ブルガリアにおけるバイオマス利用及び高効率ボイラーの採用による地域暖房システムの実証調査

公益財団法人 地球環境センター

CDM/JI事業調査結果データベース

調査名ブルガリアにおけるバイオマス利用及び高効率ボイラーの採用による地域暖房システムの実証調査
調査年度2002(平成14)年度
調査団体(社)海外環境協力センター
調査対象国・地域ブルガリア
調査段階プロセス2:プロジェクトの実現可能性の調査
調査概要Hascovo市の市庁舎及び3つの学校における化石燃料ボイラーによるビル暖房システムから、高効率の熱分解ボイラーを導入し木屑等バイオマス燃料の利用による暖房システムに転換することにより、温室効果ガスの排出削減を行うもの。
調査協力機関中東欧地域環境センター(REC)、NGO:エネルギー効率性センターEnEffect) 、ハスコヴォ市庁、ERATO Holding社、エネルギー研究所Energy Institute社
調


プロセス1(調査対象外)




プロジェクト概要ハスコヴォ市内の2つの小学校と市庁舎のLHO(Light Heating Oil)焚きボイラーを
木材バイオマスを原料にした高効率の温水ボイラー(ガス化特殊ボイラー)へ転換することにより、温室効果ガスの排出削減を行うものである。本F/Sの中では唯一のJI案件である。
対象GHGガス二酸化炭素
対象技術分野バイオマス利用
CDM/JIJI
実施期間2003年から2018年の15年間(ボイラーの更新年数による)
ベースラインボイラー更新対象
ハスコヴォ市内の「(1)Vassil Levski小学校(LHOによる暖房エネルギー:516.3MWh/年)」と「(2)Kiril-I-Methodiy小学校(LHOによる暖房エネルギー:392.7MWh/年)」と「(3)ハスコヴォ市庁舎(LHOによる暖房エネルギー:157.3MWh/年)」

1)LHO(1,017レフ/t)ボイラーから高効率のバイオマス燃料ボイラーへの更新。燃料は、Vassil Leviski 学校が、木材バイオマス(廃材、チップ、削り屑、木材チップ等)に、ハスコヴォ市庁舎・Kiril-i-Metodiy は、木材ブリケットに切り替える。
2)ベースラインシナリオ⇒既存のボイラーの修理をしながら
安価な燃料であるLHO(暖房用軽油)を継続的に利用するものとした。
3)LHOのCO2排出係数:268.3kg/MWh(CH4、N2O排出考慮)
4)ベースライン算定には、ボイラー用電力、LHO運搬に伴うCO2排出を考慮。
5)プロジェクト実施によるGHG排出量は、ブリケット製造、ボイラ用電力、廃木材、ブリケット運搬 に伴うCO2排出を考慮


ベースライン排出量=4,518(t-CO2)/15年
GHG削減量プロジェクト実施時の排出量=153(t-CO2)/15年
GHG削減量=4,365(t-CO2)/15年

費用【建設費】  
 1)Vassil Levski小学校(750kW 2台、自動燃料注入装置付き):193,784レフ 
 2)Kiril-I-Methodiy小学校(99kW 2台、自動燃料注入装置付き):36,265レフ                         3)ハスコヴォ市庁舎(99kW 3台、自動燃料注入装置付き):28,265レフ                             【雑費】                                                                  〇計画, プロジェクト管理, その他):1,100レフ  
 【予備費】                                                                 配送費用と建設費と据え付け費用として、5% 見込む 


 【ボイラー燃料経費の削減】
 〇3施設合計:71,436レフ/年  (LHO価格(1トン1,017.6レフ)に対し、ブリケットと廃材の価格:34.8レフ/MWh、ブリケット:11.8レフレフ/MWh)     【ボイラーの維持管理経費の削減】 
 〇3施設合計:26,400レフ/15年         
費用/GHG削減量〇自己資本:90,200レフ(ハスコヴォ市からの拠出を予定) 
 〇金融機関から借り入れ:182,100レ   
  ⇒市当局はプロジェクト実施期間中の金利を3,559レフ負担                                   ⇒借入人の負担の割合は、総プロジェクト費用の34%         
 〇主要財務指標(回収期間、内部収益率、純現在価値)は、利率を15%、年間インフレ率を4%

モニタリング
GHG削減以外の影響(1)経済的な側面
・経済側面で予想される効果:
ア)燃料をLHOから廃材に変えることにより燃料コストの縮小につながる。
  特に自治体予算の節約ができる。
イ)暖房システム設備等の新設による経済効果
ウ)システムのメンテナンス費用の減少
エ)熱供給新システムに代替する事によりエネルギー消費を節約できる。
(2)社会・文化的な側面
・社会文化的側面では、
ア)資源の有限性に関する社会的理解が高まる。
イ)バイオマスの効率的な応用技術の市場の出現。
ウ)山間部の失業率の低減につながる。
エ)ブルガリアは市場経済に移行中であり、海外投資を引きつける好材料となる。    
(3)環境影響
・ベースラインでのLHO燃料中に含まれる、硫黄酸化物等が削減される。
実現可能性
他地域への普及効果ハスコヴォ市以外にも、油燃料を使用するボイラーを備えた地方自治体が20以上あり、それらにも適用可能である。それ自治体を支援するため、EcoEnergyは、エネルギー消費用の情報データベースを開発した。
プロセス3(調査対象外)
報告書概要
本文本文(PDFファイル 12MB)
調査評価* 東欧とのJIを現実に推進するというニーズは非常に大きい。相当無理をしてもこの種のプロジェクトの検討を継続していかないと、西欧諸国に良いプロジェクトを実施されてしまう。
* 内容は方向としては必要であるが資料の充実を図るべきであろう。
* モニタリングを具体的に記述する必要がある。
* JIプロジェクトとして有望なものであり、その実現と他地域への普及が期待される。
備考
※1. プロセス1:
具体的なF/S案件を発掘するため、対象国や技術分野を特定せずに、CDM/JIとして広い可能性を考慮した基礎的な調査
※2. プロセス2:
具体的な調査対象国・調査地域、対象技術分野を前提とした実現可能性調査
※3. プロセス3:
実際に炭素クレジット獲得に向け、プロジェクト設計書の作成、バリデーション、炭素クレジットの投資探しなど、F/S終了後に当たるプロセスを行う調査