設備補助事業を通じたSDGsへの貢献事例(東銀リース株式会社)
採択年度 2023年
パートナー国 メキシコ
事業名: 自動車部品工場への0.5MW屋根置き太陽光発電システムの導入(JCMエコリース事業)
代表事業者: 東銀リース株式会社
共同事業者: KUROTA MEXICO, S.A. DE C.V. ; BOT FINANCE MEXICO, S.A. DE C.V., SOFOM, E.N.R.
(案件概要URL)https://gec.jp/jcm/jp/projects/23pro_mex_01
【案件概要】
メキシコで初めてのJCMエコリース事業
本事業は、東銀リース株式会社(以下、東銀リース)によって実施された、メキシコ中部の都市アグアスカリエンテスにあるKUROTA MEXICO, S.A. DE C.V.(以下KUROTA)の工場屋根に0.5MWの太陽光発電設備を、JCMエコリーススキームを活用して導入するプロジェクトです。工場内での消費電力の一部を再生可能エネルギーに置き換えることにより、系統(グリッド)からの電力消費量を削減し、温室効果ガス(GHG)排出量を削減します。代表事業者である東銀リース株式会社のグループ会社である、BOT FINANCE MEXICO, S.A.de C.V., SOFOM E.N.R.が共同事業者のKUROTA MEXICOとセールアンドリースバック契約を締結し、リースを行っています。
アグアスカリエンテス周辺には日本企業、特に自動車産業関連の工場が多く進出しており、KUROTAもその1つです。同社は自動車のアルミ製ブレーキ部品、エンジン部品の生産あるいは組み立てをしているが、本社は主に新製品の開発や付加価値の高い部品を製造、メキシコ工場では、北米向けのブレーキ用マスターシリンダーピストン等を製造しており、冷間鍛造から機械加工・研削加工・アルマイト処理まで一貫生産しています。納品先はメキシコ国内はじめアメリカ、ブラジル等です。KUROTA の工場があるアグアスカリエンテスのParque Industrial San Francisco IVという工業団地内には日本の自動車関連企業が多数工場を構えています。また、日産自動車もアグアスカリエンテスに工場を持ち、北米に輸出しています。
▲KUROTA MEXICO工場屋根設置パネル全景
「代表事業者である東銀リースの取組み」
【SDGs関連の取組内容について】
環境・労働・社会貢献活動およびリサイクル活動の取組みを下記の通り、実施しています。
〇環境
「気候変動対応・環境保全-カーボンニュートラルの実現へ-」を重要課題として掲げており、この方針のもと、再生可能エネルギー関連事業や省エネ・省燃費物件への取り組みを推進し、脱炭素社会の実現を目指しています。また、2023年度より、ウェブサイトにて、サステナブル関連ファイナンスの取組み推進に関する目標額(※国内の取組分)を公表しています。JCMエコリース事業も海外での分かりやすい取り組み事例となっており、大きなアピールとなっています。
〇労働
ダイバーシティ&インクルージョンを推進する社内制度を整備しています。
日本国内の社員に向けた取組みとして、MUFGのルールに則って、行動規範等のEラーニングと当社独自の外部講師による研修を定期的に行っています。(再生可能エネルギー関連の勉強会など)
〇社会貢献活動
再リース契約を通じて得た収益を環境保護団体(公益財団法人オイスカ)が実施する「子供の森」計画への寄付をおこなっています。この計画はアジア太平洋地域での植林活動や環境教育を支援し、未来の世代に自然を愛する心を育むことを目的としています。
https://www.botlease.co.jp/csr/society/contribution.html
〇リサイクル活動
「BLUE SEED PROJECT」に参加し、使い捨てコンタクトレンズの空ケースを回収しています。このプロジェクトは廃プラスチック問題への取り組みとして回収されたケースをリサイクルするもので、その収益が海洋ゴミ対策に寄付される仕組みです。
https://www.botlease.co.jp/cgi/upload/news_jp/149/241101.pdf
【SDGsの活動を通じて得られた事業者のベネフィットについて】
・メキシコでのJCMエコリース事業第1号として採択をいただき、2022年11月にメキシコで開催されたJCMセミナーに登壇させていただいたことで、メキシコおよび日本のみならず、海外進出をしている他のJCM締結国(インドネシア・フィリピン・タイ)においても、JCM設備補助事業に対する問い合わせが増えました。(セミナー出席者や日本の大手機械メーカーなどから)
・問い合わせが増えたことにより、現地に出向している社員やナショナルスタッフのSDGsへの取組みに対する関心を高めることにつながっています。
・毎年、海外のナショナルスタッフに対し、日本での研修の機会を設けていますが、2024年度はESG/SDGsに関連する研修を2時間行いました。参加者は非常に高い関心を示し、集中して聞いてくれていました。
