タンザニアにおける白アリとの共生によるアグロフォレストリーづくりのための調査

公益財団法人 地球環境センター

CDM/JI事業調査結果データベース

調査名タンザニアにおける白アリとの共生によるアグロフォレストリーづくりのための調査
調査年度1999(平成11)年度
調査団体地球緑化の会
調査対象国・地域タンザニア
調査段階プロセス2:プロジェクトの実現可能性の調査
調査概要人口増加や過剰放牧等によって荒廃したタンザニア・ドドマ市及び近隣農村を持続可能な農業社会にすることを目的として、地力増進に役立つ益虫としての白アリと共生したアグロフォレストリーづくり等植林の方策を探る。
調査協力機関首都開発公団(以下CDA:Capital Development Authority)
調


プロセス1※1(調査対象外)
※2




プロジェクト概要 人口増加や過剰放牧等によって荒廃したタンザニア国ドドマ市及びその近隣農村を持続可能な農業社会にすることを目的として、地力増進に役立つ益虫としての白アリと共生した植林プロジェクト。
 ドドマ州の33の村でそれぞれ、村民が毎年最低5000本の苗を作り、雨季に畑の周り及び畑の中に40㎡に一本の割合で、毎年660haが植林する。
(樹種はMijohoro , Marobaini , Mlusina , Acasiaの4種)
対象GHGガス二酸化炭素
対象技術分野植林
CDM/JICDM
実施期間10年間
 EGAJと首都開発公団は1999年度から2000年9月までの期間に国土緑化センターの支援を受けて村落林業を展開。この事業を受け継ぎ、拡大する形で2000年10月から2010年まで行う。
ベースラインこのプロジェクトがなかった場合、植林はまったく行われないとして、ベースライン吸収量は0であるとしている。
GHG削減量 植林した樹木の年次ごとの平面積平均は表1のようになる。


炭素含有量の係数は0.5、年ごとのバイオマスドライ蓄積量はこの地方に多く植栽されているAcasiaの15t-dm/ha -yr であるとすると、年次ごとのバイオマス炭素蓄積量は表2のようになる。


10年間の総炭素固定量は表3のように計算して
41,534.7t-C(二酸化炭素換算: 152,293.9(t-CO2))


 また10年間に使用する巡回指導車両などの燃料消費から発生する二酸化炭素は6954kgであるのでトータルでのGHG削減量は
152,293.9-6.954=152,287(t-CO2)である。

※シロアリは体内に住む原生動物によってメタンガスを排出し、シロアリの地球上における現存量からして、大気中のメタンガス濃度の増加はシロアリの現存量増加が主な原因であると主張する研究者もいる。調査の結果、シロアリは植林することによって現存量が減少することがわかった。よって、植林を積極的に行うことでCO2が固定されるばかりでなく、メタンガスの排出量も大幅に減少すると予想されるが、定量的な計算は今後の課題である。
費用 一村あたりの一年間の事業経費は219,517円。(ビニールポット他資材費、種子代、巡回燃料費、種子採集、指導手当て、修理費、育苗機材、日本人専門家手当て)
33村で10年間なので219,061×33×10=72,440,610(円)

 またCDA職員が、社会開発の手法をマスターし、村落林業を展開できるようになるためには、日本から専門家1名を植林育苗期間中(6ヶ月間)派遣して指導に当たらせる必要がある。その経費として42,536,300円。

 総経費は72,440,610+42,536,300=114,976,910(円)
費用/GHG削減量1tonあたりのCO2固定価格は
114,976,910÷152,287=755(円/t-CO2)
モニタリング毎年一回、EGAJとCDAが村々を巡回し、成長の確認調査を行う。
GHG削減以外の影響○環境面
 
・アグロフォーレストリーの森を作ることによって、森でないところとの温度差が生じる(今回のCDM調査でアグロフォーレストリー内の木の下と、裸地の温度差を測定したところ、土の表面では6度の差があった)。温度差が生じれば、空気の対流がおきて雨が降る確立が高くなる。
・植林をすることによって有機物が地上に補給される。
・土地流亡がとまり、土壌風食を防止することができる。

○経済面
・肥えた土ができるので換金作物としてのピーナッツなどの作物の増産に結びつく。

○社会面
・主食用のトウモロコシ、ソルガムの増産にもつながる。
実現可能性・温暖化問題に関心を持つ人は少なく、環境問題よりも貧困から抜け出すことのほうが重要であると考えている人が多い。このような実態から、温暖化問題より経済的開発が優先される。

・住民が自発的に植林を行うようにするためには、植林することが水の保全や食糧生産につながるという環境教育を行うことが、もっとも重要である。いかに啓蒙啓発していくかが問題である。

・2000年9月からの事業資金の目途がつけば実現可能性は高まる。年間事業予算が約11,497,691円であるから日本の民間支援団体と外務省NGO補助金の組み合わせやJICA等の事業として取り組んでいくこともできる。
他地域への普及効果植林を行うことによって、地力が増進され、雨が降ることによって水が保全でき、食料が増産でき、燃料も確保できるというモデルを確立することができれば、その情報を伝えるだけで他地域への普及も可能であると考えられる。
プロセス3※3(調査対象外) 
報告書
調査評価・本プロジェクトは、開発途上国全てに凡用化できないにしても、面源対策として重要な技術になるよう取りまとめを適正に行うことにより活用の幅が広がるものと期待される。
・デモンストレーション効果を最大化するための技術普及システムづくりが、このプロジェクトの鍵であり、この点に関する追加的な事業調査が求められる。
備考・白アリはあまりにも分解力が高いため害虫と捉えられているが、木が枯れる主な原因は白アリではない。白アリは枯れってしまった木を分解するのであって、食害された木は誤った植林方法を知らせるシグナルなのであると考えられる。

・シロアリとの共生による植林方法
1) 植林する場所に幅30cm四方、深さ15~20cm程度の穴を掘る。
2 )植林する苗を地面と同じ高さのところにするために穴の土の深さを調節する。
3 )掘った穴に1~2リットルほどの水を入れてそこの土を混ぜる。
4 )植穴に苗を地面と同じ高さに植えたら元の高さまで埋めなおす。
5 )苗を中心にして、降った雨が流れないよう直径1cmの円型を描くように、土盛を5~6cmの高さで行う。
6 )苗を中心に直径30~40cm四方の幅で落葉、枯草などでマルチする。
7 )マルチした土の上から苗土と回りの土が密着するよう1~2リットルの潅水を行う。

・シロアリが木を分解する原因として次のようなことがわかった。
1) 木を植えるとき、根が曲がったり、深植えされているとき
2 )植えるときの苗自体が弱っているとき
3 )畑に有機物を与えず、化学肥料だけを与えたとき
4 )外国の品種でそこの環境に合わない作物であるとき
5 )収穫が遅れ、作物が枯れ始めたとき

 

※1. プロセス1:
具体的なF/S案件を発掘するため、対象国や技術分野を特定せずに、CDM/JIとして広い可能性を考慮した基礎的な調査
※2. プロセス2:
具体的な調査対象国・調査地域、対象技術分野を前提とした実現可能性調査
※3. プロセス3:
実際に炭素クレジット獲得に向け、プロジェクト設計書の作成、バリデーション、炭素クレジットの投資探しなど、F/S終了後に当たるプロセスを行う調査