設備補助事業を通じたSDGsへの貢献事例(株式会社数理計画)
採択年度 H25
パートナー国 モンゴル
事業名: 高効率型熱供給ボイラの集約化に係る更新・新設プロジェクト
代表事業者: 株式会社数理計画
共同事業者: Anu-Service
(案件概要URL)https://gec.jp/jcm/jp/projects/13pro_mgl_01/
案件概要:
【公共施設の旧型低効率熱供給ボイラを更新し、GHG排出削減のみならず、地域の大気汚染抑制にも貢献する事業】
本事業は、株式会社数理計画(以下、数理計画)によって実施された、ウランバートル市内の学校に最新型高効率熱供給ボイラ(HOB)を導入するプロジェクトと、ウランバートル市近郊のBornuur soum(Bornuur郡)で病院等の施設で個別に使われている旧型の低効率熱供給ボイラ(HOB)の使用を止め最新型高効率熱供給ボイラ(HOB)を集約的に導入し暖房用温水を供給するプロジェクト、の合計2つのプロジェクトからなる事業です。Bornuur 郡では、複数のボイラをつなぐ配管・電設設備を整備し、集中制御システムにより高効率HOBの運転管理を行うとともに、排ガスの温度や含有酸素濃度を計測し、その計測結果に基づいてボイラ運転を最適化しました。設備導入に合わせて、ボイラ運転技術を移転するため、日本人技術者による技術指導も行いました。ボイラ効率の改善により、ボイラ燃料である石炭の消費量が削減され、CO2のみならず他の大気汚染物質の排出量も削減しています。
なお、本事業の効果・意義がBornuur 郡で認められた結果、本事業後、Bornuur 郡では集約的暖房設備のアップスケール事業や集約的上下水道の設備の導入が計画される状況に至っています。
<導入された高効率ボイラ>
<高効率ボイラが設置されたウランバートル市第118学校(右)とその脇のボイラ小屋(左)>
【SDGsに取り組むようになった動機、背景―「環境負荷を低減に貢献する」という企業ビジョンから生まれた事業―】
「本事業実施のための調査を開始した 2011 年当時、まだ SDGs という概念は無く、数理計画としてもSDGs そのものを意識せずに、環境コンサルタント企業である数理計画のビジョンに沿った環境負荷軽減を目指す事業として実施しました。」と、担当者の桑原さん。寒さの厳しいモンゴルにおいて、暖房設備は生活インフラとして欠かせません。国全体で大きな需要があるため、暖房設備の効率性向上・環境負荷低減・GHG 排出量削減等は同国では環境問題の中でも重要なテーマです。事業開始から数年経って2015 年の国連サミットを経て徐々に SDGs という言葉が一般的になり、本事業を SDGs に貢献できる事業として改めて評価できたことも数理計画として嬉しいことでした。
【SDGsに関連する本事業での取り組み内容-―教育、健康、産業活性化に貢献―】
① 最新型高効率ボイラ(HOB)の使用と合わせて煙突を高くしたことなどにより、ボイラから排出される石炭の煙やにおいが減り、子供たちが学校で快適に勉強できるようになりました。
② 病院へ、個別施設ごとの暖房設備に代えて地域集約的に導入した暖房用温水を供給することにより、暖房設備から排出される煙やにおいから距離をおいて診療できるようになり、病院を利用する方々の健康に優しい環境が実現しました。
③ 日本人技術者からデータを活用したボイラの最適運転技術やメンテナンス方法が現地の技術者に共有されたことにより、同技術を現地で普及させるための基盤が整備されました。
なお、ジェンダー平等に関して、モンゴルにおいては男性よりも女性の大学進学率が高いことなどを背景として、共同事業者Anu-Serviceでも多くの女性がオフィスワークで活躍しています。一方、高効率ボイラの運用の現場では石炭を運び、3交代制で24時間監視するような業務で体力が必要になるため、男性の雇用が多くなっています。
<高効率ボイラが導入されたBornuur 郡の病院>
【SDGsに取り組んだ結果、事業者及び享受した側にもたらされたベネフィットについてーJCM実施経験のある環境コンサルタント企業として―】
担当の桑原さんによると、数理計画として、SDGsにも貢献し得る本JCM設備補助事業を実施したベネフィットの一つは、環境コンサルタント企業として環境にも地域にも優しい優良事業の実績を示せるようになったことだとのことです。更に、本事業については、後続プロジェクトが実施されるなど、現地主導にて事業の効果が拡大していることから、確かに現地の人々の生活の質向上につながる事業を実施できたという企業としての自信にもつながっているようです。
なお、第118学校は、モンゴル政府の施策により、発電所からの地域暖房に切り替わることになり、本事業で設置した高効率ボイラは、ウランバートル市の約150km北西にあるウグターツァイダム郡Ugtaaltsaidam Soumに移設され、 役所、学校、寄宿舎、幼稚園、文化センター、アパート等の暖房供給に使用されることになりました。現在、2023年秋の運転開始を目指し移設工事を進めています。移設後のボイラは本事業のモンゴル側共同事業者であるAnu-Serviceが適切に管理し、稼働状況についてヒートメータを活用してモニタリングしながら 、効率的な運用・運転を行う予定です。