調査名 | インドネシア共和国東カリマンタン州及び 東ジャワ州における植林事業調査 | ||
調査年度 | 2002(平成14)年度 | ||
調査団体 | 住友林業(株) | ||
調査対象国・地域 | インドネシア | ||
調査段階 | プロセス2:プロジェクトの実現可能性の調査 | ||
調査概要 | 東カリマンタン州 これまで行ってきたベースライン調査、間接的影響調査、リスク調査、アカウンティング手法を導入した事業性調査などから知見の総まとめを行い植林などCDM吸収源活動の細則の決定はCOP9まで持ち越しであるが、プロジェクト設計書(PDD)を過去3年間の調査事例を適用し、吸収源プロジェクトに対応するように利用方法を検討する。国際交渉で課題になっている吸収源プロジェクトに特有な課題である、非永続性、追加性、クレジット期間などの扱いを、昨年までの調査の実際を踏まえて、残された重要課題を検討する。 東ジャワ州 植林事業を対象に、東カリマンタンで得られた知見と比較しながら、事業の基本的な課題を検証し、CDM事業申請のためのプロジェクト設計書(PDD)を検討し、試作する。 |
||
調査協力機関 | 東カリマンタン州:Sumalindo社 東ジャワ州:Kutai Timber Indonesia社(KTI社) |
||
調 査 結 果 |
プロセス1 | (調査対象外) | |
プ ロ セ ス 2 |
プロジェクト概要 | 東カリマンタン州 合板、製材用材木生産を目的とした短・中・長伐期樹種の組み合わせた産業植林(早生樹のアカシアマンギウム(Acacia mangium)、グメリナ(Gmelina arborea)、中伐期のドゥアバンガ(Duabanga moluccana)、チーク(Tectona grandis)、マホガニー(Swietnia macrophyla)、スンカイ(Peronema canescence)、長伐期樹種としてメランティ(Dipterocarpaceae)を選定する。グメリナ、ドゥアバンガ主体。 Sumalindo社所有の産業植林地(二次林)の30万haの内、1ユニットの1万ha(Batu Putih, Muara Karangan, Sebulu, Sei Maoの林地)をモデル地区と想定し、初年度、4,000ha、第二年度、4,000ha、第三年度、2,000haを植栽 チーク:間伐 8年(39.0m3)、12年(73.4m3) 主伐 18~22年(19.4~20.0m3) マホガニー:間伐 7年(16.2m3)、12年(73.2m3) 主伐 15±2年(119.7~181.7m3) ドゥアバンガ:間伐 7年(64.9m3)、11年(122.1m3) 主伐 15±2年(273.1~334.5m3) スンカイ:間伐 11年(59.5m3) 主伐 18~20年(190.6~211.3m3) グメリナ:間伐 5年(35.7m3)、9年(48.3m3)、12年(73.4m3) 主伐 12±2年(163.9~168.2m3) メランティ:間伐 20年(43.2m3)、28年(91.7m3) 主伐 29、30年(170.3~189.0m3) 東ジャワ州 KTI社植林地、大学構内、P社農地、ゴルフ場など3,000ha(ファルカータ:良300Ha 中1,400Ha 脊1,000ha、アガチス:200Ha、マホガニー:100Ha) ・2001年に400Ha(ファルカータ、チーク、マホガニー)、2002年に400Ha(ファルカータ)400ha:2003年、2004年にそれぞれ1,100Ha(ファルカータ)を植樹予定。 伐期は、 ⇒ファルカータ:間伐は良のみで 4年 主伐 7年 ⇒マホガニー:間伐 25年 35年、主伐 50年 ⇒チーク:間伐なし、主伐 40年 |
|
対象GHGガス | 二酸化炭素 | ||
対象技術分野 | 植林 | ||
CDM/JI | CDM | ||
実施期間 | 東カリマンタン州:30年間を想定(1ローテーション7年で4回+2年) 東ジャワ州:プロジェクト期間=クレジット期間=21年間(1ローテーション7年の3ローテーション) |
||
