カンボジア・モントギリ高原における再生可能エネルギーCDM事業可能性調査

公益財団法人 地球環境センター

CDM/JI事業調査結果データベース

調査名カンボジア・モントギリ高原における再生可能エネルギーCDM事業可能性調査
調査年度2004(平成16)年度
調査団体丸紅(株)
調査協力機関国内:(株)環境総合テクノス(PDD作製のための総合的なアドバイス)
ホスト国:工業・資源エネルギー省(F/S実施に伴う政府内調整と現地情報提供)
調査対象国・地域カンボジア(モントギリ州)
対象技術分野再生可能エネルギー
対象削減ガス二酸化炭素
CDM/JICDM
実施期間30年
報告書概要版概要版 (43.6KB)
詳細版本文 (415KB) 本文 (2.0MB)
概要カンボジア、モントギリ州(高原地帯)を対象とし、風力と太陽光による再生可能エネルギー開発プロジェクトを小規模CDM事業として実施することを目指す。
当社は、本年度のF/S実施地域であるモントギリ州で、昨年ゴムノキ植林のCDM案件を提案。植林案件の具体化には無電化地域である同地域の電化が必要不可欠と考え、本年度の風力と太陽光による再生可能エネルギー開発プロジェクトを小規模CDM事業として実施する提案を行った。当該プロジェクトは、地域社会の持続的発展に貢献し、村民の生活レベルの向上に資することを重要視する。
ベースラインの設定・追加性の証明1)ベースラインの設定
  本提案プロジェクトについては、まず、設備容量が1.4MW(<15MW)であること、
また上述した障壁の存在により、小規模CDMプロジェクトとしての要件を備えている。
以下、小規模CDMの運用細則に従い記載する。本案件は小規模CDMプロジェクトのタイプI.A(再生可能エネルギー、ユーザーによる発電)に該当することから、デイーゼル発電による小規模発電網による電力供給が最も実現しそうなベースラインシナリオ(当該CDM事業シナリオよりも多くのGHGを排出する)であろうと想定できる。

2)追加性
本案件プロジェクトの実現を阻んでいると考えられる以下の障壁の存在により、本CDM案件の追加性は立証可能と考える。
・本案件プロジェクトの収益性が極めて低いこと、実施対象地域がカンボジア国内でも開発の最も遅れた僻地であることから、投資の障壁が存在する。
カンボジアでは前例のない最新の技術(垂直型風力タービン方式/風力と太陽光とのハイブリッド方式)を導入するため、設備の設置と保守点検にかかわる技術の障壁が存在する。
GHG削減量現時点での想定(総設備容量1.4MW、稼働率20%、低圧農村配電網配電ロス20%、
デイーゼル発電設備排出係数0.9kg CO2e/kWh)をもとに算出される当該プロジェクト実施による温室効果ガス削減量は、年間2,759tCO2と見込まれる。
モニタリング小規模CDMプロジェクト活動のタイプI.A(再生可能エネルギー、ユーザーによる発電)のモニタリング方法論を適用できる。すなわち、プロジェクトバウンダリー内の村落に設置した各ハイブリッド発電設備による発電量実績メーターにより計測、記録し、それらの記録データーを合計したものをプロジェクト全体の発電量実績としてモニタリングする。
環境影響等・本提案プロジェクトでは、各村落に小型(10~20kW)の風力・太陽光ハイブリッド発電設備を導入することから、騒音、振動、排水、排ガス等による環境影響は想定されない。
・昨年11月に小型の実証設備1基をモデル村落(Pu Tru村)に試験的に設置した。2ヵ月後のH17年1月に現地を再訪し、これまでに特記すべき環境影響は発生していないことを直接確認できた。
事業化に向けて・昨年F/Sを実施し、同地域での具体化を検討しているゴムノキCDM植林事業と併せて本案件プロジェクトを実現するシナリオが最も実現の見込みが高い。
・当該プロジェクトのIRRの予想値がCERの収入を入れても1%前後ときわめて低いため、今後どこまで単独のCDM事業として収益性を改善できるか、適正な電気料金設定を含めて課題である。
・無電化地域にはじめて電力を供給することが及ぼすかもしれない村落社会への影響について慎重に検討する必要があろう。
・本プロジェクトでは、環境汚染を引き起こす可能性がある鉛を使用した蓄電池を発電設備ユニットに組み込んでいる。2~3年で寿命に達した蓄電池を確実に回収し、その中に含まれる鉛を再び蓄電池にリサイクルするシステムを、可能ならば地元の事業として確立しておく必要がある。
・今回検討した再生可能エネルギーは風力と太陽光だけであったが、現地調査を通じ本プロジェクト候補地には小水力発電やバイオマス発電(家畜糞尿など利用)が可能な村落も複数存在することがわかった。最終的には、現地で利用可能な再生可能エネルギーのすべてを対象としたCDMプロジェクトを開発する必要があろう。