シリア・アンモニア製造プラントのテールガスによるエネルギー利用CDM事業調査

公益財団法人 地球環境センター

CDM/JI事業調査結果データベース

調査名シリア・アンモニア製造プラントのテールガスによるエネルギー利用CDM事業調査
調査年度2008(平成20)年度
調査団体清水建設株式会社
調査協力機関株式会社オオスミ、有限会社クライメートエキスパーツ
調査対象国・地域シリア(ホムス市)
対象技術分野その他(廃ガス利用)
対象削減ガス二酸化炭素(CO2)、及びメタン(CH4)
CDM/JICDM
プロジェクト実施期間/クレジット獲得期間2010年~2020年/2011年~2020年
報告書
プロジェクトの概要本プロジェクトは、シリア第三の都市、ホムス市にある総合化学肥料工場(General Fertilizer Company:以下、「GFC」と称す。)のアンモニア製造プラントにおけるパージガス(排出ガス:CH4=12%、H2=60%、その他窒素、アンモニア、アルゴンなどを含み有害物質は含まれていない)を、工場内で使用されている天然ガス焚きボイラーの代替燃料として有効利用するCDMプロジェクトである。
ベースラインの設定 提案新方法論の物理的なプロジェクトバウンダリーは、「総合肥料化学工場内でパージガスを回収し、ボイラー燃料として利用する場所」である。本プロジェクトでは、パージガスはアンモニアプラント内で回収され、パージガスを燃料とする新規の混焼焚きボイラーは、2基の既存の天然ガス焚きボイラーの隣に設置する予定であり、プロジェクトバウンダリーはこれらの場所に限られる。
 ベースラインシナリオは、「現状維持」となると想定される。
追加性の証明 ベースラインシナリオの証明方法の基本的考え方は、GFCで「実際にどうであったか?」という過去から現在に至る状況を把握し、その理由や裏付ける証拠を提出することで行われる。
 各種バリアの存在状況に関して、裏付ける証拠を収集し、それを時系列的にまとめることで、GFC社としての意思決定の推移を追えるような表を作成する。実際の論証に関しては、現状維持とは異なるベースラインシナリオオプションを複数提示し、それらから(CDMとならなかったら)もっともありそうなシナリオとして、ベースラインシナリオを選択する。この場合、2つの要素に大別し、その要素の中での個々のシナリオ代替案(の組み合わせ)を検討する。これにより、現状維持がベースラインシナリオであり、プロジェクトは追加的であることが証明できる。
GHG削減想定量 年平均85,250tCO2、850,250tCO2/10年間
モニタリング プロジェクト活動により利用されるパージガスに含まれるメタンの量と、このメタンガスをボイラで燃焼させることによって得られる熱量をモニタリングすることにより、メタン破壊分と燃料代替分の温室効果ガス排出削減量を算出する。
環境影響等 本プロジェクトは、現在大気中に放出されているメタンガスを有効に利用し、かつ現在の燃料使用量を抑制するものであることから、環境に良い影響を与えるプロジェクトである。また、パージガス中に含まれるアンモニアについてもこれを回収する設備を同時に導入することを検討しており、この部分も環境に良い影響を与えることとなる。
事業化に向けて 本プロジェクトにおいては、新規方法論を作成し、国連の承認を得ることが必要となるものの、2011年よりクレジットの獲得を目指す計画を想定し、その結果、排出権の価格が10US$/tCER以上となる状況であれば、事業実施可能であるとの結論を得ることができた。
 当社は、今後のシリアの政治、経済の動向を見守りつつ、本プロジェクトへの資金拠出を含め、速やかな事業実現化を推進してゆく予定である。
コベネフィットの実現 本プロジェクトサイトであるGFC社は、ホムス市における大気汚染発生源の一つである。本プロジェクトが対象としているパージガスについても、人体に有害なアンモニアを含んだガスが大気中に放出されており、公害防止の観点からも、パージガスの処理が求められてきた。
 パージガス中のアンモニアの濃度は3%弱とはいうものの、工場の内外においてアンモニア臭がしており、周辺への悪影響は否定できない状況である。本プロジェクトの実施によってアンモニアの大気放出が抑制されることは、大気汚染防止の面から意義があり、コベネフィットを実現するプロジェクトであると考えられる。