設備補助事業を通じたSDGsへの貢献事例(自然電力株式会社)

採択年度 2022年
パートナー国 ベトナム
事業名: クアンチ省ラオバオ社における40MW陸上風力発電プロジェクト   
代表事業者: 自然電力株式会社
共同事業者: 自然・インターナショナル株式会社、Hai Anh Trading and Technologies JSC、Hai Anh Quang Tri Wind Power JSC
(案件概要URL)https://gec.jp/jcm/jp/projects/22pro_vnm_06/

 

【案件概要】
JCM設備補助事業で初めての風力発電プロジェクト

本事業は、自然電力株式会社(以下、自然電力)が、ベトナムのパートナーであるHai Anh Trading and Technologies JSC(以下、Hai Anh T&T)と共に、ベトナム中部のクアンチ省ラオバオ社に、JCM設備補助事業を活用して40MW陸上風力発電システムを導入するプロジェクトです。
自然電力は同社の子会社を通じ、Hai Anh T&Tとともに、ベトナムにHai Anh Quang Tri Wind Power JSC(以下Hai Anh SPC)を設立し、この風力発電事業を運営・維持管理します。発電した電力はベトナム電力公社に売電し、系統(グリッド)が供給する電力に占める再生可能エネルギーの比率を高めることで、化石燃料発電への依存を減らし、同国の温室効果ガス(GHG)排出量削減に貢献します。
本事業は、JCM設備補助事業で初めての風力発電プロジェクトとなります。


▲Hai Anh Quang Tri Wind Power JSCが保有・運営中の陸上風力発電プロジェクト

 

「風力発電事業の主体者であるHai Anh SPCの取り組み」

SDGs関連の取組内容について】
Hai Anh SPCでは下記のような取り組みを実施しています。

〇クリーンエネルギーの供給(目標7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに)
まず直接的な貢献として、再生可能エネルギーを発電・供給することにより、手頃で信頼性が高く、持続可能かつ近代的なエネルギーにアクセスできるようにするという目標に貢献しています。

〇現地採用と労働環境(目標8:働きがいも経済成長も、他)
現地での採用を優先し、地域経済の発展を支援しています。従業員24名中、20名が現地採用されており、地域住民の技能向上と、安定した収入機会の創出に寄与しています。また、公平で安定した雇用を作ることは、経済成長のみならず、働きがいのある人間らしい仕事の推進にもつながります。更に、同国の職場におけるハラスメント防止に関する規制に準拠し、安全で包括的な労働環境を提供しており、柔軟な勤務体系も提供しています。

〇女性の活躍(目標5:ジェンダー平等を実現しよう、他)
女性の労働参画とリーダーシップを支援しています。現在、従業員24名中4名が女性で、その内2名は、経理マネージャー及び法務マネージャーとして重要な役割を担っています。また、採用や昇進、キャリア開発における男女機会平等の確保に尽力しており、同じ業務内容の場合には、性別による賃金格差はありません。

〇教育と研修(目標4:質の高い教育をみんなに、他)
現地専門家による講義、On the Job Training、他の既存風力発電所における実地体験などの教育と研修を提供しており、従業員のスキル向上に取り組んでいます。これらには、安全訓練、技術訓練、監視・制御システム(SCADA)の操作・点検・交換訓練なども含まれています。また、これからも継続して新技術や安全手順などのスキル習得に取り組んでいく予定です。

〇調達における現地企業の優先(目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう、他)
建設・輸送・メンテナンス・設備管理などに関連する調達について、現地企業の活用を優先しています。これは、地域の産業やサプライチェーンの強化につながります。

〇現地パートナーへの専門技術と知見の移転(目標17:パートナーシップで目標を達成しよう、他)
共同出資会社のHai Anh SPCを通じて、指導体制やベストプラクティスに係るワークショップを実施し、現地パートナーであるHai Anh T&Tに専門技術と知見を移転していく予定です。これらの取り組みにより、彼らの能力強化、技術スキルの向上、そして彼らの再生可能エネルギープロジェクトの効果的な管理・運営能力の向上に寄与します。

〇現地の学校、農業、コミュニティーへの支援(目標4:質の高い教育をみんなに、目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう、目標11:住み続けられるまちづくりを、他)
その他にも、現地の学校へのコンピューターの提供、農業用道路の建設、文化施設やコミュニティー施設への寄付を行いました。

▲ 現地の学校へのコンピューターの提供

 

【ビジネスと人権(サプライチェーン等の人権尊重を含む)関連の取り組み内容について】
Hai Anh SPCでは下記のような取り組みを実施しています。

〇サプライヤーへの継続的な働き掛け
サプライヤーには、定期的な監査、ワークショップ、継続的な対話などにより、業務改善を促しています。また労働者の苦情受付制度を設けています。

〇地域住民との定期的会合
地域住民との定期的な会合の計画を策定しており、懸念事項に取り組む予定です。

 

【本事業を通じての気付きと今後の展望について】 
Hai Anh SPCでは本事業を通じて下記のような気付きがあり、今後の取り組みに活かしていく考えです。

〇現地労働者と現地企業の意欲、適応力、成長力
現地労働者は意欲的で理解も早く、彼らのスキルに投資することで、ベトナムに持続可能な産業を築いていく考えです。現地企業も高い適応力と成長力を示しています。例えば、或る農業従事者は、訓練の成果により風力タービンの認定技術者の資格を獲得しています。また或る地元企業は、国際電気規格と国内電気規格の両方に適応する必要があるというベトナム固有の要件に対応しています。

〇事業の成功と社会環境への影響
事業の成功とは、単に発電事業を行うことだけではなく、社会・環境への影響への考慮も必要です。事業活動に、SDGsと人権活動を統合して取り組むことは、事業の成功と地域社会活動にとって不可欠と考えています。

〇変化する法令と政府機関との対話
本事業に取り組む過程においては、変化する法令に対応していく必要があったことは教訓でしたが、政府機関は対話にオープンであり、多くの機会を与えてもらいました。現状ではグリッドへの接続容量に制約があるので、このことは今後の主要な課題の1つと言えます。

 

以上