カンボジアの精米工場における籾殻コージェネレーション発電事業の実施可能性調査

公益財団法人 地球環境センター

CDM/JI事業調査結果データベース

調査名カンボジアの精米工場における籾殻コージェネレーション発電事業の実施可能性調査
調査年度2004(平成16)年度
調査団体三菱証券(株)
調査協力機関Angkor Bio Cogen(ABC)
調査対象国・地域カンボジア(カンダル州アンスヌール地区)
対象技術分野バイオマス利用
対象削減ガス二酸化炭素, メタン
CDM/JICDM
実施期間クレジット獲得期間:2007~2013年の7年間(7年毎2回まで更新可能)
報告書概要版概要版 (44KB)
詳細版本文 (1.0MB) 本文 (630KB)
概要カンボジア最大の香り米精米工場であるアンコール精米工場(Angkor Kasekam Roongroeung Co., Ltd.: AKR)に隣接して同工場から排出される籾殻を燃料としたコージェネレーションプラントをABCが建設し、電力をすべてAKRに販売する。これにより、AKRのディーゼル自家発電を代替する。また、カンボジアの一般的な籾殻処分方法により、通常は野積み処分されて腐敗する籾殻からのメタンガスの排出を抑制することにつながる。なお、蒸気は米の乾燥にAKRが利用するが、この作業は元々天日干しであるので、この部分の排出削減はない。
ベースラインの設定・追加性の証明「小規模CDMプロジェクト活動に関する簡略化方法及び手続き」タイプI.Aに従い、AKRのディーゼル発電による排出量は9,088tCO2/年と算出した。一方、タイプIII.Eに従い、野積み放置の腐敗した籾殻から発生するメタンの排出係数を籾殻1トン当たり0.0616トンと求め、これに本プロジェクトが必要とする年間籾殻量26,136トンを乗じてCO2換算した結果は33,810 tCO2/年となった。よって、本プロジェクトのベースライン排出量は、以上の結果の合計である42,898 tCO2/年である。

カンボジアでは廃棄物の野外焼却の実施は現実的でないことと、野積み放置が籾殻の一般的な処分方法であることにより、自然分解するまで野積みをベースライン・シナリオとする。一方、CDMとしての承認を得ずにプロジェクトを実施することは、一般的な習慣に起因するバリア及び技術バリアが存在するため、ベースライン・シナリオではない。したがって、これらのバリアを検証・解説することで、本プロジェクトの追加性を主張する。
GHG削減量ベースライン排出量よりプロジェクト排出量2,917 tCO2/年を差し引いた39,981 tCO2/年である。
なお、本プロジェクトによるリーケージの可能性はない。
モニタリングモニタリングの対象となるデータは以下の通りである。「小規模CDMプロジェクト活動に関する簡略化方法及び手続き付属書B」タイプI.A.に従って、1を、タイプIII.Eに従って2を、品質管理の観点から自主的に3をモニタリングし、III.Eの項目5に提示されている公式を用いてプロジェクト排出量を算定する。
1. 発電量 (MWh)
2. 燃焼した籾殻の量 (トン)
3. 籾殻の熱量(TJ/トン)
なお、同手続きタイプIII.Eの項目4に沿ってリーケージについてのモニタリングは実施しない。
環境影響等カンボジアの環境影響評価(EIA)の実施対象となるのは発電規模5MW以上の発電事業であり、本プロジェクトは対象事業にならず、また、本プロジェクトによって環境に悪影響が及ぶことはないと考える。
ステークホルダー関連では、精米工場の従業員や地元の村人等、プロジェクト現場周辺に在住する22人を招集して本件の実施に関する公聴会をABCが2004年9月に実施し、出席者全員が本プロジェクトへの支持を表明した。
事業化に向けて本プロジェクトの初期投資の総額は、約350万ドルであり、費用対効果は、以下の通りである。

3,463,800(米ドル)÷279,867(tCO2/7年)=12.4(米ドル/ tCO2)

費用対効果は魅力的なものとは言えず、初期投資額を見直すなどの検討が必要である。

本件の実施によって、ABCはカンボジアにおける再生可能エネルギー分野の先駆者となるわけだが、今までになかった分野の案件を実施するという大きなリスクをとることになる。また、海外の民間投資家が関与する場合、カンボジアのカントリー・リスクも考慮する必要がある。他の東南アジア諸国と比較すると、カンボジアのカントリー・リスクは非常に高い。ABCが実際に投資家へ打診して得られた、投資の面から必要とされるプロジェクトIRRは25%以上であった。

本プロジェクトは、(CERの収入がなければ)IRRが17.9%であり、25%を大きく下回っている。現在のところ、本件の資金調達のめどは立っていない。ABCは、本件がCDMプロジェクトとなることによって、投資家の関心が高まることを期待している。
備考仮バリデーション
DOEであるDet Norske Veritas Certification(DNV)から、デスクレビューにより以下の観点からのフィードバックがあった。
・京都議定書第12条に定められたCDMプロジェクトとしての要件及び同条第2項に定める小規模CDMプロジェクト活動のための簡素化手続きを遵守しているか否か。
・提出されたPDDが各項目の要件を満たしているか否か。
・現地で確認すべき事項
有効化審査は、ほぼ以下の手続きで実施されるが、本件では⑤まで終了している。

① PDDのドラフト版をDOEへ提出
② DOEよりデスク・レビューの結果であるCustomized Protocolを受領
③ 現地審査
④ 現地審査を基にしたフィードバックをDOEから受領
⑤ ④に基づいてPDDの改訂版をDOEへ提出
⑥ 予備有効化審査報告書(Preliminary Validation Report)をDOEより受領
⑦ DOEによりPDDがパブリックコメントにかけられる