中国・山西省炭鉱メタンを利用したコージェネレーションシステムのCDM可能性調査

公益財団法人 地球環境センター

CDM/JI事業調査結果データベース

調査名中国・山西省炭鉱メタンを利用したコージェネレーションシステムのCDM可能性調査
調査年度2006(平成18)年度
調査団体日本エヌ・ユー・エス(株)
調査協力機関清華大学CDM R&Dセンター(北京喜地愛母科技諮問公司)、華晋焦煤有限責任公司
調査対象国・地域中国(山西省)
対象技術分野その他
対象削減ガス二酸化炭素, メタン
CDM/JICDM
プロジェクト実施期間/
クレジット獲得期間
2007~2027/
2007~2013
報告書
プロジェクト概要本プロジェクトは、山西省柳林県の沙曲炭鉱おいて、安全な炭鉱の操業のために炭鉱内から大気中へ排気している炭鉱ガス(CMM)を採取して、有効利用・破壊するものである。沙曲炭鉱は石炭埋蔵量が22億5228万トンで、年間300万トンの生産能力を有する。メタン利用では、CMMを発電機(設備容量14,000kW)の燃料として利用し、発電した電気を地域の電力系統へ送電する。さらに、発電機から発生する熱を利用する余熱利用ボイラー(最大熱供給量33.12GJ/h)を設置し、これまで利用されてきた炭鉱の生活区への熱供給用の石炭ボイラーの代わりに、それらのボイラーが熱供給を行い、既存の石炭ボイラーは廃止する。また、余剰ガスなどを燃焼するための開放型燃焼装置も設置し、できる限り多くの炭鉱ガスを燃焼できるようにする。
ベースラインの設定・追加性の証明・ベースラインの設定:
プロジェクトのベースラインシナリオは、ACM0008(“Consolidated methodology for coal bed methane and coal mine methane capture and use for power (electrical or motive) and heat and/or destruction by flaring”)version 3に従った方法により現在炭鉱で実施している状況に決定された。具体的には、安全基準を満たすため炭鉱内から抽出しているVAM、採掘前CMM、採掘後CMMはすべて大気中へ放出、炭鉱で使用する電力は外部の送電網から購入、炭鉱内の住民区で使用する熱は石炭ボイラーで供給というものである。
・追加性の証明:
提案しているプロジェクトは、大気中へ放出している炭鉱ガスを用いて、発電を行い、作られた電力は外部の電力網へ流し、発電機の余熱を利用したボイラーによる熱供給で石炭ボイラーによる熱供給を代替するというものである。
プロジェクトの投資の障害について経済的な評価を行ったところ、発電機の設計寿命である20年間にわたるキャッシュフローを元に内部収益率IRRを評価した結果7.19%となった。中国における炭鉱メタン利用CDMプロジェクトの先行例を調べたところ、投資障壁の判断基準(ベンチマーク)として用いてIRRの値は8~11%強となっているが、沙曲炭鉱メタンCDMプロジェクトのIRRはそれらの値を十分下回っている。この収益率の低さは、極めて大きな投資の障害である。一方、CER販売の利益を考慮し、中国政府のCDM承認基準を基にIRRを計算しなおすと、IRR=80.7%となり、収益率は大幅に改善し、事業採算性が確保される。
GHG削減量年間削減量:664,488t-CO2e 見込み
 クレジット獲得期間中(7年間)の総削減量:3,543,936t-CO2e 見込み
モニタリング本プロジェクトでは、統合化方法論ACM0008(“Consolidated methodology for coal bed methane and coal mine methane capture and use for power (electrical or motive) and heat and/or destruction by flaring”)version 3をベースライン方法論及びモニタリング方法論として採用している。
環境影響等本プロジェクトにおいて想定される環境影響要因とその評価は以下の通りである。
- 大気質:廃熱利用ボイラーの設置に伴う石炭火力ボイラーの代替と、系統から購入していた電力(石炭火力発電)をメタンガス発電でまかなうことにより、温室効果ガスの排出削減が可能である。また、石炭火力発電により発生するオゾンや硫黄酸化物、窒素酸化物等の大気汚染物質の排出を回避できると考えられる。
- 水質:発電所の冷却水は循環して再利用され、ボイラーなどからの排水は既存の汚水処理施設で処理されるため、周辺の水環境への影響はほとんどないと考えられる。
- 生態系:プロジェクトは沙曲炭鉱ガスステーション敷地内で行われるため、影響はないもと考えられる。
- 動植物:プロジェクトエリア内に法律で保護されている動物はおらず、その様な植物もほとんどないことから、動植物への悪影響はほぼないと考えてよい。
- 騒音:工事機械の使用により多少の騒音は想定されるが、工事期間が短いこと、影響は半径350mの範囲に限られていることなどを考えると、周辺の住民には重大な影響は及ばないと考えられる。施設の運用時に発電機の運用による騒音が懸念されたが、発電所は振動や騒音の厳しい基準に沿ってデザインされてあり、影響はないと考えられる。
- 交通:既存の道路システムで工事中も施設運用時も十分に対応できると考えられる。
上記の通りプロジェクトによる周辺環境への影響はほぼないものと考えられ、また、温室効果ガスの削減や大気質の改善など、プロジェクトによるポジティブな影響が予想される。
事業化に向けて本プロジェクトは、2007年6月の施設の稼動へ向けて準備を進める予定である。