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【開催報告】新メカニズム実現可能性調査シンポジウム2012
「二国間オフセット・クレジット制度(BOCM)構築に向けて」

 環境省の委託を受けて、GECが実施している「平成23年度新メカニズム実現可能性調査」の結果報告、並びに新メカニズムの構築に向けての情報提供を行うため、「新メカニズム実現可能性調査シンポジウム2012『二国間オフセット・クレジット制度(BOCM)構築に向けて』」を、平成24年2月27日(月)に東京で開催しました。



 我が国は、日本の先進的な低炭素技術等の海外展開による排出削減が適正に評価される仕組みが重要であるため、そのための新たなメカニズムとして、中期目標達成に活用できる「二国間オフセット・クレジット制度(Bilateral Offset Credit Mechanism:BOCM)」の導入を提案しています。昨年末、南アフリカ・ダーバンで開催されたCOP17では、締約国が個別に又は共同で、各国の事情に応じた様々な手法の実施に向けた検討を行うこととなり、二国間オフセット・クレジット制度の実現に向けた様々な取組を進めていくことが求められています。
 本年度は「新メカニズム実現可能性調査」として、BOCM案件の実現可能性調査(Feasibility Study:FS)を29件実施してきました。本シンポジウムでは、BOCMを含む新メカニズムの国際交渉の最新情報と、BOCM FSの重要性に鑑み、本年度実施の中で得られた教訓を基にした今後の方向性を示すとともに、本年度の新メカニズム実現可能性調査の結果報告を行いました。
 
 会場における質疑応答及び議論については、ページ下部をご覧ください。

開催日時
平成24年2月27日(月)13:00〜17:00
開催場所
イイノホール
 (東京都千代田区内幸町2-1-1 飯野ビル4F)
プログラム
(敬称略)

※各講演のリンクをクリックすると、プレゼンテーション資料(PDF版)がダウンローできます。
  • 開会あいさつ
      環境省 地球温暖化対策課 市場メカニズム室長 上田康治
平成23年度新メカニズム実現可能性調査報告
  • 平成23年度新メカニズム実現可能性調査を踏まえた今後の展開
      (コメンテーター)平石尹彦((財)地球環境戦略研究機関(IGES) 理事)
      ・会場からの各報告に対する質疑応答
主催
環境省、(公財)地球環境センター(GEC)


