タイ東部沿海地域工業団地バイオマス利用コジェネレーション事業調査

公益財団法人 地球環境センター

CDM/JI事業調査結果データベース

調査名タイ東部沿海地域工業団地バイオマス利用コジェネレーション事業調査
調査年度2004(平成16)年度
調査団体北海道電力(株)
調査協力機関清水建設(株)、北電総合設計(株)、栗田工業(株)、アマタ開発社、アマタ設備サービス社、UAE社
調査対象国・地域タイ(チョンブリ県およびラヨン県)
対象技術分野廃棄物管理
対象削減ガスメタン
CDM/JICDM
実施期間クレジット獲得期間:2004~2010年の7年間(更新を検討)
報告書概要版概要版 (1.73MB)
詳細版本文 (3.0MB)
概要本プロジェクトは,タイ東部沿海地域における工業団地から排出され,現状埋立て処分されているバイオマス(食品残渣,紙ゴミ等)をチョンブリ県内にあるアマタナコン工業団地に分別・集積し,これを原料としたメタン発酵により廃棄物の処理とバイオガスの生産を行い,回収したバイオガスを燃料として発電・熱回収を行うものである。これにより,有機系廃棄物の埋立て処分抑制によるランドフィルガスの排出量が削減されるとともに,代替エネルギー利用によるCO2排出量が削減されるものである。
なお,廃棄物の利用計画立案にあたっては,①現状の廃棄物発生量(CASEⅠ:39t/日),②事業採算性が見込める2010年の団地規模を基に想定した廃棄物発生量(CASEⅡ:94t/日),の2ケースにおける設備容量を設定し検討を行った。
ベースラインの設定・追加性の証明●ベースラインの設定
 ベースラインは以下に示すとおりバリア分析の結果から現状維持とする。
 

シナリオ
検討結果
現状維持
バンコク周辺においては,埋立処分場の狭隘化により新たな処理方法について模索する動きがあるが,地方における制約はないため,今後も状況は変わらない。
焼却
過去にアマタナコン工業団地内は焼却設備があったが,採算面より廃止している。また,近年タイでは焼却に対する周辺住民の反対が強く,建設を見合わせる事例が多く,今後導入される見込みは少ない。
コンポスト化
タイにおいて分別を行う習慣がないことから,品質の高いコンポストの製造は困難であり,普及は望めない。
湿式
メタン発酵
工業団地においては,紙ゴミなどの固形廃棄物が大きな割合を占めることから,大量の水分および細破砕の必要がある。大量の水分を加えるのは経済的な面から,細破砕を行うのは機械の故障を招きやすく技術的な面から困難であり,普及は望めない。

プロジェクト
乾式メタン発酵は固形廃棄物処理に適しているが,同技術は現在日本においてもパイロットの段階で,タイにおける導入実績はない。タイの気候や固形廃棄物の成分,建設環境等が日本と異なる中で発生するリスクを勘案すると,プロジェクト期間中に通常プロジェクトとして普及する見込みは少ない。
 
●追加性の立証
本プロジェクト(シナリオ5)は,タイにおいて初めて導入される技術を用いており,プロジェクト実施者は,当該プロジェクトが有する気候や固形廃棄物の成分等のリスクを踏まえてCER獲得のために実施することから追加的である。
GHG削減量本プロジェクトによるGHG削減量は下表の通りである。

項目
CASEⅠ
CASEⅡ
有機系ゴミの削減によるLFのGHG削減量(t-CO2/y)
27,300
79,800
売電によるGHG削減量(t-CO2/y)
1,100
2,000
堆肥の使用によるGHG増加量(t-CO2/y)
(-) 100
(-)  400
28,300
81,400
モニタリングプロジェクト活動におけるモリタリング項目を下表に示す。


データ変数
データの出所
データの
単位
記録の 頻度
工業団地ゴミの重量
トラックスケール
t/day
毎日
有機系ゴミの重量
重量計
t/day
毎日
有機系ゴミのDOC
TOC/
DOC計
%
毎月
バイオマス発生量
ガス流量積算計
Nm3/day
毎日
メタンガス含有率
メタン濃度計
%
毎日
売電量
電力量計
kWh/y
毎月
堆肥生産量
重量計
t/day
毎日
堆肥の成分
発芽試験
%
4回/年
堆肥販売先の作物
4回/年
グリット排出係数
EGAT
kg-CO2/kWh
毎年

※連続的に計測し,毎月もしくは毎週,記録をとる。
環境影響等本プロジェクト実施に伴う環境影響は,主として大気汚染と温室効果ガスの改善が挙げられる。また,バイオガスおよび堆肥を製造し,再利用を図ることにより,狭隘化している廃棄物埋立処分場の延命化が図れる。水質汚濁についても,埋立処分場における有機系廃棄物の減量によって,汚濁負荷低減に寄与している。
マイナス影響項目としては,ガスエンジンを用いることから騒音および振動が想定されるが,設置機器が比較的小型のため,エンクロージャー等に納めて設置することにより,比較的簡単に対策が可能である。またプラントの建設予定地は,工業団地内であることから基準以下であれば問題はないと考えられる。
事業化に向けて●費用対効果
○初期投資額  CASEⅠ:10.1億円,CASEⅡ:14.9億円
○CO2削減効果           (単位:t-CO2,$/t-CO2)

 
CASEⅠ
CASEⅡ
獲得期間
7年
10年
20年
7年
10年
20年
削減量
198千
283千
566千
570千
814千
1,628千
削減コスト
49
34
17
25
17
9
 (1$=105円)              
○IRR(%,税引き後)
 
 
CASEⅠ
CASEⅡ
獲得期間
7年
10年
20年
7年
10年
20年
クレジットなし
7.1%
10.5%
5$/t-CO2
7.9
8.1
8.5
11.9
12.3
12.9
10$/t-CO2
8.6
9.1
9.8
13.5
14.2
15.2
●具体的な事業化に向けての見込み
分別の徹底や堆肥の販売先確保,利害者関係者からのコメントなどの課題はあるものの,タイ国の国家承認以外については,事業実現化の過程において検討し解決可能な課題であると理解している。また国家承認については国際的な動向に左右される面もあるが,京都議定書が発効に至った今日,比較的早い時期に体制が整うことを期待している。
本FSでは,当初想定していたよりも工業団地から排出されている廃棄物量が少なく,現状(CASEⅠ)では必ずしも投資に魅力的なプロジェクトとはなっていないが,原料である廃棄物を効率的に収集できれば,事業性のあるプロジェクトであることもわかった。