放系タンク方式:42%と想定 7)GHG削減)プロジェクトは3つのケースを想定し、発電施設容量は回収メタン量、バイオマス(EFB)利用量から推計 (ケース1:メタン回収・発電 ケース2:EFB発電 ケース3:メタン回収・発電+EFB発電(ケース1+ケース2) 8)発電効率は電力会社ヒアリングなどにより、メタン発電:30%、EFB発電:20%とした。 9)電力会社(TNB)のディーゼル発電施設への接続による燃料転換は、全電源平均対応とし、炭素排出係数を0.703kgーCO2/kWhとした。10)FFB、)EFBなどの輸送に伴う排出など(リーケージ)は非常に小さく、算入しなかった。 | ||
GHG削減量 | Leper Hiller GHG削減【ケース3】 量=ベースライン排出量(27万(t-CO2)/10年 ケース2:11万(t-CO2)/10年 ケース3:38万(t-CO2)/10年) Cini3 GHG削減量=ベースライン排出量(ケース1:14.7万(t-CO2)/10年 ケース2:8.5万(t-CO2)10年 ケース3:23.2万(t-CO2)10年) | ||
費用 | Leper Hiller 【ケース1】 (イニシャル) 〇タンク据付土木工事:230(1000US$) 〇メタン回収・貯蔵施設:1,024(1000US$) 〇メタン発電施設:490(1000US$) 〇送電設備:158(1000US$) (ランニング) 〇人件費:73(1000US$/年) 〇維持管理費:52(1000US$/年) 【ケース2】 (イニシャル) 〇EFB発電施設:6,495(1000US$) 〇送電設備:158(1000US$) (ランニング) 〇人件費:99(1000US$/年) 〇維持管理費:195(1000US$/年) 【ケース3】 (イニシャル) 〇タンク据付土木工事:230(1000US$) 〇メタン回収・貯蔵施設:1,024(1000US$) 〇メタン発電施設:490(1000US$) 〇混焼発電施設:7,219(1000US$) 〇送電設備:158(1000US$) (ランニング) 〇人件費:107(1000US$/年) 〇維持管理費:217(1000US$/年) (売電収入)(買取価格は半島マレーシアにおけるマレーシア政府推奨価格0.16RM/kWh=0.04US$/kWhを採用) 〔ケ-ス1〕:2,277(1000US$/20年)、〔ケ-ス2〕:8,117(1000US$/20年)、〔ケ-ス3〕:11,086(1000US$/20年) Cini3 【ケース1】 (イニシャル) 〇タンク据付土木工事:202(1000US$) 〇メタン回収・貯蔵施設:901(1000US$) 〇メタン発電施設:411(1000US$) 〇送電設備:79(1000US$) (ランニング) 〇人件費:73(1000US$/年) 〇維持管理費:45(1000US$/年) 【ケース2】 (イニシャル) 〇EFB発電施設:5,693(1000US$) 〇送電設備:79(1000US$) (ランニング) 〇人件費:99(1000US$/年) 〇維持管理費:171(1000US$/年) 【ケース3】 (イニシャル) 〇タンク据付土木工事:202(1000US$) 〇メタン回収・貯蔵施設:901(1000US$) 〇メタン発電施設:490(1000US$) 〇混焼発電施設:6,495(1000US$) 〇送電設備:79(1000US$) (ランニング) 〇人件費:107(1000US$/年) 〇維持管理費:195(1000US$/年) (売電収入)(買取価格は半島マレーシアにおけるマレーシア政府推奨価格0.16RM/kWh=0.04US$/kWhを採用) 〔ケ-ス1〕:2,145(1000US$/20年)、〔ケ-ス2〕:7,945(1000US$/20年)、〔ケ-ス3〕:11,024(1000US$/20年) | ||
費用/GHG削減量 | Leper Hiller CDM事業(2004~2013年の10年) 発電事業(2004~2023年の20年) 【長期借入金利7%(市中銀行)の場合で IRR(ROI)=25%となる炭素クレジット価格】 〔ケース1〕:8.7US$/t-CO2 〔ケース2〕:57.9US$/t-CO2 〔ケース3〕:19.1US$/t-CO2 【低金利借入2%(JBIC想定)の場合で IRR(ROI)=25%となる炭素クレジット価格】 〔ケース1〕:7.8US$/t-CO2 〔ケース2〕:49.9US$/t-CO2 〔ケース3〕:16.2US$/t-CO2 【再植林中でもFFBの受入が十分確保できるとした場合でIRR(ROI)=25%となる炭素クレジット価格】 〔ケース1〕:6.0US$/t-CO2 〔ケース2〕:38.3US$/t-CO2 