■ 質疑応答/ディスカッションの内容

第1部:新メカニズム/二国間オフセット・クレジット制度(BOCM)に関する情報提供
  • Q1:実稼働事業等における温室効果ガス(GHG)排出削減効果を定量的に計測する実現可能性調査(FS)に関して、削減に関する技術導入も含めて費用を計上できるのか、あるいは提案者側で準備するべきなのか?
    A1:アップグレードFSでは、残念ながら、設備導入に対する補助は認められない。したがって、原則としてすでに稼動している事業が対象であり、加えて出資者が決まっていて次年度中に稼働開始する案件も対象となると想定される。
  • Q2:アップグレードFSで現地検証機関による検証(V)まで行うとのことであるが、国によっては現地の検証機関がかなり少ない場合がある。そのような国において、FS件数が多くなる場合は、環境省等で検証先を調整するのか、あるいは提案者が探すのか?
    A2:環境省では地域別に検証機関のリストアップを行っているので、必要に応じて紹介することはできる。また、検証機関と紹介したが、CDMのDOEでなければならないとは考えていない。ISOの認証機関であれば、モニタリング結果とそれに基づいて計算されるGHG削減量の検証はできると考えている。検証機関がない国であれば、現地の検証機関以外を活用してもよいと考えている。
  • Q3:BOCMのスキームとして、日本の気候変動対策技術が導入されるのが望ましいとのことだが、再生可能エネルギーの分野では日本の技術の優位性がなくなってきている。このような場合は、どう考えるべきか?
    A3:日本技術の導入が難しい場合であっても、日本企業の投資や日本の貢献を最優先に考えていきたい。
  • Q4:今後のBOCM制度設計の検討によると思うが、BOCMのクレジットの取り扱いはどのようにすることを考えているか?
    A4:BOCMの制度については、最終的にどのような形になるか、現時点では明言できない。GHG排出削減量をクレジット化するためには、第三者の権利保護等の難しい問題を解決する必要がある。開発途上国に対するBOCM参加のインセンティブを早期に確保するため、オフセットを先行して進めることも考えている。
  • Q5:GHG排出量の算出に際して、単位活動量当たりの排出係数をできる限りデフォルト値にしようと考えているのか?活動量を正確に把握するためには実際にモニタリングする必要があるが、どのように考えているのか?
    A5:活動量はモニタリングを実施し、排出係数はなるべくデフォルト値に設定することが基本になる。活動量に関わる部分でも、モニタリングが難しい部分をデフォルト値にするという発想もあるのではないか、と考えている。
  • Q6:モニタリングの方法論を作る上で、重要性(materiality)の観点から、どの程度のずれまでを許容する考えなのか?
    A6:技術的なことなので、答えはまだ決まっていない、と回答するしかないが、現行CDMの考え方を参考にできる部分はそのままにすることも考えられる。また、不確実性が大きくCDMでは実現しないプロジェクトであれば、許容する幅を大きくして、しかし排出削減効果が課題に評価されることが無いように、保守的にデータを設定する対応となる。この問題はまさに、来年度のアップグレードFSの中で、具体的に検証して決めていきたい。
  • Q7:クレジット、あるいは認証量は、二国間のうちどちらが振り出すことになるのか?
    A7:クレジットをどう取り扱うかは議論している最中である。一つの可能性として言うと、二国間のいずれかの国内制度に振り出していくということが想定できる。
  • Q8:アップグレードFSについて、原則として既に稼働している案件を対象とするということだが、CDMで問われる追加性は二国間メカニズムでは条件に入れずに進めてもいいということか?
    A8:BOCMについては、追加性というよりは適格性を要件として進めていくものと考えている。日本の技術が入っているということは、すなわちホスト国だけではできないという意味で、追加的な排出削減を達成する、と言えると考える。また、技術だけではなく資金面でも同じ論理で追加的であると結論付けられる。来年度のアップグレードFSについては、すでに動いている案件を対象にする方向で考えている。来年度は、あくまでもMRV手法の完成を目的とし、そのための具体的なものがBOCM方法論となると想定している。なお、2013年度からは、BOCMモデル事業を実際に稼働させていくことを予定してる。その意味では、来年度と再来年度では調査の目的が違ってくる。
  • Q9:BOCMに関して、オフセットとクレジット両面から可能性を追求していく際、開発途上国でのオフセットのメリットはどういったものになるのか?
    A9:開発途上国がどういうメリットを享受できるか、という点については現在議論しているが、まだ公表できるものはない。一例だが、オフセットという前提では、日本の政府または民間企業などが日本の技術を入れる資金を負担すると、開発途上国の財政的な負担が軽減され、それが開発途上国側のメリットになる。そこで生み出された排出削減量は、日本の貢献分として配分されるという仕組みができるのではないかと思っている。
  • Q10:オフセットであれ、クレジットであれ、何らかの価値がそこに存在するという原則は変わらないという理解でいいか?
    A10:開発途上国が、何らかの価値を正確に理解しているかどうかわからないが、通常のビジネス行為以上のメリットが途上国になければ、排出削減量を日本の貢献分として配分することに対する理解は得られないと思っている。通常のビジネス活動以上の価値、負担、貢献を応分に行っていこうとしている。
第2部:平成23年度新メカニズム実現可能性調査(FS)成果報告■株式会社山武
「タイ・炭素クレジット認証付ビルエネルギー管理システム(BEMS)制度の構築を通じた省エネ推進に関する新メカニズム実現可能性調査」
  • Q:ビル管理システムという、日本でも定量的に議論するのがかなり難しいテーマを新メカニズムで何とか実現しようとする取り組みであり、持続可能な開発への貢献は明らかであるが、このプロジェクトを実施するときに、どの程度の投資が必要で、その投資は得られるクレジットが見合うことになるのか?
    A:BOCMを通じて日本の技術・システムを普及させるのであれば、やはり何らかの形で日本からの投資が必要で、その支援や経済的なバックアップを期待しているとホスト国関係者から聞いている。本調査の中で、タイ市場の700件のビルに対して10年間でBEMSを普及させるシミュレーションを行ったところ、初期投資に必要な費用として総額520億円必要であるという試算になった。日本の経済産業省が主導で行われているBEMS補助金(初期投資に対して1/3補助する)によって、BEMS普及を成功に導いたという経緯がある。これを参考にして、日本政府がタイ政府に対して支援し、日本の製品・技術を普及させるというのが、今回我々が提案した仕組みである。
     したがって、10年間の総額として520億の1/3の費用が必要だと考えており、この中にはモニタリングシステムや制御システムだけではなく、ビル全体の全ての設備投資が含まれている。
    →コメント:520億円の1/3補助が必要となると、かなりの金額になり、マーケットの活動だけで導入するのは難しい。よって、国際貢献の枠組みとしてODAを活用することが必要ではないかと思われる。

