インドネシア・東ジャワ州における木質バイオマス発電CDM事業調査

公益財団法人 地球環境センター

CDM/JI事業調査結果データベース

調査名インドネシア・東ジャワ州における木質バイオマス発電CDM事業調査
調査年度2008(平成20)年度
調査団体住友林業株式会社
調査協力機関PT. Kutai Timber Indonesia
調査対象国・地域インドネシア(東ジャワ州)
対象技術分野バイオマス利用
対象削減ガス二酸化炭素(CO2)
CDM/JICDM
プロジェクト実施期間/クレジット獲得期間2010年~2030年/2011年~2018年(最初のクレジット期間)
報告書
プロジェクトの概要本プロジェクトは、インドネシア共和国東ジャワ州プロボリンゴ市に位置するPT. Kutai Timber Indonesia(以下、KTI)において、再生可能バイオマスを燃料としたコジェネレーション設備を導入するものである。
KTIは、合板、建材、パーティクルボード(PB)を製造する総合木材加工会社である。KTIの合板・建材工場は、自社工場から発生する木質バイオマスを100%使用しているボイラーを、3基所有している。工場で使用する電力は、インドネシア国内最大の電力網であるJava-Madura-Bali(JAMALI)グリッドからの電力供給を受けており、合板・建材工場、PB工場で、それぞれ3.5MW(ピーク時)使用している。
新規導入設備は、発電容量4.5MW、熱生成容量6.5MWthのコジェネレーション設備であり、PB工場で使用している電気エネルギーと、建材工場の木質バイオマスボイラー1基分の熱エネルギーの代替を予定している。
 燃料となる再生可能バイオマスは、木質バイオマス及び、農産物廃材であり、KTIの工場から発生するものや、周辺地域から収集したものを使用する。
ベースラインの設定 方法論は、小規模方法論のAMS I.CとAMS I.Dが適用される。
 ベースラインは、小規模方法論AMS I.Cのベースラインオプションのうち、「(e)グリッドからの電力供給、または自家発電/再生可能バイオマスからの蒸気・熱生産」が選択される。これは、現状のシステムと同じであり、グリッドからの電力供給、及び木質バイオマスボイラーからの蒸気・熱生産がベースラインとして設定される。
 プロジェクトのバウンダリーは、「再生可能エネルギー生成の物理的・地理的なサイト」が条件となる。
追加性の証明①投資障壁
     IRRの試算を行ったところ、CER売却による収益を含めても、IRRは加重平均資本コストを下回る見込みであり、現時点では事業化の見込みがたたないことがわかった。
②一般的慣行障壁
    •  再生可能バイオマスの利用は、石炭利用と比べると、非常に広範囲、かつ大量の再生可能バイオマスを収集し、保管する必要がある。また、収集には労力と時間がかかり、木材加工業者を取巻く経済情勢により、安定した廃材の確保が困難である等、多くの障壁がある。

     当プロジェクトが実施されると、KTIはジャワ島において、熱と電力を効率良く生産するコジェネレーション設備を導入する初めての木材加工工場となる。
GHG削減想定量 年平均12,172tCO2
モニタリング KTIはISO9001認証を合板・建材工場で取得している。2009年にはPB工場でも取得見込みであり、モニタリング体制をISO手順書に記載することで、管理体制を維持する。
 PB工場における原料の製造コスト、電力使用量などは、月末にPB製造部が集計し、月次レポートとして、管理部門長が確認後、社長に報告される。本プロジェクトに関する報告体制は、このシステムに準じて構築される。さらに、本プロジェクト実施に伴い、新規にバイオマス発電プラント部を、PB製造部門下に設置する。
環境影響等 KTIは、環境管理・監視書類(DPPL)に準じて環境管理を実施している。
 KTIは既に合板・建材工場でISO14001の認証を取得しており、2009年には、PB工場でも取得できる見込みである。ISO14001の環境管理手法を活用し、環境への負荷軽減、工場の安全衛生に関わる作業環境の改善を計画、実施するシステムを、KTIは既に構築している。
 再生可能バイオマスを利用する本プロジェクトは、化石燃料を利用するよりも、煤塵や一酸化炭素の放出を削減できる。
事業化に向けて 現時点で事業性を試算すると、事業化の見込みがたたないことがわかった。
 事業性の試算結果に大きな影響を及ぼす要因として、PLNの電気代と再生可能バイオマスの購入費用があり、PLNの電気代が上がり、再生可能バイオマスの購入単価を下げることができれば、事業として成り立つ可能性が出てくる。PLNからの情報で、電気代は近い将来上がる可能性が大きいという情報を入手しているため、事業化に向けては再生可能バイオマスの購入単価を抑えるための価格交渉や収集体制の確立が必要になる。
コベネフィットの実現①煤塵の排出量について
     本プロジェクトで代替対象となる建材工場の木質バイオマスボイラーは、時々、燃焼時の酸素不足、炉内温度低下等、不完全燃焼が原因による黒煙(煤塵)の排出が見られる。新規導入設備では、不完全燃焼による黒煙が発生しない燃焼システム、及び集塵装置を備え、煤塵の発生量を抑制する計画である。
②再生可能バイオマスの有効活用
     廃棄されている農産物廃材を燃料として利用することは、資源の有効活用だけでなく、単純焼却による煙害を防ぎ、またメタンガスの発生回避も期待できる。