ロシア・冷媒ガス製造工場排出代替フロンの回収、破壊によるJI事業化調査

公益財団法人 地球環境センター

CDM/JI事業調査結果データベース

調査名ロシア・冷媒ガス製造工場排出代替フロンの回収、破壊によるJI事業化調査
調査年度2005(平成17)年度
調査団体住友商事(株)
調査協力機関Chimprom社
調査対象国・地域ロシア(ボルゴグラード州ボルゴグラード市)
対象技術分野その他(代替フロン抑制)
対象削減ガスHFC23
CDM/JIJI
プロジェクト実施期間5年間
報告書概要版概要版(289KB)
詳細版本文(2.2MB) 本文(2.7MB)
プロジェクト概要HFC23は、主に冷媒ガスとして使用されているHCFC22製造における副産物(製品HCFC22の3%相当量が発生)であり、極めて高い温暖化係数(11,700)を有し、京都議定書において規制の対象となっている物質である。HCFC22は、モントリオール議定書において規制の対象となっているが、ロシア連邦において、同ガスの排出を規制・制限する法律・規制は存在していない。また、HCF23ガスの排出を規制する法律・規制も存在していないため、HCFC22ガス製造の副産物であるHCF23ガスはそのまま大気に放出されている。本プロジェクトは、ロシア連邦ボルガグラード市に所在する冷媒ガス製造メーカ-であるChimprom社とのJIプロジェクトとして、HCFC22製造ラインのオフガス系に、オフガスの回収・燃焼焼却破壊プロセスを組み込み、HFC23の大気放出前に完全に分解するものである。 予想されるGHG排出削減量(ERU)は、約390千 t-CO2/yearである。
ベースラインの設定・追加性の証明ベースラインは、承認方法論AM0001(Incineration of HFC 23 waste streams)に基づき設定した。 ロシアにおいてはHFC23破壊に関する法規制は存在しておらず、追加性の検証の結果、「現状の継続で大気放出」をベースラインとした。
追加性に関しては、CDM理事会の手法を使って、代替案の検証、バリアー解析、普及している同類技術の解析、共同実施(JI)の効果、について検証を行った。その結果、本プロジェクトの追加性を検証することができた。 ロシアでは、HFC23を破壊する法的規制が存在せず、ホスト国には初期投資とオペレーションコストを負担してまでHFC23を破壊するインセンティブは働かない。
GHG削減量排出削減量(ERU)の算出式は下記の通り。
E_R (EUR)
= (Q_HFC_23 – Q_BL_HFC_23) x GWP_HFC_23 – E_P (where E_P = E_TOP + E_L)

ここで、

E_R(EUR):GHG排出削減量・・・ton/year
Q_HFC_23:プロジェクトで分解されるHFC23廃ガス量・・・ton/year
Q_BL_HFC_23:分解されているHFC23廃ガスベースライン量・・・ton/year
E_P:プロジェクトによるGHG排出量・・・ton/year
E_TOP:熱分解プロセスに伴うGHG排出量・・・ton/year
E_L:リーケージに伴うGHG排出量・・・ton/year
GWP_HFC_23:HFC23の地球温暖化係数=11,700 t-CO2/t-HFC23

承認された方法論にしたがって、Chimprom社の過去3年間の運転データやスチーム・電力の排出係数等、排出削減量算出の基本データを代入して得られた削減量は下記のとおりである。
GHG排出削減量E R (ERU)
= (Q_HFC_23 – Q_BL_HFC_23) x GWP_HFC_23 – E_P (where E_P = E_TOP + E_L)
= 391,014 – 404.5 – 45.65
= 390,563 t-CO2/year
以上から予測されるGHG排出削減量(ERU)は、390,563 t-CO2/yearと計算される。
モニタリング本プロジェクトのモニタリングには、既にCDM理事会で承認されたモニタリング方法論AM0001ver03 「Incineration of HFC23 waste stream」を使用する。
方法論の適用性はベースライン方法論に準じるものであり、本プロジェクトへの適用は妥当と判断される。
環境影響等(1) 排ガス
本プロジェクトの実施により、プロジェクト境界外に排出される可能性のあるガスは、HFCF22の製造の排ガスに含まれる成分、HFC21,HFC23、及びHCFC22の熱分解により生成される可能性がある物質(CO2、HF, HCl、Cl2、CO、NOx、C6H5Cl、C6H5ClO、ダイオキシン類)である。 これらの物質は、最終的にガス処理槽に導かれ、環境基準を十分に満たすことを確認した上で排出される。沈殿槽で発生するCaFスラッジは、Chimprom社の工場敷地内にあるセメント固化施設で、セメント材料として工場内で再利用されている。従ってスラッジ移送用の為の燃料消費に伴うCO2その他の排出ガスの環境への影響は無視しうるレベルのものである。本プロジェクトで消費するエネルギーである燃料(天然ガス)、電力及び水蒸気の絶対量はきわめて小さく、 それに起因する排ガスの環境への影響は無視しうる。 ダイオキシンに関しては、日本の類似プラントから排出される燃焼排ガス性能確認試験の結果から液中燃焼方式によるHFC23焼却プラントからのダイオキシンは環境及び人体の健康に影響しないことが示されている。

(2) 排水
本プロジェクトの実施により、プロジェクト境界外に排出される可能性のある廃水は、HF及びHClを水酸化カルシウムによる中和処理する沈殿槽からの処理済排水である。 この排水はChimprom社工場の共同排水処理設備に集められ、他のラインからの排水とあわせて、基準に従って適正に処理される。 

(3)騒音
本プロジェクトにて使用される、液中燃焼装置には運転による音の発生は軽微である。
事業化に向けて本プロジェクトの実施体制
は以下に示す通り。


プロジェクトスキーム案

本プロジェクトが2008~2012年までの第1約束期間でJIクレジット(ERU)を発生させるためにクリアすべき重要な課題は、1) COP/MOPにおけるJI実施ルール整備、と、2)ロシア国内の京都メカニズムインフラ整備・ロシア政府承認取得である。  但し、2006年に入り、JI監督委員会によるJI実施ルール整備が早急に進められており、 また、ロシア政府(経済発展貿易省)がJI案件にLetter of Endorsement を積極的に発行するなど、JI実現に向けて前向きな状況が生まれつつある。