メキシコの冷媒メーカにおけるHFC-23破壊事業調査

公益財団法人 地球環境センター

CDM/JI事業調査結果データベース

調査名メキシコの冷媒メーカにおけるHFC-23破壊事業調査
調査年度2004(平成16)年度
調査団体ユニコインターナショナル(株)
調査協力機関SEMARNAT, SENER
調査対象国・地域メキシコ(モンテレー市)
対象技術分野その他(代替フロン抑制)
対象削減ガスHFC
CDM/JICDM
実施期間2004/7-2005/3
報告書概要版 概要版(295KB)
詳細版本文 (845KB) 本文 (3.7MB)
概要本プロジェクトは、メキシコ合衆国・モンテレー市にあるQuimobasicos社の冷凍、冷房用冷媒であるクロロジフルオロメタン(CHClF2:一般名HCFC22)製造設備から大気に放出されているトリフルオロメタン(CHF3:一般名HFC23)を分解処理する事によって地球温暖化防止へ寄与しようとするものである。具体的にはHCFC22製造設備に本邦においてフロン類分解処理で実績を有する高周波プラズマ分解設備を設置してHFC23を水蒸気存在のもと理論最高温度10,000℃の高温条件に曝す事によって分解し、その温室効果をなくした上で大気放出すべく設備改造を実施する。HFC23は、温室効果が炭酸ガス(CO2)の11,700倍に設定されている為、大気放散の絶対量が少ない場合でも、プロジェクトの温室効果ガス排出量削減効果は大きくなる。
Quimobasicos社の場合には、CO2換算の温室効果ガス削減量は、年間250万トン(本調査後140万強)レベルと見込まれ京都議定書に規定された京都メカニズムの適用に資すると考えられる。本プロジェクトは本邦とメキシコとの間のCDMプロジェクトとして実施し、設備改造後に達成した温室効果ガス排出削減量を排出権として日本に応分に引取るものである。
ベースラインの設定・追加性の証明本プロジェクトで設定されるべき基準分解対象量所謂ベースライン(QBHFC23)は、ホスト国の法的規制値となるが、法的規制上生成HFC23の全量が分解すべきとなっている場合はその全量がベースラインとして設定される事になる。
    QBHFC23=QHFC23×R
上式において、Rは生成HFC23(QHFC23)の当該年度に適用される規制分解比率である。本プロジェクトのホスト国・メキシコにおいては、現在のところHFC23の排出量規制値(率)が存在しておらずその為に、一部企業での自主的対策を除けば、HFC23が大気放出されている。かかる状況下では、HFC23の分解量0の状況をもってCO2排出量-ベースラインと設定する事となる。

上述の如く、法的規制が無い為、直接の経済的利益の見込めないHFC23の分解の為の設備への投資は行われておらず、HFC23は大気に放出されている。従って分解対象ガスのHFC23の量がベースライン量を超える事があればその超過量は追加量と認識される。
GHG削減量本プロジェクトの実施によるGHG削減量は下記式によって算出される。
 ER=BE-(PE(in) + PE(out))
=(Q-HFC23 - QB-HFC23)×GWP-HFC23
-(Q-ND-HFC23×GWP-HFC23 +Q-DCHFC23 + Q-CPower + Q-CSteam + Q-CTrans )


ER             :GHG排出削減量
(炭酸ガス換算量、ton-CO2eq/y)
BE             :GHGベースライン排出量
(CO2換算量、ton-CO2eq/y)
PE(in)           :プロジェクト境界内GHG排出量
(CO2換算量、ton-CO2eq/y)
PE(out)          :プロジェクト境界外GHG排出量
(CO2換算量、ton-CO2eq/y)
QHFC23         :HFC23排出量(ton/y)
QBHFC23        ベースラインHFC23排出量(ton/y)
GWPHFC23   温暖化係数(11,700ton-CO2eq /ton、IPCC SARベース)
Q_NDHFC23 未分解HFC23量(ton/y)、本プロジェクトで採用する高周波プラズマ分解法では0.01%以下となる。
Q_DCHFC23HFC23の分解により発生する炭酸ガス排出量(ton-CO2/y)
Q_CPower     :分解用電力の発電に伴う炭酸ガス排出量(ton-CO2/kwh)
Q_CSteam-    :分解用水蒸気発生に伴う炭酸ガス排出量(ton-CO2/ton-Steam)
Q_CTrans      :固体(スラッジ)輸送用車両燃料の消費に伴う炭酸ガス排出量(ton-CO2/y)
 ER=BE - (PE(in)+PE(out)), (CO2排出削減量)
=1,404,000 – 510=1,403,490
≒1,403,000[ton-CO2eq/y]
モニタリング本プロジェクトでは、プロジェクト境界内の分解対象ガスであるHFC23の量及び分解処理に関連して境界内外で消費するエネルギーがもたらすCO2の発生量を直接的に測定する。モニター対象項目、その測定頻度は詳細計画に網羅する。このモニター計画には以下の項目も含むものとする。

本プロジェクトの高周波プラズマ分解プロセスでは10,000℃という超高温下、水蒸気存在下での極短時間でのHFC23及び混在するHFC22分解を行うが、これによる生成物は、HF、CO2及びHCl限られるとの報告もあるが、極微量ではあろうが以下に列記する物質も発生する可能性は否定できないのでそれらの排出物質についてもモニター項目に網羅する事が必要である事は論を待たない。
環境影響等本プロジェクト実施による環境への影響は結論から言って極めて少ないと言える。本事業で採用する予定の高周波プラズマ熱分解装置はプラズマ場の温度が10,000℃と言う超高温に保たれ、対象ガスは瞬時に分解されて、原子状のガスとなり、次の工程の装置下部の急冷セクションに導かれ、更に洗浄塔、活性炭吸着槽に導入、無害化されたガスは大気に放出される。又洗浄工程で使用された水は、沈殿槽でCa(OH)2と反応生成したCaF2の固形分の分離処理した後、pH調整して排出する。

又本装置の運転上の環境関連事項は騒音、振動、悪臭等であるが、プラズマ分解装置は運転による騒音のレベルは極めて低く、本体並びに付属装置に於いても、騒音、振動のもとになる機器は存在しない。悪臭対策としては、活性炭による吸着処理が装備されており、外部への影響は無い。
事業化に向けてQuimobasicos社の支配的立場にある米国のHoneywell社の動きがKeyとなっており、日本企業との事業化については当初より後退した感触あり。米国勢の動きが情報管理下にあって、彼等の意図を正確に把握する事はできない。
一方MGM International社(カーボンコンサルタント)がQuimobasicos社を対象として技術的CDM開発を行っており、推移を見極める必要がある。