タイ・ピピ島における燃料電池を用いたバイオマス発電システム事業調査

公益財団法人 地球環境センター

CDM/JI事業調査結果データベース

調査名タイ・ピピ島における燃料電池を用いたバイオマス発電システム事業調査
調査年度2007(平成19)年度
調査団体株式会社KRI
調査協力機関タイ国立科学技術研究所(TISTR)、Phi Phi Island Village Beach Resort & Spa、富士電機グループ
調査対象国・地域タイ国 クラビ県 ピピ・ドーン島
対象技術分野バイオマス利用
対象削減ガス二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)
CDM/JICDM
プロジェクト実施期間/
クレジット獲得期間
2008-2023年(クレジット期間:15年)
報告書
プロジェクト概要当該事業は、タイ国南部のクラビ県に属するピピ・ドーン島に立地しているリゾートホテルから排出されるし尿、生ゴミなどのバイオマスを嫌気性発酵によってバイオガス(メタンガス含有率60%)を発生させ、そのバイオガスを、既に商品化されている国産燃料電池であるりん酸形燃料電池(PAFC)に導入して発電を行い、当該リゾートホテルの電気・熱需要を賄う。現在、オープンラグーンあるいは埋立処理されているし尿、生ゴミから生じるメタンガスを回収すると同時に、ホテルの電気需要を賄うために稼動されているディーゼル発電機の燃料使用量を減少させる。
ベースラインの設定・追加性の証明ベースラインの設定
 ベースラインシナリオとして、リゾート施設から発生するし尿については最低限の浄化処理を行った後に周囲の海へ放流、生ゴミ等は収集しプーケット島まで運搬し、ごみ処理場での埋立処分とした。
追加性の証明
 廃棄物からメタンを主とするバイオガスを取り出しても、従来のガスエンジン発電機は、発電効率が低く、メンテナンスコストも天然ガス専焼のガスエンジンと比較しても高価になるため、エネルギー収支、経済収支のいずれの面からも廃棄物をバイオマスとして活用する設備を設置することは難しい。よって、本プロジェクトには十分な追加性が認められると考えられる。
GHG削減量 調査の結果、当該リゾートから排出されるし尿・生ゴミを活用することで、軽油を焚き減らすことが可能であり、GHGを約2,500~6,000t-CO2/yr(プロジェクト実施期間全体で80,537 t-CO2)削減可能であることがわかった。
モニタリング 小規模CDMのための承認済み手法“Tool to determine methane emission avoided from dumping waste at a solid waste disposal site”及び承認済み方法論”EB33: Electricity generation by the user”に基づいてモニタリング計画を設定した。
環境影響等 当該プロジェクトの実施により、リゾート施設において発生するし尿・生ゴミなどを資源化することができ、現在、各施設にて最低限の処理しかなされていない排水処理システムを高度化することが可能である。結果としてリゾートの環境を維持することができる。また、現在は、生ゴミなどの廃棄物をプーケット島まで船で輸送して埋立処理しているが、当該システムにより廃棄物を有効利用することで、埋立量を削減することが可能である。さらに、当該システムによる発電によって、従来のディーゼル発電用の燃料を削減できる。
事業化に向けて 当該プロジェクトは、燃料電池を導入する日本側、メタン発酵装置と燃料電池の導入を図るタイ側双方にメリットがあるコベネフィット型のCDM事業として位置付けられるが、当該システムに必要な量・組成の生ゴミを収集できるかどうかが大きな課題である。リゾートから排出される生ゴミは、季節やゲスト数に応じて組成や発生量が変動し、一般的に再現性が得られない。導入を想定しているリゾートや近隣のリゾート(当該リゾートの北側に位置する100部屋からなる米国系ホテルチェーン)との共同運用によってバイオマスの資源量を確保することも必要だと思われる。