■三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社
「中国・大連市における節水型衛生機器普及による水使用量削減に伴う省エネに関する新メカニズム実現可能性調査」
  • Q1:施設台数当たりの排出原単位を使っているが、利用人数をベースにして排出量を計算するべきではないか?
    A1:利用人数や回数をモニタリングするのは手間がかかるため、施設1台あたりの原単位を採用した。モニタリングの省力化を重視した。利用回数については、生理学的アプローチをとってデフォルト値を採用している。プログラムCDMの可能はあるが、サンプリングの要求水準が高いため今回のように提案した。
  • Q2:水利用に係る排出原単位が、1kgCO2/m3と書かれていたが、日本だといくらになるのか?
    A2:正確な数字は覚えていないが、大連市とあまりかわらない。大連市は中国の中でも環境先進都市と言われていて、処理能力が高い施設が整備されている。ただし、大連市は遠方の山から上水を送ってくるので、その分排出係数が高くなっている。

■株式会社市川環境エンジニアリング
「マレーシア・食品残渣メタン発酵処理をモデルとしたエネルギー創出型廃棄物管理活動に関する新メカニズム実現可能性調査」
  • 高速道路に着目している点は興味深い。日本でいうと道路沿いにある道の駅やパーキングエリアの飲食店から出される廃棄物から始めるという現実的なプロジェクトだと評価できる。廃棄物処理事業全般について言えるが、メタンのエネルギー活用という視点だけではなく、悪臭抑制や地下水の汚染防止等ほかの利点もいろいろある。そこを強調しなければ、CDMとの違いを打ち出せない。CDMの欠点は、CO2しかカウントせずにほかのメリットを考慮していない点にある。
  • 投資額が大きいため、エネルギー源としての活用メリットやクレジット収入だけでは事業の必要性は説明できない。
  • 回答:他の面でもメリットが非常に大きい事業である。定量的には、まだ整理できていたいが、小さいものも含めて様々な効果がある。
    →コメント:新メカニズムというのは、単なる温暖化対策だけで捉えると、採算面が合わなくなる危険がある。そういう意味で、他のメリットをもっと強調しなければ投資が進まないということになる。
  • Q:現地では、どのようにゴミを収集しようとしているのか?
    A:リサイクル制度が、ある程度整備されていることが土台になる。その土台ができた上で、リサイクル方法の一つとして廃棄物の回収を行っていく。加えて、現地に有力パートナーが存在することが最も重要である。パートナーのネットワークを使って廃棄物を集め、マレーシア政府が提供するインセンティブを生かす等、複合的に対策を組み合わせて事業を進めている。

■一般財団法人日本気象協会
「タイ・バンコク大量高速輸送機関(MRT)ネットワーク整備に関する新メカニズム実現可能性調査」
  • 発展途上国の経済開発が進むにつれて、深刻な交通渋滞や交通公害が例外なく発生している。したがって、交通改善は絶対に必要だが、交通改善の目的は温暖化対策のみではなく、他にも多くのメリットがある。例えば、発表資料の中にも「ホスト国の持続可能な開発への寄与(交通便益)」に言及しており、所要時間短縮便益はGHG削減量の便益(クレジット収入)に比べて明らかに大きい結果が示されている。言い換えれば、交通改善事業は、まさに交通渋滞対策や大気汚染のために行うもので、温暖化対策の優先度は低い。その意味では、温暖化対策が交通公害対策の一つの側面であることを踏まえ、定量化してメリットを提示するべきである。
  • 例えば、ODAの優先度を検討するときに、温暖化対策のメリットも説明できるということが重要である。ただし、温暖化対策の定量評価だけで便益評価を行うと便益が小さいという結論になってしまうので、交通公害対策が必要だという結論に導くことはなかなかできない。だから温暖化対策の評価をしなくても良いというのではなく、開発投資をするときに総合的にあらゆる面を考えて効率的に投資するべきである。このような評価はCDMでは難しいので、新メカニズムでサンプリングにかける費用と計上できる排出削減量とのトレードオフの関係を分析することは大変重要である。既に認められた交通改善プロジェクトのCDM方法論は、巨大なサンプリングを必要とする制度になっており役に立たない。小さい数のサンプリングだと、推計結果として削減量が減ってしまうということを認識するべきである。
  • これは、交通に限らず他の分野でも同じようなことがいえる。方法論を簡略化することで結果的に削減量が減ってしまうことがあるが、そこはバランスを考慮してMRVに係る経費を減らすことがいいのか、MRVに費用をかけ削減量が大きく推計される方が良いのかを考える必要がある。
  • 回答:CDMで要求されるアンケートの負荷が非常に大きいため、費用と便益のバランスを示した選択肢を提供することが最も大事だと考えている。この選択肢をタイ運輸省に説明したところ、彼らが一番関心を持った。

