中国・車両工場での電力省エネプログラムCDM事業調査

公益財団法人 地球環境センター

CDM/JI事業調査結果データベース

調査名中国・車両工場での電力省エネプログラムCDM事業調査
調査年度2009(平成21)年度
調査団体株式会社三菱総合研究所
調査協力機関-
調査対象国・地域中国
対象技術分野その他(省エネ)
対象削減ガス二酸化炭素(CO2)
CDM/JICDM
プロジェクト実施期間/クレジット獲得期間2010年6月1日~2030年5月31日/2011年1月1日~2020年12月31日
報告書
プロジェクトの概要本プロジェクトは、2008(平成20)年度に実施した「中国・車両工場省電力CDM事業調査」のノウハウを基に、中国において5箇所の機関車の製造・修理工場に対してプログラム型CDMを実施するものである。現在、各対象工場では、ディーゼル発電ユニットの出荷前に実施する性能試験で発生させた電力を水抵抗により消失させている。本プロジェクトでは、日本の技術指導によりインバータを設置して電力を回収し、回収した電力を工場内で有効利用することにより、系統から購入している電力を一部代替する。系統電力の代替により、5箇所合計で、年間平均では14,215tCO2、2011年~2020年の10年間では142,147tCO2/年の温室効果ガスの排出削減が見込まれる。工場によっては、ディーゼル発電ユニットの試験中に発生する廃熱・排ガスも利用可能と考えられるので、これについてのCDM化もあわせて検討する。プログラム型CDMの下で個別のCDMプログラム活動(CPAs)を実施するのは各工場であるが、ESCO事業者がプログラム活動(PoA)の調整管理組織(Coordinating/ Managing Entity)となりプロジェクトを工場と共同で実施する。2010年6~12月頃、各工場に設備を導入する予定である。
適用方法論ACM0012の改訂
ベースラインの設定 各機関車工場及び工場が電力を購入しているグリッドがプロジェクトのバウンダリとなる。
 本プロジェクトがない場合のベースラインシナリオは、現在のシステムの継続利用(廃電力は水抵抗により消失)となる可能性が高い。また、ベースラインではグリッド以外の電力利用は考えらない。車両工場における廃電力の回収・利用は中国では類似案件がなく、昨年度の提案を含め、本プログラム活動が初めての試みである。各工場の親会社は中国の国有企業であり、国有資産監督管理委員会から省エネ目標値(2010年までのGDPエネルギー消費原単位を2005年比で20%削減)を課されているが、具体的な機器のベンチマークは定められていない。つまりプロジェクトの実施は自主的なものである。各工場は省エネの知識・経験が乏しく、また、廃電力を回収するシステムのIRRが低いために導入には消極的である。
追加性の証明 本プロジェクトの追加性は追加性証明ツールによって証明する。基本的には投資分析により追加性を証明する。今回の調査対象は5工場であるが、ここでは代表的な工場について収益性を算出した。投資はシステム設置費用、収入は回収電力販売収入(各工場→ESCO事業者)、その他に毎年メンテナンス費が発生する。本工場のIRR(10年間)は次のとおり算出された。
    • ・クレジットなし: 8.0%

    ・クレジットあり: 11.2%
 今後は本工場を含めた対象5工場の事業収益性の詳細を調査し、いずれの工場においてもCDMとしての追加性が確保できることを本プロジェクトにおいて証明する。
GHG削減想定量14,215tCO2/年
モニタリング ACM0012によれば、廃エネルギー量の直接計測が必要である。計測するためのセンサーの導入を予定している。
環境影響等 本プロジェクトは、工場内で省エネシステムを設置するプロジェクトであり、中国の環境影響評価法の第3カテゴリーに類似する。第3カテゴリーに該当する場合には、政府の承認は必要ないが、環境影響登録表による届出が必要となる。本プロジェクトによる負の環境影響は存在しないか、回避可能と考えられる。
事業化に向けて 日本及び中国の会社が合弁で北京に新会社を設立済みである。省エネ事業推進のための会社であり、工場との利害関係は一致している。また、プログラム型CDMの下で個別のCDMプログラム活動(CDM program activities:CPAs)を実施する対象工場とはCDM実施に向けての合意がなされている。
環境汚染対策効果 CO2とともに大気質改善分野であるSO2、NOxに関して、ベースライン及びプロジェクト排出量を試算し、プロジェクト実施による年間排出削減量を計算した。ベースライン排出量は工場における廃電力測定データと系統電力の燃料別排出原単位から求めた。廃電力を有効利用するためプロジェクト排出量はゼロとなる。以上より、10年間でSO2:487t、NOx:175tが削減されることが分かった。
持続可能な開発への貢献 プロジェクトによりエネルギーの有効活用が可能となるので、中国におけるエネルギーセキュリティの向上に資する。また、ネットワークの石炭火力発電を代替することにより、石炭消費量が減少するのでGHGのひとつであるCO2排出削減のほか、大気汚染ガスであるSO2、NOxの排出を石炭減少量に比例して削減することができる。また、廃棄物となる石炭灰の発生も同割合抑制可能である。
 今後の我が国の国際社会に対する貢献のひとつとして、CO2を含めた大気汚染物質MRVシステムを作ることを、中国あるいは他の途上国に持ちかけるのはどうか。具体的には、相手国全体のGHG・大気汚染物質インベントリシステム(セクター別・地方別)の概念設計から詳細設計を行う。政府機関やGHG排出主体である企業・その他組織の役割、それら相互間の連携体制(政府機関相互間も含む)、GHG・大気汚染物質のモニタリング体制(データ提供・チェック・排出係数等リバイズ)に加えて、活動量・排出係数データの整備、それらを効率的に行うことができるソフトウエアの整備を行うことである。以上の仕組みを作ることにより、中国あるいは他の途上国の地域別の排出状況データを把握し、各大気汚染物質の原単位も作成することができる。
 コベネフィットとの関連で述べれば、まず国際的に通用するコベネフィットのガイドラインを整備し、次に日本の知見を活かしつつ相手国と一緒にデータを蓄積し、複数国のデータを蓄積したコベネフィットクリアリングハウスを整備する。最後に上に述べたMRVシステムへの統合を図ることが具体的展開として考えられる。日本が環境面で国際的に貢献するためには、日本の効率が高い機器の設置を現地で促進するだけではなく、ここで述べたソフト面の貢献も重要である。その拡大には相手国のニーズにあったサービスを日本主導で提供する必要があり、上に示した取り組みが望まれる。