〔ケース3〕:12.1US$/t-CO2 Cini3 CDM事業(2004~2013年の10年) 発電事業(2004~2023年の20年) 【長期借入金利7%(市中銀行)の場合でIRR(ROI)=25%となる炭素クレジット価格 】 〔ケース1〕:19.0US$/t-CO2 〔ケース2〕:89.6US$/t-CO2 〔ケース3〕:41.0US$/t-CO2 【低金利借入2%(JBIC想定)の場合でIRR(ROI)=25%となる炭素クレジット価格】 〔ケース1〕:17.6US$/t-CO2 〔ケース2〕:80.5US$/t-CO2 〔ケース3〕:36.6US$/t-CO2 【再植林中でもFFBの受入が十分確保できるとした場合でIRR(ROI)=25%となる炭素クレジット価格】 〔ケース1〕:7.3US$/t-CO2 〔ケース2〕:29.9US$/t-CO2 〔ケース3〕:13.0US$/t-CO2 | ||
モニタリング | Leper Hiller及びCini3 【モニタリング担当】 マレーシア気象サービス協会、または/及び環境局(Department of Environment)が担当するのが妥当 【モニタリング項目】・FFBの利用量 ・メタン排出量 ・メタン濃度 ・POME排出量 ・POME組成 ・処理水組成 【サンプリング方法及びデータの収集方法】オンサイト採集法、ビデオ解析法、現地でのサンプリングとガスメータやガスクロでの測定、工場の排水処理関連データのヒアリング 【実施頻度】月に1回の実施 【プロジェクト実施時のベースライン見直し(動的ベースライン)】 〇FFBの利用量の変化の把握、検証 〇POMEの量(排出管理票への記載(毎日)と報告) 〇発生ガス組成 | ||
GHG削減以外の影響 | 1) 経済的な側面 ・本事業によりCERによる収入のほか、建設投資、売電収入による経済効果が期待される。さらに、投資等による派生的な経済効果に加え、モデル事業ということでマレーシア国内外からの視察者等が多数、関係工場に視察に来ると考えられることから、視察者等による経済効果なども期待される。 ・本事業により生み出される雇用は3人/工場 程度と見込まれるが、今後、マレーシアのパームオイル全340工場に波及した場合には1000人を超える雇用を生み出すことが見込まれる。また、マレーシアにおいては今後環境問題、エネルギー問題に対して積極的に取組みを推進していくこととされており、本事業はその一環としてのモデル効果が期待される。 ・ラグーンを密閉型消化タンクへ変更することにより、余剰になった土地を有効活用できる。 2)社会・文化的な側面 ・地域住民に影響を与えるとの記述はない。 ・本事業は既存工場の敷地内に建設されるため、住民の移動等の問題はないと考えられる。 ・文化遺産に関する記述はない。 ・従来の燃料供給体制に影響が出るとの記述はない。 ・従来、大気中に放出していたメタンを利用することから廃棄物の有効利用となる。 3) 環境影響 ・工場から排出されるPOMEは、環境基準(BOD100ppm)を満たしているもの、BODが50ppm以上と高い状態で河川放流されており、さらにやや臭気の問題もある。本事業により、河川放流前にBOD負荷及び臭気については現状よりさらに下げることが期待できる。 4) 間接影響の防止 ・本事業を実施することによる負の影響は、メタンガスの貯留が必要となるため、適切な管理を実施しないとガス爆発が懸念されることである。したがって、従業員教育や安全性に十分な配慮した施設建設が必要である。 | ||
実現可能性 | |||
他地域への普及効果 | ・パームオイル廃液からのメタン回収に関しては、現地の既存技術で十分に適応可能であると考えられる。したがって適応範囲としてはFELDA社のパームオイルミル工場全体(72工場)のみならず、マレーシア国全体のパームオイルミル工場(約340工場)、さらに地理・気候条件等が同等でPOMEの処理をラグーンで行っているような東南アジア地域におけるパームオイルミル工場に拡がる可能性がある。 | ||
プロセス3 | (調査対象外) | ||
報告書 | 概要 | 概要版(PDFファイル 238KB) | |
本文 | 本文(PDFファイル 2.3MB) | ||
調査評価 | |||
備考 |
※1. プロセス1: | 具体的なF/S案件を発掘するため、対象国や技術分野を特定せずに、CDM/JIとして広い可能性を考慮した基礎的な調査 |
※2. プロセス2: | 具体的な調査対象国・調査地域、対象技術分野を前提とした実現可能性調査 |
※3. プロセス3: | 実際に炭素クレジット獲得に向け、プロジェクト設計書の作成、バリデーション、炭素クレジットの投資探しなど、F/S終了後に当たるプロセスを行う調査 |