■三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
「インドネシア・中央カリマンタン州におけるREDD+に関する新メカニズム実現可能性調査」
  • 泥炭層は水位低下した部分が非常に多いが、水位を下げると乾燥して地面の中に入っている炭素がCO2になり大量に出ていく。ここで水位回復を行ったらどうなのかということがのガイドラインをIPCCで策定することとなっており、2013年までにレポートを出す予定である。
  • Q1:プロジェクト全体で3300万tCO2とあるが、プロジェクト対象地域はどのぐらいの大きさか?年平均で170万tCO2というのは非常に大きな値で、結構大きな削減量だと考えるが。
    A1:今回の泥炭地では28,000haを予定している。この地域で20年間かけてREDD+を実施するケースを試算した結果の値である。泥炭層で森林火災が起こると、泥炭に含まれる有機物が燃えて地面が沈下する。この沈下量を計測すれば、土壌からのCO2排出量を計算できると考えている。また、モニタリング調査の際には森林を階層化することで誤差が少なくなると考えている。さらに、不確実性に応じて保守的に排出量を計上することで、科学的に追いついていないところを対処することが必要になると考えている。
  • Q2:森林保全の問題は、どうしても貧困問題とセットになってくるところがあり、これを解決しないと持続的な森林保全につながっていかない。メラルーカがある程度売れれば、住民が森林を保全するという合意が得られそうかどうか?
    A2:メラルーカについては、生産者価格が一本当たり約1000ルピア、消費者価格が約4000ルピアで、4倍の開きがあった。中間マージンを抑えて生産者である地元住民に還元することができればインセンティブになると考えている。そのために、メラルーカにどのようにして付加価値を付けるのか検討していきたい。
  • Q3:森林保全と生産林を組み合わせることに対するインドネシア政府の反応について教えていただきたい。
    A3:生産林については、どのようなコンセッションを取得すれば住民組合で木材管理を始められるか調査する必要がある。うまくいっているNGOの事例もある。
全体を通じた質疑応答
  • Q:排出削減のプロジェクトそれぞれは社会的貢献になるが、プロジェクトが継続され、拡大することが重要である。投資回収や経済性との整合が成り立たないと温暖化対策効果も価値がない。したがって、プロジェクトの投資回収をもっと明確に出したほうが良いのではないか?その上で、日本で成功した事業の成果や実績をホスト国に適応させて持っていくという説明があるとわかりやすい。
    A:CDMは全くの自由主義・商業的経済性が広く言われたが、BOCMは現時点ではまだ不明な点がある。資金源が何なのか、どの程度必要なのかということが現時点では分からないので、デザインしにくいことになっていて、FS実施団体も同じことを考えていると思う。また、クレジットが売買できるようになるのかどうか分からない。ただし、FSの経験を国際交渉に反映させていかないと、日本のメカニズムは国際的に認知されないものになってしまう。FSを実のあるものにするためにも、BOCMの目標をはっきりさせる必要がある。
    また、日本の技術について、例えば鉄鋼の生産性などは中国の最新鋭の鉄鋼所と比べると大差がないので、あまり自信過剰になるのも良くない。しかし、細かいところで日本は非常に優れた技術を持っているので、そこは何とか活用して売り込んでいきたいというのが本心だと思う。






問い合わせ先:
(公財)地球環境センター(GEC) 「温暖化対策シンポジウム」係
      Eメール:
gwsympo@gec.jp  TEL: 06-6915-4122   FAX:06-6915-0181

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