カンボジア・ナンヨウアブラギリ粗精製油の発電用代替燃料利用CDM事業調査

公益財団法人 地球環境センター

CDM/JI事業調査結果データベース

調査名カンボジア・ナンヨウアブラギリ粗精製油の発電用代替燃料利用CDM事業調査
調査年度2008(平成20)年度
調査団体株式会社日本開発政策研究所
調査協力機関株式会社双日総合研究所
調査対象国・地域カンボジア(カンポンスプー州)
対象技術分野バイオマス利用
対象削減ガス二酸化炭素(CO2)
CDM/JICDM
プロジェクト実施期間/クレジット獲得期間2010年~2024年(15年間)/2011年~2020年(10年間)
報告書
プロジェクトの概要(株)日本開発政策研究所(JDI:本調査実施者)が現在カンボジア王国プノンペン郊外で運営・開発中のプノンペン経済特区(PPSEZ:Phnom Penh Special Economic Zone)へ増設予定の計13MWの重油発電機(6.5MWx2機、現在6.5MWの重油発電機が2機稼働中)の燃料をバイオ燃料(ナンヨウアブラギリの粗精製油(アブラギリ粗油))で代替し、温室ガスの削減と安価で安定した燃料供給による価格競争力のある電力供給をPPSEZへ行う。アブラギリ粗油は、同じくJDIが創設したCBEDC(Cambodia Bio-Energy Development Corporation)がプノンペンに隣接するカンポンスプー州で栽培及び契約栽培により収集したナンヨウアブラギリ種子を、本提案事業で創設する特別目的会社(グリーンエナジー社(仮称))が買い取り、同地区に新設する搾油・精製施設(アブラギリ粗油生産量3.4万トン/年)で生産し、トラック輸送によりPPSEZへ供給する
ベースラインの設定 ベースラインは、AMS-I.A(Version 13)のパラグラフ7(オプション2)に従い、プロジェクトが実施されなかった場合の化石燃料の消費量を基に計算される。プロジェクトが実施されない場合、PPSEZの発電は引き続き重油によって行われると想定される。年間発電量(MWh)に、発電所を運営するCECの実績に基づき算出したCO2排出係数を乗じて求めた。その結果、ベースライン排出量は72,180tCO2/年となった。
追加性の証明 本プロジェクトで使用される搾油・精製方法はホスト国内に普及していないことから、技術バリアが存在する。本プロジェクトがCDMプロジェクトとして実施されなければ、発電に使用される重油がバイオ燃料により代替される事は無いと考えられる。
GHG削減想定量 想定されるプロジェクトの温室効果ガス削減量は、2011年:489tCO2、2012年:971tCO2、2013年:7,589tCO2、2014年:26,791tCO2、2015年:52,645tCO2、2016年~2020年:各年68,235tCO2/年で、10年間の合計429,657tCO2となる予定である。
モニタリング 承認済み方法論のモニタリングを適用し、「AMS-I.A:Electricity generation by the user」以下の項目を、本CDM事業の為に創設される特別目的会社(グリーンエナジー社(仮称))がモニタリングの管理・保管を行う。各モニタリング項目の情報は種子調達を行うCBEDC、ナンヨウアブラギリ粗精製油を生産するグリーンエナジー社、PPSEZで発電を行う発電事業者が業務管理指標として記録を行う。
環境影響等 本プロジェクトで導入予定の、バイオ燃料生産事業には搾油・精製工程がある為、初期環境影響評価(IEIA)が必要となる。また本プロジェクトでは、大気汚染、水質汚染、廃棄物、及び騒音などの環境関連規制や、その他関連法規に則った設計と運営が求められる。
事業化に向けて 1つ目の課題として、本プロジェクトに必要な年間約14万トンの種子調達を行う為に、ナンヨウアブラギリの植林を約5.9万haに行う必要がある。種子調達には2通りの方法で行い、まずは政府が農産業育成の為に発行済みの土地利用権(ELC)を所有する事業化との協力により、種子生産を行う。また、小規模な農園と垣根方式の栽培により、残りの種子についても調達を行う。
 2つ目の課題として、2007年7月のピーク時に比べて3分の1に下落した原油価格の影響で、バイオ燃料の価格競争力が著しく低下している。本提案事業では最新の精製技術の導入は行うが、その投資額は最低限に抑えられている為、排出権販売収入に加え、種子の買取価格とバイオ燃料の販売価格をうまく調整する事で、下落した輸入重油相当の値段を実現する事が可能となる。従って、種子の生産者、バイオ燃料の生産者、バイオ燃料の消費者3者一体となった取り組みが必要となる。
 上記2項目については、本調査終了後もJDI及びその関連会社で事業化に向けた作業を行い、2010年にCDM事業の登録を目指す。
コベネフィットの実現 現在発表されている各種報告を見ると、ナンヨウアブラギリの粗精製油の硫黄分の含有量は、現在PPSEZで使用されている重油の25分の1程度の為、健康被害を引き起こす二酸化硫黄(SO2)の排出量の大幅な削減が見込まれる。
 しかしながら、現状では情報不足のため、指標の提案は困難であり、本報告書では指標の提案を差し控えた。