・また、本事業では、これまで強い接点は持っていなかった企業にプロジェクトサポートをいただき、良い関係を築くことができました。メキシコのみならず日本国内およびASEAN等のお互いの海外拠点において、SDGs推進の分野で協働関係をすすめるパートナーとなっています。
【SDGs関連活動を実施する上での課題について】
リース会社の基本であるファイナンス(短期的な収益)とSDGs達成の両立が難しいです。顧客の中には、設備投資に伴う脱炭素に向けた取り組みに理解を示していただいていても、それが価格展開には結びついていかないというジレンマがあります。そのため、補助金制度をうまく活用できればと考えていますが、様々な制度があるため、理解を深めることもまた課題だと感じています。
設備補助事業に関しては、太陽光以外の技術でのJCM設備補助事業の活用は方法論が難解となり、ハードルが高いと感じていますが、太陽光以外の方法論についても、外部パートナーとの連携を模索しながら、検討できればと考えています。
「共同事業者であるKUROTA MEXICOの取組み」
▲KUROTA MEXICO工場屋根設置パネル全景
【SDGsに取り組むようになった動機、背景―「無駄をなくす」という企業活動の一環から生まれた―】
「製造業においては常に「ロスカット」を意識した事業活動を継続しており、「ロスを無くすこと=コストカット」という動きが地球環境を保全する活動と合致したことから、今回の設備導入に至った」と話してくださったのは、現地代表取締役社長の水貝さん。KUROTAのSDGs活動への取り組みは本社(株式会社黒田精機製作所)主導によるものとのことですが、本社で取り組んできた「無駄の排除」が地球環境保全にもつながり、企業イズムにもなっているとのことでした。本業を実施する中で、SDGsへの貢献をしている好事例です。
【SDGsに関連する本事業での取り組み内容–―クリーンエネルギーへの転換、従業員の意識改革―】
- 屋根置きの太陽光発電設備で発電した電力を工場内で自家消費することにより、化石燃料ベースのグリッドからの買電が減り、クリーンエネルギーへの転換が促進
- 発電した電力を無駄遣いしない意識を従業員に持たせることに寄与
なお、メキシコ工場ならではの取組として、水貝社長がチャレンジしている活動が「ゴミの分別」です。メキシコでは一般ごみの分別収集がされていないため、従業員のゴミの分別意識が低く、家庭ごみでは空き缶、ビンも可燃ごみと一緒に捨てられている状況です。またプラスチック製品のリサイクル業者も存在しますが、急速に増加しているプラスチックゴミへの対応が間に合っていないとのこと。そこで、KUROTAでは工場内で従業員にゴミの分別の意識を植え付ける活動を始めています。当初は意識が低かった従業員も、分別した空き缶やビンが買い取ってもらえることを知り、自分たちのやっていることが「価値のある事」という意識が芽生えてきています。工場で不良品を作れば、資源を無駄にすることになります。これを避けるのと同様に資源ごみを分別することで資源の有効活用が可能になります。こういった活動を通じて、従業員の意識改革を続けていきたいとのことでした。
【SDGsに取り組んだ結果、事業者及び享受した側にもたらされたベネフィットについてーロスカット意識から使用する水量の変化と従業員の向上心―】
KUROTAでは表面処理に大量の水を使用することから、製品洗浄に使用する水をいかに減らすかは大きな課題でした。工場のラインでは製品の加工をしていない時もシャワー洗浄が動作していることがわかり、早速製品検知のセンサを導入、15%の使用水量減を達成しました。大事な資源を有効に使う意識が従業員の中でさらに高まった事例です。
KUROTAでは従業員の新人教育はしていましたが、業務のコアな部分については、日本からSVを招聘し、教育をしていました。コロナ禍で移動ができなくなった時期は、日本とウェブで繋いでやったこともありましたが、日本人スタッフ主導で実施するとメキシコ人スタッフの成長に繋がりません。現在はプログラム作成など、従業員のスキルアップにつながることにチャレンジさせることにも力を入れています。興味を持つと勉強に繋がります。従業員の中から数名ずつ日本に派遣して、本社や研修機関でスキルアップする機会を与えることでさらに向上心が出てきます。
KUROTAのジェンダーバランスですが、全従業員230名のうち6割程度が女性、製品がアルミニウム製の自動車ブレーキ部品ということもあり、非常にきめ細やかな作業のため、女性が向いているとのことでした。マネージャーは7名いますが2名が女性とのことでした。
【JCM設備補助事業について】
日本では色々補助金制度を利用することがありましたが、いずれも自社で書類作成等行っていました。今回はリース案件だったので、書類は全て東銀リース側で準備してくれたので、補助金利用のハードルが低かったと思いますとのお話がありました。
以上