タイにおける廃棄物メタン利用事業に関するプロジェクト設計書作成調査

公益財団法人 地球環境センター

CDM/JI事業調査結果データベース

調査名タイにおける廃棄物メタン利用事業に関するプロジェクト設計書作成調査
調査年度2004(平成16)年度
調査団体(株)大林組
調査協力機関日立造船(株)、Energy for Environment Foundation
調査対象国・地域タイ(ノンタブリ県)
対象技術分野廃棄物管理
対象削減ガス二酸化炭素, メタン
CDM/JICDM
実施期間2007年~2016 年
報告書概要版概要版 (298KB)
詳細版 本文(3.2MB)
概要 当該プロジェクトは、タイ国ノンタブリ県の固形廃棄物処理センター内のオープンダンピングエリアおよび衛生埋立地から埋立地ガスを回収し発電を行うプロジェクトである。 固形廃棄物処理センターはノンタブリ県の北西にあるサイノイ地区に位置している。 当センターはノンタブリ県自治体(Provincial Administration Organization of Nonthaburi (PAON))が所有し、管理運営も行っている。 当該センターはノンタブリ県のほ
ぼ全ての固形廃棄物(約800トン/日)を受け入れている。
受け入れられた固形廃棄物はオープンダンピングエリアで処理されてきたが、2005年1月から衛生埋立地である埋立地-B および埋立地-C で処理される計画である。 なお、同埋立地に埋立地ガスの回収設備はなく、大気に放出される計画となっている。
 当該プロジェクトはこれらの埋立地及びオープンダンピングエリア(以下、廃棄物処分場)から発生する埋立地ガスを回収し利用するプロジェクトである。プロジェクト概要を以下に示す。
●プロジェクト期間 10年間(2007年~2018年)
●回収した埋立地ガスは発電およびフレアにより全て焼却
●発電容量 約900kW(300kW×3セット)
●発電した電力は電力会社に売電
プロジェクトによる排出削減量(CO2換算)は、発電およびフレア処理によるメタンの焼却で約67 万トン、電力の代替により約4 万トン、プロジェクト全体で約71 万トンと推定される。
ベースラインの設定・追加性の証明 ベースライン方法論は統合方法論ACM0001を採用した。追加性の証明は、"Tool for the demonstration and assessment of additionality” (EB 16 Report Annex 1)を採用し、電力代替による排出削減量は、発電容量から小規模CDM の方法論TYPE1-RENEWABLE ENERGY PROJECTS, 1.D. Renewable electricity generation for a grid, para. 29に基づいて算定した。

1)採用方法論の妥当性について
当該プロジェクトは、埋立地ガス回収プロジェクトであり、ベースラインシナリオは埋立地ガスの大気への全量放出である。
回収したガスのフレア処理又は、発電による排出削減量と電力の代替による排出削減量をクレームする。 従って、ACM0001の適応条件を満足し、当該プロジェクトへの適応は妥当である。

2)追加性の証明
Tool for the demonstration and assessment of additionality (追加性証明ツール)に基づき、まず実現可能な代替プロジェクト案をリストアップし、関連法規制への適合性、経済性、プロジェクト障害、当該地域・当該セクターにおける一般的なプラクティスの順でそれぞれ評価を行い、代替プロジェクトを絞り込むと同時に提案プロジェクトシナリオの追加性を証明した。 結果、CDMスキームがない場合、埋立地/埋立地ガスに関連した法規制、プロジェクト実施に関連するバリアにより提案プロジェクトは実施されない。 従って、当該プロジェクトは追加的である。
GHG削減量GHG の排出削減量はIPCCガイドラインに示されるFirst Order Decay (FOD) 法により推定し、更に回収可能量および発電量を想定して削減量を算定した。結果は、プロジェクト全体で約71万トンの温室効果ガスの削減となる。
モニタリングモニタリングは、方法論ACM0001に基づいて実施する。ただし、詳細なモニタリング計画は今後プロジェクトのオペレーション計画と共に作成する。
環境影響等 本プロジェクトによるネガティブな環境への影響として、プロジェクト建設に伴う土地利用および景観の変化、発電設備の運転に伴う騒音そして発電機およびフレアの排気による大気汚染が想定されるがいずれの影響も限定的である。
 一方、プロジェクト実施により埋立地ガスの回収および破壊による悪臭低減、火災および爆発リスクの低減など地域環境に対しポジティブな影響を与える。
事業化に向けて 今後、経済性のより一層の改善に向け、補助金の活用および初期投資・運営費抑制に向けた検討を行う予定である。自治体と具体的なプロジェクトの計画について協議し次年度上期中にMOUの締結を目標としている。 ただし、埋立地ガス回収のタイミングが事業性に大きく影響することからタイ政府の承認手続き体制および必要期間の状況等も考慮した上でMOU締結等の判断を行う。
 一方、クレジットの第二約束期間以降の取り扱いの不透明さが顕在化してきており、今後事業化を判断する上で最も大きなハードルとなっている。 この大きなハードルをクリアするには民間企業の自己努力の範囲は限定的であり、2012年以降に発生するクレジットを政府が買い取るなどの受け皿の必要性を感じる。