インドネシア・東ヌサトゥンガラ州におけるジャトロファ複合利用による地域開発CDM 事業調査

公益財団法人 地球環境センター

CDM/JI事業調査結果データベース

調査名インドネシア・東ヌサトゥンガラ州におけるジャトロファ複合利用による地域開発CDM 事業調査
調査年度2009(平成21)年度
調査団体三菱UFJ証券株式会社
調査協力機関適正技術研究所(JATI)、特定非営利活動法人 Asian People's Exchange(APEX)、ディアン・デサ財団(YDD)
調査対象国・地域インドネシア(東ヌサトゥンガラ州シッカ県)
対象技術分野バイオマス利用
対象削減ガス二酸化炭素(CO2)
CDM/JICDM
プロジェクト実施期間/クレジット獲得期間2009~2018年/2010~2019年
報告書
プロジェクトの概要本プロジェクトは、インドネシア東ヌサトゥンガラ州シッカ県において、荒地でも生育し、種子から油脂を採取しうるジャトロファ(Jatropha curcas)を用いて、未利用の荒地の緑化、再生可能な軽油代替燃料の生産とその発電利用、それに伴い発生する廃棄物を利用したガス化発電、並びに廃熱を利用した海水の淡水化を、複合的多面的に行うものである。
適用方法論 AMS-I.Aの改訂を検討。
ベースラインの設定 AMS-I.A.に基づき、本プロジェクトのベースラインシナリオは、本プロジェクトがなかった場合、当該発電所で軽油による発電が継続されることである。ベースライン排出量は、ジャトロファ油によって代替される軽油の燃焼による排出量となる。
追加性の証明 本プロジェクトの追加性は、1)投資バリア、2)技術バリア、及び3)一般的な慣習に起因するバリアによって論証される。
1) 投資バリア:
 本プロジェクトはODAによりその初期投資のほとんどが賄われるが、事業運営、継続のための費用が必要となる。CER売却収入なしに、本プロジェクトを実施・継続するのは不可能であることを論証した。
2) 技術バリア:
 植栽、搾油・精製と利用に至るまでの一貫したシステムとメンテナンス方法など、APEXとYDDによる住民への継続的な技術指導なしには、本プロジェクトは起こり得ない。
3) 一般的な慣習に起因するバリア:
 事業対象地域では、土地が痩せており、農民は焼畑により農地を広げることで収量を増やそうとすることが多い。野焼きは禁止されているが、依然として状況は改善されていない。APEX とYDD による荒地の緑化とジャトロファの複合利用に関する支援と啓蒙活動がなければ、住民は昔からの習慣を変えることは困難で、住民は焼畑を続けるであろう。
GHG削減想定量10,088.24tCO2/10年
モニタリング モニタリング項目は、AMS-I.A及びバイオ燃料の生産に係わる項目はAMS-III.Tを参照にして下記のように、決定した。
モニタリング項目
パラメーター
単位
ジャトロファ油を利用した発電所における発電量
-
kWh/年
発電所におけるジャトロファ油消費量
FCk,y
ton/年
発電所における軽油消費量
-
ton/年
ジャトロファ油の準熱量
NCVk
GJ/ton
ジャトロファ種子の収穫量
-
ton/年
ジャトロファ種子の含油量
-
ジャトロファ油の生産量
-
ton/年
ジャトロファ生産設備で消費される軽油量
FCOFP,i,k,y
ton/年
ジャトロファ栽培地面積
-
ha
 また、上の表の項目に加えて、下記のような項目をモニタリング、検証する計画である。
  • 当該発電施設における軽油、及びジャトロファ油の特定燃料消費量を事前に特定。
  • ジャトロファ栽培のために、外部より肥料が投入されていないことの確認。
  • プロジェクト以前の活動の移転とバイオマスの競合利用が生じないことの確認。
  • APEX、及びYDDと発電所の間で締結された、APEX及びYDDのみがCERの権利を有することを明記した契約書。
  • ジャトロファ油が輸出されていないことの確認。
環境影響等 本プロジェクトは小規模なため、インドネシアの環境影響評価制度(AMDAL)に該当しない。AMDALは不要だが、手続きや内容がより簡易なUKL(Upaya Pengelolaan Lingkungan Hidup:環境管理)及びUPL(Upaya Pemantauan Lingkungan Hidup:環境モニタリング)の手続きを踏む必要がある。
事業化に向けて 本プロジェクトは、現在まで技術的な問題はなく進められている。現地調査で実施した専門家へのヒアリングからも、ジャトロファ油の植栽、搾油、精製、及びその利用について技術的な問題はないと予想される。一方、本プロジェクトの事業の継続のためには、安定したジャトロファ油の販売価格を設定することが重要となる。使用者である地域の発電所と本プロジェクトの双方にとって、長期的に便益のある価格設定を目指す。また、農民からの種子の買い取り価格についても、農民と十分と協議して決定している。本プロジェクトのCDM化のためには、方法論AMS-III.T中の植物油の生産に関する項目と整合するよう、AMS-I.Aの改定案を提出することが必要となる。
環境汚染対策効果
持続可能な開発への貢献(1)荒地の緑化:
 本プロジェクトのような未利用の荒地をジャトロファにより緑化することで、a) 土壌流出の防止、b) 土壌の水涵養力の向上、c) 野焼き・山火事の減少、d) 景観の改善などへの便益が期待される。
(2)水不足の緩和:
 廃熱を利用した海水の淡水化により水が住民に供給され、慢性的な水不足緩和される。
(3)住民の収入増大:
 本プロジェクトにより収穫されたジャトロファの種子の売却により、住民の収入が向上する