ベースライン | 東カリマンタン州 1)4つのベースラインシナリオを設定 〔ケース1〕:裸地や蓄積量がゼロに近い草地はベースラインゼロと想定 〔ケース2〕:劣化した二次林(ブッシュ状態の林)で1.17CO2-t/yr(森林火災を考慮)と想定 ←人が頻繁に入る林の炭素蓄積量は最大9.6Cton/haで、プロジェクト期間で平準化 〔ケース3〕:蓄積量の比較的多い二次林はで2.93CO2-t/yr(森林火災を考慮)と想定 ←このタイプの森林の蓄積量の下限が24tC/hで、プロジェクト期間で平準化 〔ケース4〕:蓄積量の非常に多い二次林はで5.0CO2-t/yr(森林火災を考慮)と想定 東ジャワ州 1)樹木成長量は、早成樹のファルカータは毎木調査(土壌条件により良好・中庸・脊悪に部念類)、中伐期樹のチーク・マホガニーはインドネシア政府の収穫表を基に、Mitscherlich式にあてはめ推計 2)ベースラインは一部の残存量を軽視できない地域に東カリマンタンでの調査結果の劣化した2次林でのストック量(1.17CO2-t/Ha・年)を適用する(プロジェクト全体で(0.15CO2-t/年)とする |
||
GHG削減量 | 東カリマンタン州 〇主にSumalindo社保有の対象樹種の胸高直径(m)、樹高(m)の各データをもとに成長曲線式(Mitscherlich式)から成長量を予測。 立木本数(本/ha)から林齢毎の材積成長量(m3/ha・年)、文献から全乾比重換算値を算出←昨年度と同様 〇炭素固定量は材積成長量×全乾比重(樹種別)×炭素率(0.5)×枝・葉係数(1.6)により算出←昨年度と同様 〇森林火災は8年に1度、被災面積は植栽面積、二次林ともに2割の焼失と想定 ⇒ベースラインから毎年2.5%(20%/8年)を差し引く 〇虫害(チークの10%、グメリナ30%が加害)のリスクを加味し、加害された植栽材の材価はファイバー用材の価値としたになる樹木などの伐採、重機や運搬による排気量など8項目(1,3000CO2-t/30年)を考慮 〇リーケージは現地でのRapid Rural Appraisal方式による調査により、薪材・牛の餌 〇火災によるリスクは現地調査により、8年に一度、20%が焼失とする⇒一律2.5%差し引く 東ジャワ州 〇樹木成長量は、早成樹のファルカータは毎木調査(土壌条件により良好・中庸・脊悪に部念類)、中伐期樹のチーク・マホガニーはインドネシア政府の収穫表を基に、Mitscherlich式にあてはめ推計 〇炭素固定量=材積成長量(m3)×全乾比重×拡大係数1.6 により算定 〇各樹種の全乾比重は文献値による 〇ベースラインは一部の残存量を軽視できない地域に東カリマンタンでの調査結果の劣化した2次林でのストック量(1.17CO2-t/Ha・年)を適用する(プロジェクト全体で(0.15CO2-t/年)とする 〇リーケージは現地でのRapid Rural Appraisal方式による調査により、薪材・牛の餌になる樹木などの伐採、重機や運搬による排気量など8項目(7,122CO2-t/21年)を考慮 〇火災によるリスクは現地調査により可能性の高い48.5Haの30%(全植林地の0.5%相当)を考慮し、CO2吸収量から差し引く |
||
費用 | 東カリマンタン州 (主要な支出経費項目) 〇Planning:261.8万Rp./Ha 〇Tending::124.7万Rp./Ha 〇Fire Control & Forest Protection:25.1万Rp./Ha 〇Financial Obligation:4.3万Rp./Ha 〇Social Environmental Responsibility:5.7万Rp./Ha 〇Building Facilities & Infrastructure:83.2万Rp./Ha 〇General & Admiistration Exp:108.6万Rp./Ha (主要な収入費項目) パルプ材価格:$26/m3、チーク:$300/m3、マホガニー:$300/m3(虫害のリスクを加味し、加害された植栽材の材価はパルプ用材の価値とした) 東ジャワ州 (主要な支出経費項目) 【資本金】US$200,000 【直接経費】 ○地拵え、植林、種付け、施肥などの植林コスト:149.4万Rp./Ha・年 ○収穫:間伐、主伐、輸送など:2万Rp./m3・年 【人件費】 ○10名(年収平均相場:1.5万Rp.) その他、減価償却費(車両関係 5年 建築関係10年で固定資産計上し、定額法で減価償却)、産業植林勘定(造林勘定)、土地代金(US$20/Ha)を考慮 【収穫丸太】 ・ファルカータ(直径 30cm以上:22万Rp./m3 25~29cm:18万Rp./m3 20~24cm:15万Rp./m3 ・マホガニー:70万Rp./m3 ・アガチス:35万Rp./m3 |
||
費用/GHG削減量 | 東カリマンタン州 【炭素クレジット5US$/t-CO2とし伐採後の材価収入を考慮しなかった場合】 〇Actual Stock Changeの場合 ⇒ベースライン ケース2: 35US$/t-CO2 〇TCERの場合⇒ベースライン ケース2: 23US$/t-CO2 東ジャワ州 【炭素クレジット5US$/t-CO2とし伐採後の材価収入を考慮しなかった場合】 〇Actual Stock Changeの場合 ⇒ベースライン ケース2: 35.9US$/t-CO2 〇TCER導入の場合 ⇒ベースライン ケース2: 34.1US$/t-CO2 |
||
モニタリング | (ベースライン) ・調査項目:地上及び地下部バイオマス、土壌炭素、落葉落枝頻度は1回/年。 ・データの精度保証と収集方法等 ・大規模面積への対応:航空写真による胸高直径(dbh)30cm以上の残存木のカウント(dbhと樹冠の大きさの相関)及びdbh30cm以上残存木数からの対象地域の全炭素固定量の推計法 (リーケージ) ・焼畑耕作のための森林の伐開、薪用材の消費、建築材料その他生活資材としての木材消費、違法伐採について発生理由と発生形態 ・村落を類型化してシステムバウンダリー内のリーケッジをモニタリングによる定量化 (リスク) ・害虫被害についての調査項目(被害の有無、被害率、被害面積)、調査方法、頻度(1回/3年or5年) (森林火災) 調査項目(被害の有無、被害率、被害面積)、調査方法(森林簿により、被害面積を求める)、調査票、頻度 |
||
GHG削減以外の影響 | 東カリマンタン州 1)経済的な側面 ・地域経済の振興 対象地の地域経済の振興に寄与していることが重要である。地域経済の動向を示す指標として代表的なものは人口、世帯数、人口移動、就労人口、職業別人口の変化、所得等である。これらは、できる限り長期間にわたって観察することが望ましいがそういうわけにもいかない場合は、地方政府や自治体のデータで補足し、聞き取り調査でもできる限り長期的な視野で捉えるように聞き取りを行う。たとえば、村落の長老などに時間的経過をしながら話を聞くなどする。得られたデータを分析して、当該プロジェクトが、その地域の経済的振興に寄与しているかどうか考察し、実証する。もし、寄与していないとしたら問題点を考察し、対策を立てる必要がある。貢献している場合は、発展のシナリオが描けるようにする。ここで重要なことはベースの動きに対してリーケージがないかどうかである。地域に富が蓄積され、人口圧力が高まったり、富が偏在したり、職業の偏りが生じたりして偏頗な発展が予測される場合は将来は社会変動を誘発して、リーケージにつながる危険性がある。 ・負の土地利用変化 負の土地利用変化をもたらす可能性がないかどうかが重要である。調査の中では、土地利用の現状と土地利用の予定から変化を考察し、さらに前述の経済的変動の推察によって変化の方向性と度合いを考察する。この場合も、リーケージに結びつく土地利用の変化、すなわち負の変化がないかどうかを見極めることが重要である。負の土地利用変化がある場合は、その対策を検討する。なお、反対に正の土地利用変化もあることを考慮すべきである。 2)社会・文化的な側面 ・社会文化的側面を検討する際に重要なのは対象となる問題が存在するかどうかということである。存在するとしたら、解決の方法を探ることである。そして、共存の道を切り開くことである。この種類の問題は多分に根が深いので、共存の道が見出せない場合はプロジェクトの存在を危うくするのが常である。 3)環境影響 ・環境影響は間接影響の中でもとりわけ重要なものである。PDDでは「重要な環境影響の可能性が検出された場合はホスト国の手順に従って環境影響調査を実施することである」とある。ここでも、上記の調査方法に基づき分析を行い、総合的な判断を行うが、環境影響に関しては、それ以外に客観的な検査を初期段階で行うべきかも知れない。それは公的な環境委員会の査察を受けて、団体の指定する検査を実施するなどである。ここでは、このような事業計画段階で実施すべき環境に関する調査について説明し、重大な環境影響の可能性がある場合にの対処の仕方について述べたい。ここで注意すべきことは、環境影響が大きい場合の対応策と項目の優先順位を設定すること。実行が容易と思われるものを抽出し早期対策の処方箋を示すことである。 4)リーケージの防止 ・植林事業による経済的影響は、プロジェクトのリーケージにも深く関与することが想定される。顕在化していない場合が多い。そこで、潜在的なリーケッジを捉えるアプローチを提案している。 東ジャワ州 1)経済的な側面 ・主要な植林地Krucilで現地住民にヒアリング調査を実施し、間接影響を調査した。代表的な調査結果は以下のとおり。 ・植林活動が地域社会の発展に貢献することができるか(雇用の促進が進んでいる。12部落に対して苗生産、地拵え、植栽、下刈りという一連の作業に2001年で213名、3ヶ月で平均120人/日を雇用した。) ・地域社会は発展しているか(格差は生まれている。しかし不安定になっていない。収入が少ない人は多い人から職をもらっている。貧しい人が盗伐する事はあるが、牛の飼料を盗む程度。それ以外に、建築用材として遠くの森林の優良材(アガチス)を違法伐採するケースがある。) ・負の土地変化(カリマンタン島であったような、植林が始まったことで討伐や焼畑が横行したようなケースはここではない。) ・他産業に対する影響(農業:センゴンの葉を乳牛のえさに供与するので、農業にはプラスの効果がある。土地に対して保水効果があり、農業にプラスの効果がある。よい影響のみ。 林業:以前1980年ごろ同じくセンゴンの植林事業があったが、その時も悪影響はなかった。今回も同じような条件であり、悪影響は考えれらない。) ・プロジェクト実施により、コーヒー園の収入減がある。 2)社会・文化的な側面 ・現地住民の環境意識と生活への影響:変化。 ・移民への適当な対策/先住民や少数民族にたいする配慮:ラムトロの苗木供給。 ・文化遺産に対する影響:なし。 3)環境影響 ・ヒアリング調査では以下の意見があったが、重大な環境影響はないとしている。 植林は空気をきれいにして、水の確保をできるという認識で、歓迎されている。深層では不安感は持っているかもしれない。1999年に洪水があり、土砂崩れがあったので、これに対する反省により植林を希望する意見が強い。 ・植栽樹種は産業植林として付加価値の高いファルカタ、チーク、マホガニーを選定している。単一樹種の問題点は、殆どない。 ・自然災害の可能性として、土砂崩れ、森林火災がある。 4)リーケージの防止 ・インフラ整備、火災用水の常備 |
||
実現可能性 | |||
他地域への普及効果 | |||
プロセス3 | (調査対象外) | ||
報告書 | 概要 | 概要版(PDFファイル 162KB) | |
本文 | 本文(PDFファイル 1.95MB) | ||
調査評価 | * 4ヵ年の事業の成果として、他の参考として貴重な成果が上がった。関係者の努力を高く評価したい。 *調査から得られた情報がPDD作成を念頭に整理されており、報告書で指摘されているように、CDM吸収源プロジェクトの計画立案のマニュアルとして活用しうる内容となっている。とくに間接影響調査のための詳細な住民調査票やチェックリストは参考になると思う。 *この事業調査をモデルとして、適用可能なベースとして活用できるようにすることを期待したい。 |
||
備考 |
※1. プロセス1:
|
具体的なF/S案件を発掘するため、対象国や技術分野を特定せずに、CDM/JIとして広い可能性を考慮した基礎的な調査 |
※2. プロセス2:
|
具体的な調査対象国・調査地域、対象技術分野を前提とした実現可能性調査 |
※3. プロセス3:
|
実際に炭素クレジット獲得に向け、プロジェクト設計書の作成、バリデーション、炭素クレジットの投資探しなど、F/S終了後に当たるプロセスを行う調査 |